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毎週ショーショートお題 「復習Tシャツ」



 翔太の成績が六年生になってから急に上がり始め、隆志は焦っていた。
 テストをすればいつもクラスで一番の点数を取り、皆から羨望の眼差しを向けられていたはずが、よりによって同じ団地で昔から馬鹿にしていた翔太に脅かされていることに隆志は苛立ち、そのせいで勉強にも集中出来ずにいた。

 学校の帰り団地の入り口で翔太を見つけた隆志は、その首根っこを掴んで団地の裏に連れて行った。

「おい、なんでお前最近テストの点数が上がってんだよ、どうせカンニングでもしてんだろ!」

「ち、違うよ、してないよ」

「だったら何なんだよ、説明してみろよ!」

「実は..このTシャツのおかげなんだ」

 そう言って翔太は、制服の下に着ていた真っ白なTシャツを見せた。

「これは復習Tシャツと言って、これを着てテスト範囲の勉強したらTシャツがそれを記憶してくれて、テストの時に着ると記憶した情報を繰り返し頭に流してくれるんだよ」

 算数のテスト前日の夜、隆志は勉強もせずある作戦を考えていた。
 テストの前の授業は体育であり、途中でトイレに行くと言って翔太の持って来てるであろう復習Tシャツと、ただのTシャツを入れ替えるのだ。
 作戦は成功し制服の下に復習Tシャツを着込んだ隆志は、開始の合図と同時にテストを裏返した。シャーペンを握った隆志の脳内には、ペリー来航から明治維新までの情報がとめどなく流れ始めた。

 戸惑う隆志の姿に、翔太はにやりと笑みを浮かべた。

 

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