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困った行動の根っこには

当時3歳のSくんは、
椅子を投げる生徒だった。

気を引くための手段なのか、
言葉にできない感情を発散するためなのか。

見せつけるように机に乗り、
講師の教材をよく奪った。

同時に、「撫でて~!」と天使の笑顔で
頭を突き出してくる日もあった。


弟や妹ができると、
母親の気を引きたがるあまりに
困った行動に出ることは
上の子にめずらしくはないが、
Sくんのお母様も相当大変だったと思う。


ときには、
教室の玄関先で弟の靴を取り上げて、
泣き叫ぶ弟の反応を面白がって
遊んでいることもあったと思い出す。


当時の私が、お母様にしたアドバイスは「本をたくさん読み聞かせしてあげてください」
だった。

絵本を通して、
大好きなお母さんのぬくもりが伝わる時間になるように。
たくさんの登場人物に出会い、
いろんな視点になれる機会を得られるように。
新たに出会う言葉から、
自分の感情を整理する力が伸びるように。




Sくんは、かしこい。

知能が発達してくると、
発達するからこそ感情も複雑化して
自分でも分からない感情が芽生えて、
整理が追い付かず、
葛藤して、もやもやして、
それがなんなのか
気持ちの呼び方も知らずに
どうしようもなくて発散させていた。


年少の頃、
レッスンの後半20分は、
床に仰向けで大爆睡の日もあったけれど
お母様は毎週めげずに 
通い続けて下さり、有難くも2年が経ち、
Sくんも年長になった。


相変わらず、
「まだ終わらないの~?」だの生意気で
大人びているところもあるが、
自分の気持ちを整理する力、
手を出さずに言葉で意思疎通できる力が
しっかりと伸びている。


いつだったかボードゲームの際、
なかなか来ない自分の番に、
自分だったらどうするか、次の一手が頭に浮かんでいる分、待ちきれず
対戦相手に「早く~」と、
悪気なく手が伸びてしまっていた。

「今、友達は考えているんだよー。もう少し待とうね」
伝えると、

「そうかー。考えていたのかー。知らなかったよ」
しっかり受け取ってくれた。


Sくんは、「知らなかったよ」と言った。

知らなかっただけで、
理由がわかったら
きちんと待てる思いやりがあるのだ。

それは、それだけたくさんの愛情を
受け取ってきたということだ。


私のもとを卒業し、
小学1年生になった今では、レッスンに
車でいらっしゃるお母様に代わって、
年中になった弟さんを教室の中へと
優しく送り出してくれている。

「じゃあね~!がんばってね~!」


Sくん。

本当に純粋で優しいお兄ちゃんになったね。
そして、お母様には心の底から拍手を捧げたい。


今日も明日もその先も、
Sくんのその素敵な心と
頑張り屋さんなお母様とご家族とに
笑顔が溢れる日々でありますように。




記事を見つけて下さり、最後まで読んでいただきありがとうございます。 少しでもなにか心に残るものを届けられていましたら、こんなにも嬉しいことはありません。