写真の事件

 ある日新聞を開いたら、報道写真の一枚に私にそっくりな人間が写っているのに気がついた。
 あまりに私に似ているので新聞社に電話をかけて聞いてみたら、今朝から同様の問い合わせが殺到しているのだと担当者は随分と困っている様子だった。
 そもそも、その写真というのが、電話局の屋上から市電通りを撮影したもので、たくさん人が写っているのだが、その写真を撮影した日に、誰もそんな場所を歩いた覚えはないことはおろか、写真を撮影した人間も、記事を紙面に割り込ませた人間もわからなかった。

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