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連載 #夢で見た中二物語 45

☆欲望と抑制の水瓶☆

古くからとある一族が暮らしてきたと聞く、古びていながらも大きく立派な屋敷があった。

そこでは現在でも毎日のようにパーティーが開かれ、豪華絢爛なホールによく合う煌びやかな食事やダンスが行なわれているという。

その一族の一人を友人に持つ青年は、ある日パーティーに招かれてその全貌を目にする。

素晴らしい催し物がひっきりなしに行なわれる中、青年は友人の妹に恋をして相思相愛になる。



毎日のように開かれるパーティーに入り浸っていたある日、青年は様々な色や形の水瓶がホールの飾り棚の上に無数に置かれている事に気付く。

青年はあの水瓶は何かと友人に聞いたが、友人もその妹も知らないという。

どうやら本当に何も知らないらしく、友人は青年同様興味深げにしていた。

そして青年に近くで水瓶を見てみるかと問い、二人は棚の上に上がって水瓶を覗き込んで見ることにした。

周りの大人達もそれを咎めるわけでもなく、興味深げに二人の様子を見つめていた。

こんなに堂々と置いてあるのに、本当に一族の誰もその存在にすら気付いていないかのごとくの振る舞い。

長い間放置されていたらしいのにも関わらず、綺麗な水を静かに湛えている水瓶に、青年は次第に不安を覚えていた。

そんな中で青年は、棚から降りる時に水瓶の一つを倒してしまう。

すると突然屋敷全体の雰囲気が変わり、妙に冷たい一陣の風が強く吹いてきた。

それと同時に他の水瓶が触れてもいないのに次々倒れだし、全てが倒れる頃には屋敷は見るも無惨なボロボロの姿へと変貌していた。

そこに暮らす一族の人々の姿も打って変わって惨めなものになっていたが、何故か彼らはそれを自然な事として受け入れているようだった。



その時に語り聞かされた話によると、その水瓶は百年の周期ごとに一族の生活様式を富豪期と貧困期に交互に変えてきたとの事。

この話は、その水瓶の周期が切り替わったほんの僅かな期間しか思い出されないようになっているとの事。

この日は丁度百年の周期が来た時だったから、なるべくしてなった自然現象だったのだと言われ、青年の事を誰も咎めはしなかった。

その日から青年は、その一族の異様さを無意識に恐れるようになり、友人や彼女や屋敷から次第に遠ざかるようになった。



あれから、一年が経った。

青年は一年前の出来事を思い出し、あれは本当にあった事だったのかと思い返して、意を決して再び屋敷を訪れる。

友人は学校にも来なくなっていたが、一年前に別れた時と変わらずに迎えてくれた。

そして貧困状態ながらも、最上の催しで歓迎してくれた。

しかしその頃には、富豪だった頃の事も水瓶の事も全て忘れ去っているようだった。

不要に思い出させる必要もないと思った矢先、青年は例の水瓶の中から不意に声をかけられたように感じた。

その事に不気味さと疑問を抱いた青年は、自宅に帰宅した後、再び真夜中の屋敷に忍び込んで水瓶を確認する事にする。



夜の屋敷は不気味さを増し、誰もいないかのように静まりかえっていた。

そこで水瓶の中をのぞき込んでみると、水瓶は一度倒れて水がなくなっていたはずなのに、何故かまた水が満たされている状態になっていた。

そして、その中から誰か知った声が呼びかけてきているのを確かに聞いた。

それは間違いなく例の友人の声で、その話によると富豪時と貧困時の入れ替わりの際に、屋敷に住む一族の者は身体はそのままで、各人が一人で二つも持っているという魂が入れ替わるのだと言う。

この水瓶の中の水は一族の者の魂そのもので、入れ替わりの時に二つの魂が交互に解放と封印をされているらしい。

その入れ替わりの際に人の姿をしていた時の記憶を消される事になっているらしいが、たまに以前の記憶を持ったままの者がいたり、イレギュラーで突然入れ替わりが起きた時に記憶が残る事が稀にあるらしい。

友人はそんな呪いのような無意味な輪廻転生の歴史に終止符をつけたいらしく、青年に水瓶を破壊するように頼み込んでくる。

しかし青年は、万が一、その為に友人が死ぬような事になってほしくないからと断ろうとする。

そんな時、友人の妹で青年の彼女だった女性が突然現れる。



その女性も昔の事のほとんどを忘れていたが、青年との恋愛を水瓶の中の魂との共通記憶で覚えているらしく、その為に狂気にとらわれているらしいとの事。

青年が去った日からこのようになって部屋に閉じ込められていたらしいが、それを破って現れたようだった。

女性はひとしきり暴れ回ると、青年がなんとか守りきった友人と女性のもの以外の水瓶の中の水まで全て床にぶちまけていた。

それから屋敷の電気設備を統括している倉庫の機械の所まで行き、何故か屋敷中に電気を流す為に電圧を一気にMAXにした。

青年は二つの水瓶を抱え、間一髪で屋敷を飛び出した。

その強烈な電撃で吹き飛んだ屋敷は、ほとんど跡形もなく消え去った。

それを見た青年は、そもそもこんな所に屋敷などあったのかというような表情で荒野を見つめて呆然とする。

ただ手元に残っていた二つの水瓶を見つめ、それを地面に降ろした。



月明かりが、その水瓶に湛えられた水の表面を静かに照らした。

途端に友人の声がして、自分達を縛っていた屋敷が崩れ去ったからこれでようやく天に帰れると言って、青年に感謝を伝えながら魂ごと消え去っていった。

後に残された水瓶も音もなく崩れ去り、青年は夢でも見ていたかのような心地でその場を立ち去った。

☆☆☆


本日見たばかりの夢物語、とても長いです。

途中で表現が分かりづらくなっていますが、自分の表現力の無さ故ですので申し訳ありませんぬ m(_ _)m

この夢から目を覚ました時、最初に思い出したのはエドガー・アラン・ポーの『アッシャー家の崩壊』でした。

とある一族の終焉のお話、ホラーとかサスペンスとかスリラーの部類に入るでしょうか。

相変わらず、どこからこんな夢物語ネタが出てくるのか謎です。

夢で見なければ、こんなネタは絶対に思いつきません σ(^_^;

中高生の頃より現在のような夢を元にした物語(文と絵)を書き続け、仕事をしながら合間に活動をしております。 私の夢物語を読んでくださった貴方にとって、何かの良いキッカケになれましたら幸いです。