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A vos souhaits !
アセチレン灯が退屈そうにくすぶる夜。
『今夜は一つ、ほうき星でも見てやるか』
市立公園のベンチに座る男は、そう言ってラムネのビー玉をスポンと落とすと、お月さまをランプにして下からのぞき込んだ。すると、案の定、瓶の底からいくつかのほうき星がしっぽを上に伸ばしながら立ち登っていくのが見えた。
"ハークション!"
そのうち、水面に揺れるお月様が、ほうき星にくすぐられて大きく一つくしゃみをしたの
Evening! Star, Falling.
アセチレン灯がついたのを見計らって、
ストロボ・スコープのスイッチがパチンと入ると、
今夜もまたお空のお星さまがいっせいに輝きだした。
『だから、いくら落ちても元通りなのさ』
お空からぶら下がった梯子を上る人影を見ながら、悪友のFは言った。
『落っこちたやつを拾っているのさ』
カッパープリントのお月さまがひらひら揺らぐ空を横切って、
また一つ、星が尾を引いて落ちた。
Gaslight waver
星が一つ尾を引いて落ちた。
そして市庁舎の時計が夜中の12時を指し、
リンデンの並木がサラサラと音を立てて、
アセチレン灯の火がゆらめいた。
お空にはお月さまがうすぼんやりと浮かんでいて、
いっぱいの星に囲まれながら、
バタバタと窓辺に干したシーツのようにたなびくと、
『今夜は、ブルームーンさ』
タバコをふかしながら、
燕尾服を着た人影がお空からぶら下がったはしごを登って行き、
そんな様子を市立公
Hide and Seek.
ある日、リンデンの並木道で、オペラハットを目深にかぶったお月さまが、お星さまを原料にした密造酒の瓶をあおりながら歩いていると、リンデンの後ろからお月さまにむけてピストルを撃った者がいた。
お月さまは、驚いてその場でハンドアップをしたけど、もうなんの気配もなくなっていた。
不思議に思ってリンデンの木の下を一本一本みて回ったが、結局そこには誰もいなかった。
『おかしい、誰もいない!』
『なんだっ
取っ組み合いをした話
ある夜、ストリートを歩いていると、何やら気配を感じたので、後ろを振り返ったとたん、何かが真正面からドシンとがぶつかってきた。
あわてて前を振り向くと、今度は後頭部をガツンとやられて地面へと倒れた。
そいつは倒れた私にさらに一撃を加えようとしたので、私は横へ転がった後、思いきって着ていた外套をそいつに被せると、力一杯に体当たりをして取っ組みあった。
しめた、つかまえたぞ!と思ったせつな、別の