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「恋する惑星」は本当にキュートなのか

「Love music」での楽曲紹介

4/16の「Love music」で、UNISON SQUARE GARDENが「恋する惑星」を披露しました。番組Twitterにアップされたインタビュー動画で楽曲について聞かれ、田淵が「キュートな曲です」と短く返答(苦手なTV出演で言葉数が少ない)。宏介が「キュートで切なさもあったり、力強い意志が見え隠れしたりする不思議な楽曲になっていると思います」とフォローしています(ナイスフォロー)。

私もとてもキュートな曲だと思います。ただ「女々しい」と言う単語が示す通り、歌詞に若干のネガティブ要素を感じます。果たして本当に「キュートな曲」と言い切れるのか、客観的にAIで歌詞を分析をしてみることにしました。

◆◆◆「恋する惑星」の歌詞◆◆◆

AIテキストマイニングを活用

テキストマイニングとは、文章を定量的に扱い、有益な情報を抽出する方法です。アンケートや口コミなどを可視化するために使われますが、歌詞の分析にも役立つと思います。ユーザーローカルという会社が提供する無料ツールを使いました。

「恋する惑星」の分析

「恋する惑星」のポジネガと感情

まず「ポジネガ」に関してはポジティブが16%、ネガティブが40%という結果になりました。

そして、「喜び」「好き」「悲しみ」「恐れ」「怒り」の感情グラフでは、「悲しみ」「怒り」の比重が大きいという結果に。キュートな曲ですが、意外にもネガティブで悲しみと怒りの比重が大きい。

「恋する惑星」のポジネガ推移

1曲を通して「ポジティブ(緑)」「ネガティブ(ピンク)」の推移を現したグラフ。どのパートも両方の感情が拮抗しているように見えます。
「女々しい」「何が悪い」「おぼつかぬ」「くそ いいとこ見せなくちゃ」「星が悲しい理由」「わきまえよう」「どうせこっちから見りゃ」「意味なんか無くても」などはネガに分類されそうです。
ラストは「君と同じ世界に居たい まだまだ光っていたいのだ!」と力強いから、AIもポジティブ判断を下したのかな。

「恋する惑星」の感情推移

1曲を通した感情の推移。「喜び(オレンジ)」「好き(緑)」「悲しみ(青)」「恐れ(紫)」「怒り(ピンク)」という区分けです。可視化すると、曲を通して全ての感情が複雑に絡み合っているのがわかりますね。

この方法だと「キュート」の要素は抽出されませんが、「ネガティブを含め色んな感情を爆発させながら、最後にポジティブな意思を力強く見せるところがキュート」という見方もできるのかもしれません。

「夏影テールライト」の分析

「夏影テールライト」のポジネガと感情

君に想いを寄せるキュートな曲として「夏影テールライト」を思い出したので、こちらも分析してみました。

◆◆◆「夏影テールライト」の歌詞◆◆◆

驚くべきことにポジティブ要素が0.1%しかありません。感情は「悲しみ」がダントツ。

「夏影テールライト」のポジネガ推移はネガティブ(ピンク)オンリーです。えっ、そんなにネガティブな歌詞だっけ?

「夏影テールライト」の感情推移

「感情推移」も、ほぼ「悲しみ(青)」「怒り(ピンク)」に支配されているという結果に。

「散々迷ったってどうせ夏影のせいにしてしまう」「かっこわるくて誰にも見せられない」「諦めはつかない」「今のままじゃ儚いや」「どうしてこんなにも器用じゃないんだ」「全然気丈なんかではないから」と、言葉だけ抜き出すと確かにネガ要素が強いように思えます。
「恋する惑星」はややコミカルで無邪気な雰囲気があるけど、「夏影テールライト」はガチで落ち込んでいるように感じます、文字だけ読むとね。

とは言うものの、複雑な感情をポジネガの2択、「喜び」「好き」「悲しみ」「恐れ」「怒り」のたった5択で簡単に表現できるものではないので、田淵の歌詞はAIには判断しづらそうです。

