何かを引っ張った話

 酒場から酔って帰る途中のこと、私が歌を歌いながら歩いていると、電柱の近くで透明で光沢のある猫のしっぽのようなものがぶら下がっていた。空を見上げてみると、そいつはお月さまだか、お星さまにつながっているようだった。私はしめたと思い、そいつをエイっと思い切り引っ張った。
 すると月と星の光と街中の明かりが消えた。
 暗闇で平衡を失い、私はけつまずいてひっくり返った。
 悪態を吐きながら起き上がると、月も星も街ももう元のようにキラキラと光っていた。

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