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回復期リハ病棟に新卒で入職することについて考える

こんにちは。うなぎです。

最近、看護学生さんの就職先の多様化が進んでいますよね。
私が就職したときは、「とりあえず急性期にいっとけ!」みたいな感じで、何も考えずに大半は急性期病院に就職していました。

今は急性期に縛られずに、自分に合う場で働こう!という風潮です。

それこそ回復期リハ病棟や訪問看護、療養病院や、場合によってはクリニックで働く人もいます。
まあ、看護学校や看護系大学を出たからって、看護職として働く必要性もないですしね。やりたいことがあるなら、それに突き進めばいいと思います。そこまでしてやりたいことがあるって、むしろ羨ましいです。


私が働く病棟(回復期リハ病棟)にもほぼ毎年、新卒の子が入職してきます。
大半の子は実習先が当院だったり、自宅が病院の近所だったり、「実習で自分には急性期が向いてないと思った」というパターンが多いです。

回復期に就職したいと考えている看護学生さん、または基礎レベル(1〜2年目くらい)で回復期に転職したいと考えている看護師さんの参考に・・・なるかは分かりませんが。

最近、若い子を指導する立場になることが多いので、そんな指導者目線での「新卒で回復期リハ病棟に就職すること」について考えたいと思います。


雰囲気は比較的ほのぼの 故に緊張感は低い

うちの職場もですが、教員時代に学生の実習指導でお世話になった回復期リハ病棟も、職員の皆さんが本当に優しいです。
多分、急性期のように緊急入院や急変が少なく、比較的ほのぼのとした雰囲気だからだと思います。
また、多職種で連携しないといけない病棟なので、人間関係を拗らせないことが物凄く重要です。
なので、職種問わずに人当たりがいい人がとても多いです。


優しい人が多いって、職場選びではとても重要ですよね。

回復期といっても結局、その部署ごとの空気や特徴があるので、全ての回復期リハ病棟のスタッフが「人当たりがいい」とは断言はできませんが。
急性期のように、人命に直接関わる処置やイベントが少ないため、心理的には急性期病棟のスタッフよりは余裕がある人が多い傾向にあると思います。


更に、中途採用職員が多いのも回復期リハ病棟の職員構成の特徴だと思います。
なので、新卒から回復期に入職して3年くらいいると、自分より遥かに年上で経験年数も豊富な人が、リハ経験に関しては自分よりも少ない、という現象が起こります。
回復期リハ病棟って特殊なので、経験年数がある人でも最初はちょっと戸惑うんですよね。
だから、大先輩よりもリハの専門的な経験は若い子の方が上っていう少し歪な現象が起こります。


これらが若手にとって本当にメリットだけなのか、というと一概にそうとも言えないと思っています。

どんな特徴を持つ病棟だろうと、命を預かっているという面に関しては急性期と同様です。
少し大袈裟ですが、若い時に「自分の対応がこの患者の生命を左右する」という緊張感を体験するって、この仕事では結構重要なことのように思うんです。


回復期リハ病棟にある程度いると、業務は一通りこなせるようになるし、自分よりリハ経験が少ない先輩たちに教えるという機会も出てくるし、その部署における仕事の自信はつくんですよね。
それでいて、先輩たちは優しい人が多いから、どんどん指摘されることも少なくなっていく。どこの部署でもそうだと思うんですが、3〜4年いたらその病棟の中心的存在です。


でも、回復期しか知らない子っていうのは、医療現場特有の緊張感という経験が絶対的に足りないんです。

だけど、それを自覚する機会も少ない。
だから漠然とした不安だけは付き纏ってるけど、年数が経つにつれてヘルプを出せなくなったり、それまでの経験から正常性バイアスがかかってしまって、そのまま過ぎていってしまう。

「それ今まで知らなかったの!?不安じゃなかったの?」ということが起こると必ず、「不安です」って答えるんです。
でも多分、彼ら・彼女らも不安の正体がわからないから聞けないんですよね。
わからないことがわからないってやつです。


緊張の経験不足による漠然とした不安を抱える子が多い。回復期リハだけで育った子にはそんな傾向があるように思います。

想像力が豊かだったり、若いうちから回復期でも急変に当たる経験が多かった子は、結構この辺はうまく乗り越えている印象ですが。
・・・個人差なんですかね、結局。


急変と処置が少ないことによる技術への不安

急性期と比較すると絶対的に処置は少ないです。
私、回復期リハで働いてからCVやドレーンにほとんど触ってないです。
数年前に在宅でCVポート管理してた患者さんが入院した時に触ったのが最後かな。

医療処置はほとんどありません。

平日でも採血がない日もあるし。
点滴ですら1ヶ月誰もいない月もあります。

その代わり、経鼻胃管チューブを抜いて嚥下訓練を始めて経口摂取に移行したり。
膀胱留置カテーテルを抜去後に排尿アセスメントをして自然排尿に繋げていったり。
この辺は回復期リハ病棟の看護師の得意分野ですね。
これはこれで、急性期では忙しくてじっくり観察し、アセスメントして待つことが難しいと思うので、回復期の専門領域になります。


だけど、やっぱり病院ですから。急変はありますよ。

脳卒中再発したり。
てんかん発作起こしたり。
大動脈瘤破裂したり。
⚪︎殺未遂したり。

年に数回程度ですが、0ではありません。
でも、日々の医療処置があまりにも少ないため、特にリハ経験しかない若い子たちは絶対的に経験値が不足してしまうんですよね。
スキル的にもどうしても弱くなってしまうし、自信もつきません。

っていうか、人が亡くなることがないんですよね。
患者さんを看取ったこととか、エンゼルケアをやった経験ない子たちは結構な割合でいます。これ、病院に勤めてる看護師のイメージからするとかなり衝撃的な現実じゃないでしょうか。


回復期リハ病棟は、リハ看護技術を学び、患者さんと家族に寄り添った退院支援を学ぶには最適な場所です。
ただ、看護師としての医療技術や急変時の対応の経験を積むにはあまり適していません。むしろ、訪問看護の方がその辺の経験は積めるんじゃないかって思います。


まとめ?

現場の人間として、回復期リハ看護に興味がある方は、年齢問わずに就職してくれたらすごく嬉しいです。

でも回復期リハ病棟では、医療現場で働く看護師に必要な急変対応や、医療技術の経験を積むには、その機会が絶対的に少ないです。
新卒で就職することも問題ないと思いますが、そのことは頭の片隅に入れておいた方がいいかと思います。

反面、退院支援や多職種連携、自立に向けた看護というリハ看護の専門性を学ぶには、これ以上の病棟はないとも思います。

指導的な立場としては、回復期リハ病棟で育った若い子達の強みと弱みをもう少し明確化して、研修や教育に反映し、不安の軽減と対処法の獲得を支援していくことが必要だと考えます。
あとは、「あれ?」って思ったことはスルーせず、本人たちに確認していくことですかね。。。
急性期病棟はどんどん減って回復期病棟はどんどん増えていく世の中+新卒就職選択の多様化がどんどん進んでいくと思うので、この辺のフォロー体制は業界全体レベルでしっかりと考えていかないといけない問題だと思います。

医療関係者の方々はもちろん、医療関係以外の業種の方々も、若手から中堅に移行していく子たちの指導・教育方法で、工夫していることなどあればコメントで教えてください。

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