「うれしいきもち」の分析

単純なテキストならAIも分析しやすいのかなと考えて、THE KEBABSの「うれしいきもち」(作詞:佐々木亮介)も分析してみました。

◆◆◆「うれしいきもち」の歌詞◆◆◆

予想通り、ポジティブ(緑)強し。

「あの子からメッセージ 僕はうれしいきもち」と歌っている冒頭がもっともポジの山が大きく、「奇跡のハナウタあふれだす」が次点です。山のないところもポジだと思うのですが(「めちゃめちゃ嬉しい やる気が出てきちゃう」)、この辺りは基準が謎ですね。

「感情推移」は、ほぼ「喜び(オレンジ)」「好き(緑)」が占めているので、納得の結果です。

やはりAIでは複雑な歌詞の分析は難しいと思われます。より技術が発達したら、精度も上がっていくのかもしれませんが。

ただ、「恋する惑星」「夏影テールライト」も、明るいメロディーに乗るとポジティブなようにも聞こえますが、言葉だけ切り取ると思いの外ネガティブがクローズアップされることがよくわかりました。それをピッカピカの素敵な曲に昇華させるユニゾンの手腕よ。

AI作詞家VTuber

たまたま知ったのですが、文章生成AIを使って作詞をするVTuberがいるようです。

文章生成AI技術は、国立大学法人電気通信大学の坂本真樹研究室が保有する、感性と結びつく画像やコンセプトから文章を生成するAIに関する特許技術・知財を活用したもので、fuwariのAIによる作詞はこの文章生成AIに画像やキーワードを読み込ませると、その特徴をもとにしてAIが複数の文節を生成、その文節を組み合わせて歌詞としてまとめ上げるという手法を用いている。

結構本格的のように思えますが、MVを見てみたけれど、あまり魅力的な歌詞とは言い難いような、凡庸な感じがしました。実験としては面白そうですが、結局は感情がわからないAIが作る歌詞には興味が沸かないなぁと思ってしまいます。

余談ですが、このAI作詞家に関わる株式会社シンクパワーという会社は、「Lyric Jumper」という歌詞探索ツールを提供しています。好みの音楽を探す時に、「J-POP」や「演歌」などのジャンル分けから関連を提示してくれるサービスはよくありますが、「Lyric Jumper」は歌詞の関連性が高いミュージシャンを検索できるという、変わったサービスです。

例えばUNISON SQUARE GARDENを打ち込むと、「ラブソング」「自分探し」「イケイケ」「自由気まま」「青春」という5つのカテゴリー(歌詞に基づく)が出ます。統計によれば「ラブソング」が最も多いんですね。

と同時に、この5つの歌詞カテゴリーの構成比が似ている「アーティスト」が提示されるのです。the pillowsやKANA-BOONはなんとなくわかりますが、乃木坂46やDA PUMPも似た比率なのが面白いな。

歌詞の好みから似た曲を探そうと思ったことはありませんが、そうやって探してみるのも新鮮かも。

ChatGPTで遊ぶ

AIと言えば、話題のChatGPTでも、そう簡単に素敵な歌詞は書けなさそうです。「大江千里がChatGPTで作詞をしてみたら......なぜか槇原敬之っぽい歌詞になりました」というご本人による記事を見つけました。「大江千里的歌詞を書いてみて」と聞いてみたら、「~もう恋なんてしない」と言い出したそう。笑えます。

田淵的歌詞を書いてもらった

大江さんを真似て、田淵的歌詞を書いてもらいました。(使用したのは無料で使えるバージョンです。)

全然田淵っぽくないのでクレーム。

 

素敵な歌詞を書く能力は、永遠に人間の特権であって欲しいですね。

「恋する惑星」の分析

では質問を変えて。

疾走感はないと思いますが。
じゃあ歌詞は?

