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公募ってホントに提出書類や面接で勝負が決まるの? ―大学教員公募にチャレンジするための基本―

押さえておくべき基本とは

  • そもそも公募に通って正規雇用の大学教員になるのはどれくらい難しい?

  • 公募ってホントに書類や面接で勝負が決まるの?

  • じゃあ応募する側にできる対策とは?

こんにちは、中堅大学の文系学部に教授として勤めているAです。このページでは、大学教員公募にチャレンジする若手の皆さんが押さえておくべき基本として、上に挙げた3つのポイントについて書きます。基本なので無料で公開していますが、価値がないから無料というわけではありません。基本を取りこぼしていると大失敗につながることもあるので、ぜひ確認しておいてください。

大学教員公募とその倍率

定年・転職・不祥事といった理由で大学教員が1人退職すると、その空き枠1つ分について採用人事が発生し、「公募」が出ます。もちろん、昨今は教員が退職したからといってすぐに補充されない場合もありますし(泣)、退職以外の理由で採用人事が起こることもまれにあります。

ともあれ「公募」は、だいたいJREC-IN Portalというサイトに掲載されます。そして、このサイトを見て多くの大学院生・ポスドクや、転職したい大学教員が応募します。任期が無いポスト、すなわち65歳の定年まで勤められるポストの場合、1人の枠を目指して数十人、多い場合には百人を超える人が応募します。ですから純粋に倍率だけを見ても、公募に通るのは簡単ではないことが分かるでしょう。※数字は人文社会系の場合です。

最後の1人に残る難しさ

応募者が何百人いようと、自分の研究分野にマッチする公募を見つけた場合、上位10人とか、上位5人に入ることは比較的たやすいでしょう。しかし、最後の1人に残るというのは誰にとっても簡単ではありません。

単に論文がたくさんあるとか、研究が優れているということだけでなくて、採用側の希望に見合った人材でなければいけません。「女性教員の比率を上げたい」「功成り名を遂げた年配の教員が欲しい」「上のポストが詰まっていて20年は准教授待遇になりそうだから若手が欲しい」「研究に優れた人が欲しい」「学生をよく見てくれる人が欲しい」など、さまざまな要望が採用側にはあります。自分がそうした要望にマッチするかどうか、確信を持てる人はいないでしょう。

このため、公募において最後の1人に残って採用内定を得るということは、実は多くの人が思っているよりも難しいことです。このため、人によりますが、50件に応募してすべて落選する「50連敗」なんてそう珍しいことではありません。そういう覚悟で挑んでください。

書類や面接で勝負が決まるのか

応募者がいくらたくさん集まっても、採用側の教員も多忙なので、全員、片っ端から面接をするような時間の余裕はありません。なので面接に呼ばれるのはだいたい2人~5人程度です。ですから応募書類を送ったときに、書類選考を突破して面接に呼ばれるようになってくれば、公募戦線突破=就職が近づいてきたと考えて良いでしょう。

そうなると、いかに良い応募書類を作るかが大切な気がしてくるかもしれません。「書類選考」をまず突破する必要があるのですから、優れた「書類」が必要なんじゃないかと思うのは当然です。一面の真実としては、確かに優れた書類が必要です。

しかし考えてみてください。優れた書類を書くためには、優れた経歴や優れた業績が必要です。あるいは優れた見識がないと、就職後の抱負といったものは書けません。これまでの努力の積み重ねが、書類に現れるのです。したがって書類で勝負というよりは、書類を書くまでにあなたが積み重ねてきたものすべての勝負なのです。

面接も同様です。短い時間のその場の受け答えですべてが決まってしまうような気がしますが、そこにはこれまで積み重ねてきたものが現れます。自分の研究領域への理解・洞察の深さが、研究教育への情熱が、あなたの返答のクオリティを自然に上げてくれます。また、学会発表をたくさんしていれば、的外れな質問が飛んでくることも少なくないでしょう。そんな質問をうまく処理した経験の積み重ねが、面接での質問の処理にも現れます。

確かに書類や面接は重要ですが、そこにはあなたがこれまでのキャリアで積み上げてきたものがストレートに反映されるのです。ですから書類や面接のテクニックを知っておくことは良いでしょうが、そこに深入りしすぎず、研究教育の蓄積に励むことが結局は就職への近道となります。

評判が聞こえてくるかどうかも大切

それに採用側の教員が、本当に書類と面接だけで決めるということは稀です。新たな同僚を選ぶわけですし、一回採用してしまったらよほどでなければクビにはできないのですから、良い人を取りたいのです。選ぶ方も必死です。

そうすると全然知らない人を採るとなると、少しためらいが生じます。リスクを感じるわけです。それに対して、顔見知りならある程度安心できますし、学会発表を一度聞いたことがあるというだけでも全然知らないよりはだいぶマシです。そういった直接の知り合いではない場合、ベテラン同士で「この分野で良い人いない?」という会話をしたときに、名前が挙がってくる人ならある程度安心できます。

書類や面接だけでなく、評判が聞こえてくるかどうかも重要です。「この分野の若手で良い人」としてあなたの名前が自然に挙がってくるなら言うことはありません。そうではなく、「この人ってどう?」というふうに採用側が尋ねないと、あなたについての情報が得られないなら、トップ・ランナーからは一歩遅れを取っているかもしれません。それでも「この人ってどう?」と尋ねられたときに、良い評判が集まるなら、それほど遅れは大きくないでしょう。

どう対策すべきか

以上をまとめると、書類や面接だけでなく、それらの裏付けとなるこれまでの研究・教育の積み重ねが大切なのです。さらに良い評判が聞こえてくるかどうかも重要です。そうした評判は単に業績によってのみ生じるものではなく、日頃の行いによっても左右されます。

ということは公募戦線というのは結局、これまでの研究・教育のすべてと、日頃の行ないまで含めた総力戦なのです。したがってテクニックとしての「公募対策」を一応知っておく必要はあっても、そこに血道を上げるのは間違いです。研究と教育、そのほか自分の評判に関わるようなことについて、毎日の積み重ねに励むのが最大の「公募対策」なのです。

しかし、この積み重ねの方向性を間違えてはいけません。今思えば私自身も、公募戦線における生存競争のプレッシャーで視野が狭くなり、大切なことが見えなくなっている時がありました。「良い論文さえ出ればなんとかなる」と考えてしまうこともありましたが、それではいけないのです。採用側のベテラン教員は研究業績だけを見ているわけではありません。では何を見ているのか? 公募対策として有効な日々の積み重ねとはどんなものか? 嘘いつわらざる本音を以下の記事に書いていますので、よろしかったら参考にしてください。


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