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【詩】ケルベロスⅢ(幻獣詩篇:11)

男たちの性的な欲求を侮辱として
自ら命を絶てばこの地獄から……
其処に高潔さを見出した少女は
アンドレ・ジッドに気触かぶれていた

少女は地獄の門を前にして言った
「この門はわたしにはそぐわない」
真ん中の犬は吠えた
「自死したものは皆此処に来るのだ」
少女は膝を折って手を付き嘔吐した
左側の犬は不憫に思い言った
「彼女を天界に引き渡せないか」
右側の犬はジッドを踏まえた
「彼女は違う、聖女ではない」
左側の犬もジッドを読んでいた
「理想を貫く点では、彼女も聖女だ」
真ん中の犬はジッドを知らないが
「聖女には地獄が最も相応しいのだ」
(真ん中の犬は常に真理を述べるのだ)
少女は自分が欲求に辱めを受けたから
地獄の門で泣く羽目になったと思った
欲求に汚されたから此処にいるのだ
「この門はわたしに相応しい」
少女は昇天した

少女の自死に直接関わった男は
現世で欲求の地獄を味わっていた
高潔さは聖女であることを知った
咽び泣く彼の中で少女は永遠であった
「生涯オレはもう誰とも寄り添わない」
ケルベロスが門で待ち構えている
「この門はあの男に相応しい」
男は堕落した

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