「恋する惑星」というより、ユニゾンの歌詞全般に対する印象を答えているのかな。

具体的に「恋する惑星」の歌詞を打ち込み、「以下の歌詞はキュートだと思いますか。ネガティブだと思いますか」と聞いてみました。

おお!なかなか的確な回答のように思います。質問の仕方が良かったな。

そう言えばラジオ(確かミューコミ)で田淵が、ChatGPTに造語のパターンを作ってくれるように試した、「こうして欲しい」と言う会話を続けると精度が上がって行く、というような話をしていて、そういう使い方は便利で面白そうだなと思いました。いかに使いこなすか、ユーザーの力量も問われますね。「ミレニアムハッピー・チェンソーエッヂ」みたいな造語も、そのうちAIと相談して採用する日が来るのかな。

さらに「惑星」と「君」の関係性について聞いてみる。

丁寧に説明されるとキュンとくるな!惑星くんがんばれ、進展の余地ありだ。

さらに別の質問。

わかるー(笑)

いやだからメインボーカルは斎藤さんだぞ!最初にギター&ボーカルって教えるべきだったのだろうな。
あとファッションセンス、そんな重要なとこ?(笑)

結論、UNISON SQUARE GARDENはファッションセンスがキュート。

以上。
(雑なまとめ)

先日NHKで見たChatGPT特集で、恋愛などの相談に活用しているという女性が紹介されていました。そんな活用方法もあるんですね。
たとえば、「今の季節に合った、デートにおすすめの女性のコーディネートを教えてください。着用するのは29歳のショートカット女性です。」と質問するそうです。

これもやはり質問の仕方が肝になりそうです。活用し続ければ、徐々に好みや性格などを学習して、より自分が望む回答をくれたりするんですかね。可能性が広がるなぁ。

音楽ライターのレジーさんも、田淵インタビューでChatGPTで質問を作成したと明かしていて、へぇーと思いました。(「結成20周年を迎えるロックバンドの今後について検討する上で、適切な質問を投げかけてください」と質問。)

インタビュー内で田淵も言っているけれど、やっぱり使い方が大事でしょうね。今後はAIリテラシーが求められる社会になりそう。

歌詞解析に使うと意外と面白かったから、また気が向いたらやってみようと思いました。

人間(私)の見解

※絵本のイメージ

ついでに人間(私)の見解を。
「恋する惑星」を初めて聞いた時、37ちゃいからこんなかわいらしい歌詞が!と思うと衝撃的でした。「高鳴りを利用して 必死のアピール 僕が見えていますか」、こんな直球フレーズが出てくるなんてすごい。星モチーフの歌詞は田淵の十八番ですが、こんなバリエーションも出てくるのかと。「君と惑星くん」という可愛らしい絵本のストーリーになりそうです。

惑星くんは、君にいいとこ見せようとしたり、ウィットに富んだ冗談で気を引こうとしたり、宇宙飛行士に焼きもちやいたり、数多あるうちの一個に過ぎないと卑下しています。
惑星くんは悲観しているけれど、奮闘している姿を君は憎からず思っているのではないか。だって傍から見て一生懸命な姿がキュートだからね、数多あるうちでも特別目立っていそうじゃない?
君の姿がぼんやりしているので、私がこの物語を絵本にするとしたら、君の視点を書き加えてラストは幸せなページで飾りたいなーという妄想が膨らみます。

君が太陽や月ではなく「ユニバース」っていうのが、まさに空前のスケールなので、人生そのものを歌っているような印象もあります。女々しく、ロマンティックで、かっこつけたくて、正念場があって、まだまだ光っていたい。いろんな感情や思いを読み取れるので、安直にポジネガ判定はできないし、やっぱりキュートな曲だし、宏介の言う通り力強い意志も感じます。「まだまだ光っていたいのだ!」、なんとストレートでキュートなフレーズなんでしょう。

解釈はどうであれ、歌詞もメロディーもアレンジも今までにないユニゾンの魅力を感じて、大好きな曲が増えました。


「恋する惑星」を含むアルバム「Ninth Peel」の感想はこちら。

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