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#宿命の守護烙印 第Ⅸ章第84節

今までずっと敵対してきた存在が、ようやくその身の上を語ってくれます。

ただ今節のお話はだいぶ長めな上に、かなりキツい表現が出てきますので、そういったものが苦手な読者の方はご注意くださいませ (>人<)

(今回は解説もとても長いので、ある程度読み飛ばしていただいても構いません。

 アイルランド伝承や北欧神話、ギリシア神話やフィンランド伝承カレワラ、そしてキリスト教関係のお話まで入ってくるのでかなりややこしいかと思います。)



ニコラス村のモデルはフィンランドのロバニエミという北極圏付近の地域なのですが、ロバニエミはサンタクロースの村として有名ですね。

元々サンタクロースは4世紀頃の東ローマ・小アジア(現在のトルコ辺り)の聖ニコラウスという人物がモデルと言われています。

聖ニコラウスのお話で有名なものは、とある家族が貧しさ故に三人の娘を売らなければならなくなった時、その話を聞いた聖ニコラウスがその家の窓から金貨を投げ入れ、投げ入れた金貨が偶然靴下の中に入ります。

その金貨を貰ったおかげで、三人の娘は身売りする必要がなくなったというお話。

これが、クリスマスに靴下にプレゼントを入れることの起源のようですね。

しかしこのお話の他に聖ニコラウスの奇跡として語られる、とある怖い話も存在しているのです。


それは三人の子供がある肉屋に泊めてもらった際に斬られてバラバラにされ、塩桶に入れられてそのまま放置されていたという恐ろしいもの。

その事件から七年後に聖ニコラウスによって悪事がバレて肉屋は逃亡、聖ニコラウスが塩桶のそばに座って子供達に語りかけると、子供達はまるで昼寝でもしていたかのように何でもないような顔で起き上がってくるというお話。

今節の最後にロルカがクラウドに望んだ願いというのは、自分達三人を人間を合成したキマエラ(キマエラはギリシア神話などに出てくる合成獣の事)にしてほしいというもの。

ロルカ達のキマエラ化は上記の聖ニコラウスの塩桶の子供達のお話をモチーフにしていて、ロルカは亡くなったアウラとロランを自分の身体と合わせることで二人が生きているものと自分に思い込ませようとしていたようです。

・・・それでもロルカは、こんな事をしても結局は意味の無い事だったと気付いてはいるようですが・・・。

(ロルカ自身はサタンに力を与えられてから見た目の歳が変わってないので、アリスト達と同じくらいに見えますが実年齢は不明です。

 あと挿絵では見えていませんが、ロルカは元々アウラとロランと同じくらいの髪の長さでした。

 ですがサタンの力を得てその仲間になってしまったという事を表す為、サタンと似たような髪型にしています。)



今回初めて出てきた種族名のエラインとは、フィンランド語で獣のこと。

獣と一心同体で生きる人々のお話は、ちょうどこの辺りのお話を考えていた頃に読んだ『ライラの冒険』からイメージをいただいています。

(アリスト達の守護獣達の性質も、『ライラの冒険』からヒントを得ています。)

憑依エライン族の暮らすニコラス村という場所は少し特殊なようで、その地の環境自体が人に大きな影響を与えるようです。

エライン族の両親を持たないロルカが偶発的なものとはいえエライン族の特性を持って生まれてきたのも、この地の力が何かしらの影響を与えた結果のようです。

とはいえ、その偶発的な出来事によってロルカ達兄弟が不運な目に遭うのは、ただの悲しい運命と呼ぶには軽すぎるような気がします。

(ロルカが放浪時代に拾って演奏していたカンテレとはフィンランドの楽器で、カレワラの主人公であり優れた吟遊詩人であったワイナモイネンが弾いていたというもの。

 ワイナモイネンがカンテレを演奏すると、獣や妖精達が集まってきていたそうです。

 ロルカにキマエラ達や場合によっては人を操らせていたのもそのイメージで、実はロルカの持つ杖も弦楽器を思わせるようなデザインにしています(カンテレそのものの形ではないですが)。)



あと、これまでの描写でロルカの憑獣達が常に周辺にいない事があったかと思います(カラスの足に掴まって空を飛んでる時とか)が、ロルカがサタンの力を得てから(そしてキマエラ化されてから)憑獣達は表に姿を現さずにロルカの影の中などに身を潜める事が出来るようになっているという設定です。

 なので姿は見えずとも、いつも身近にいるような感覚のようですね。

 ただしキマエラ化されて後の憑獣達は元の生き生きとした生物としての力強さはなくなり、どことなく空虚な魂の抜け殻のようなものとなり果てています。

(今節の表紙絵の憑獣達と今までの挿絵の憑獣達を見比べていただくと、何となく分かるかと思います。)

 他のエライン族の場合、獣は常に表に出ていて主人から遠く離れたりする事は出来ないようです。

(余談ですが、この世界ではトナカイがサンタクロースの憑獣なのかもしれませんね。)



最後に、今節に直接関係はありませんが、アイルランド島に蛇はいないそうです。

一説には、アイルランドにキリスト教を布教した聖パトリックがアイルランド島の蛇を一掃してしまったのだと言われているそうです。

ロルカの憑獣は蛇ですが、その事でロルカがエリン島の外からやってきた存在ということが分かります。



さて、今節はキツい描写が続いたかと思いますが、どうしてもムゲに避けてはぐらかすような表現で書く気にはなれなかったので、このような形をとらせていただきました。

嫌がらずに読んでくださった皆様、改めて感謝申し上げます m(_ _)m

(長々とした解説も読んでくださり、いつもありがとうございます!)


今回も、ご愛読いただき誠にありがとうございます (^_^)ゞ




中高生の頃より現在のような夢を元にした物語(文と絵)を書き続け、仕事をしながら合間に活動をしております。 私の夢物語を読んでくださった貴方にとって、何かの良いキッカケになれましたら幸いです。