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連載 #夢で見た中二物語 48

☆鳥達の戦記☆

一切の陸地も無い、一面が海だけの惑星で暮らす鳥達の国の物語。

ここでいう国とは陸地の上に成り立つものではなく、海の上に唯一生えることの出来る黒い木の上で成り立つ集団の事をいう。

この木以外で海上で生育することの出来る植物は限られている為、食糧危機によって世界中で起こる小さな争い事は耐えない。

主人公は一羽のツバメで、彼が暮らす国の領主であるコンドルの圧政が日々深刻化しつつあるという事を聞いて、コンドルに直談判しに行くところから物語は始まる。

主人公のツバメはかつてコンドルと共に自国を守るため戦った盟友で、自分ならコンドルを説得出来ると意気込む。

それと同時に、誰よりも優しく強くたくましかった彼が何故そんな圧政を行なうようになってしまったのかという疑問の答えを知りたがっていた。



コンドルの元に着くと、ツバメはかつての勇士に予想外に歓迎されて話を聞くことになる。

コンドルが自国民に対して圧政を行なっていたのは、外の世界に現れつつある巨悪のことを皆に知らせないためであった。

好奇心旺盛な者が多いこの国の者達は、昔から国外旅行に行くのが好きでしょっちゅう飛び回っていた。

コンドルが最初に抑圧したのは自国民の国外旅行と国外遠征で、それを止められず国外に出た者の中には現在行方不明になっている者が数多くいるという。

ただその事を公にすると国内でも不安が高まる可能性があり、それを危惧したコンドルは現在に至るまで圧政を行なうことにしたのだという。

そのことを知ったツバメはコンドルの行動に理解を示すとともに、自身が国外の様子を知りたくなり、情報を集めてくると言って国外に飛び出す。



昔の戦乱が終わって以来、これまでほぼ隠遁生活状態になっていたツバメは、今まで知ることの無かった様々な国を巡ることになる。

常夜の国や玩具の国、音楽の国や雛ばかりの国を経てたどり着いたのはとある大国で、そこで大きな戦禍の火種が現れ始めていることに気付いた。

この国がコンドルの言っていた国だと理解したツバメは、その火種を消すために戦乱の中心地へと向かう。

だがその最中、その国の君主らしき禍々しい姿をした見たこともない鳥に襲撃され、ツバメは異世界へと飛ばされてしまう。



飛ばされた先でツバメが見たものは、見たこともない生物たちが陸地で生活している姿。

彼らをしばらく眺めていたツバメは、この生物たちもお互いに争い傷つけあい、貧困と飢餓の耐えない行動を繰り返しているのを見て心を痛める。

時が経っていくごとに戦乱や自然現象によって酷くなる世界の風景に、ツバメはこの異世界が誰かに見せられているものである事に次第に気付いていく。

そしてある時、大きな戦乱のさなかに巨大な波が起こり、世界中の陸地を海水が覆い尽くすという現象が起きてほとんどの生命が消失する。

そんな中で何とか生き延びた者達もこのままでは死を待つしかなく、中には戦ったことを懺悔し、自然現象に対して対策をとらなかった事を後悔する者もいた。

その中に一人の青年がいて、今までは自分達が行なってきたことが正しいことだったと信じて疑わなかった。

だがその結果このような状態になってしまい、もし今度生まれ変わってくることが出来たなら、自分が皆の先頭に立って世界をまとめ導き、決してこんな世界にしないと誓った。

・・・ただその誓いは、限りなく負に近いオーラのもとで成されたものだった・・・。

途端にその青年の姿が先程の禍々しい姿の鳥と被り、ハッとしたツバメは目を覚ました。



目を覚ましたツバメが見直してみると、禍々しい姿をした鳥は鷲のように見えた。

その鷲は、かつてツバメがコンドルと共に敵として戦い倒した歴戦の戦士だった。

既に亡くなったものと思われていたが、一度負けたことで人間だった頃の記憶が蘇ったのかもしれない。

転生し生き返ってなお倒された悔しさで姿を禍々しく変え、再び世界をまとめようとして力を求めて悪に染まってしまったその心。

ツバメは鳥であろうが人間であろうが争いを止められない自分達に怒りと悲しみを感じながらそれを受け入れ、少しでも世界に望まれる方向へと導く事を強く誓った。

正義の反対にあるのは悪じゃない、別々の正義同士がぶつかり合うところにこそ争いは生じる。

それを受け入れたツバメは、かつての雄姿と再び向き合い一対一で戦うことを決意する。

いつまでも自分本位の争いごとを止めることが出来ない自分達だけど、ほんの一瞬でもお互いに幸せを感じる為に生きているのだから。

「いくぞ、歴戦の戦士よ」

☆☆☆


今回の夢は、なかなか重い内容でした。

全体的な風景は神秘的でしたが、その中で繰り返される終わりなき戦いの日々に恐れを感じます。

不可能に近いことではあると思いますが、より多くの人がより幸せだと感じることの出来る世界にしていかなければですね。


中高生の頃より現在のような夢を元にした物語(文と絵)を書き続け、仕事をしながら合間に活動をしております。 私の夢物語を読んでくださった貴方にとって、何かの良いキッカケになれましたら幸いです。