見出し画像

🅂6 ラフ・スケッチを繰り返す

「A little dough」 第2章 プランを考えてみる 🅂6

➤人生はベクトルの連続、結果はその時々の断片図
 さて現時点の自分の価値観と何年か先のビジョンがあれば、ベクトルをたてることができます。ビジョン(結果)をイメージすることで、ベクトル(プロセス)がたちますから、ビジョンが大事なように思えますが、実際ライフ・デザインで重要なのはベクトル(プロセス)です。もちろんビジョンは励みになりますが、ベクトルを実践しなければ何も生まれません。結果はその時々に、自分のイメージしたビジョンとは多少姿を変えて現れるものです。その範囲を緩く保ち、寛大に受け入れることです。時期も含めて、ニアリーで十分です。何よりも、その先の未来のへのプロセス、新しいベクトルが待っているからです。

 良い結果の場合もあれば、悪い結果の場合もあります。資格試験のように結果が必須の場合もありますが、長い人生において100%必要な結果というのは、むしろ限定的です。多くのことは代替がきくということをしっかり頭に入れておくべきです。また結果には、評価が付いて回ります。例えば「金メダル」は「名誉と称賛」を生み出しますが、それは他者から与えられる評価です。それよりも純粋に「自己ベスト」に挑み続けることが大事です。あとで触れますが、金メダルがもたらす「名誉と称賛」は、度々私たちを泥沼に引きずり込み、時にはどん底を見るまで打ちのめす力を持っているからです。

 人生はプロセスであり時間の連続ですが、結果とはある時の断片的な事実にすぎません。昨年MLBで投打に大活躍し、大きな結果を残した大谷選手には、MVPというその年の最高選手の称号が送られました。私は彼の心のうちを知りませんが、去年にも劣らない今年の活躍を見ていると、彼の心に「慢心」という感情が生まれる隙はないのだろう、と思ってしまいます。彼にも数えきれないほどの「名誉と称賛」が送られているにも関わらず、彼にとっての結果は、「9勝と46本のホームラン」に象徴される数字だけなのです。多分「名誉と称賛」という他者からの評価は、そのほとんどがゴミ箱行なのでしょう。素晴らしいアスリートである証です。

➤ビジョンの達成度は自分で評価する
 さすがに大谷選手程の「名誉や賞賛」は、どこにでもある訳ではありませんが、程度の差こそあれ、安閑としていると泥沼に足を突っ込みかねません。繰り返しですが「結果」は「プロセスの断片」にすぎません。また良い悪いは「結果」に対する「評価」であって、結果そのものではありません。しかし私たちは、この「評価」に心を奪われてしまいがちです。

 自分の価値観を具現化するある時点の「ビジョン」は結果です。その「ビジョン」が思った通りかどうか、あるいは満足できるかどうかは、自己評価するのが原則です。人の意見を気にしてはいけないのです。それでは「客観性に欠ける」との意見があるかもしれませんが、それは「メタ認知力」でカバーしていくようにします。自分の中のもう一人の自分を鍛え、信じることです。しっかり自己評価をしたなら、他人の意見を参考にするのもよいでしょう。ただ、他人はあなたの考えたビジョンやその意図まで詳細に知っているわけではありません。外側から見えたことを、その範囲で評価しているに過ぎない、という事実を忘れないでください。

➤結果を受け容れる「器」を準備する
 私たちがライフデザインを考えるのは、計画的な意思と行動によって、将来の結果を一定の範囲でコントロールできる、と予想するからです。私たち自身が考え、判断し、行動する部分は、本来自分のコントロール下にあるはずです。しかし仮にそれらが思い通りにできたとしても、実際の結果がどうなるかはわかりません。それは、自分の力ではどうにもならない、環境や関係者のめぐりあわせといった偶然が、現実に大きな影響力を持つからです。

 つまりどんなに努力をしても、結果による満足感が得られる保証はなく、あるのは自分の努力による日々の充実感です。とはいえ一定の結果を期待するなら、それを生み出す可能性のある水準まで、自分の意思と行動でたどり着くほかありません。「天命を待つ」ためには、「人事を尽くす」ほかないのです。以前にも書いた通り、大事なことは「結果を受け入れる心の準備」ができるかどうかです。これを実現するのは、自分のやるべき努力を続けること、つまり、当面の課題→マイルストン→ビジョンという私たちが
描いたベクトルをしっかり実践していくことです。

➤成長→価値観の変化→ビジョンの変化
 ライフデザインシートの使い方は自由ですが、私は手許にノートを一冊おいて時々ひらいては、振り返ります。若い時は、かなり過激だったり軌道を外した思い付きを書いたりしましたが、40歳くらいからは飛んだり跳ねたりはなくなりました。個人的には思いもよらず会社員生活を長く続けましたが、それは若い頃のライフデザインには無かったことです。こうした「現実のビジョンにおける変化」を受け入れるには、自分の価値観や思考が変わっていることに気づくことが必要です。

 人間は時間をかけて、学習し成長していきます。しかしそのスピードや度合いはまちまちで、何時も実感できるとは限りません。実際何かができるようになる時というのは一瞬で、その前のほとんどの時間は長い停滞期だったりします。それでも、1年、2年というタームで時間を作って振り返ってみると、何かが変わっていると実感できることが多いと感じています。特に際立った成長は、いろいろなところで「変化」を生み出します。そしてその変化は「価値観」にも影響を与えます。そうした「価値観の変化」が生み出す「ビジョンの変化」を素直に受け入れていく勇気も、時には必要なことだと思います。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?