【逆噴射蒼雑記】「開演のベルでおやすみ」で青臭く痛々しい夢を思い出せ。

#推薦図書 って企画やってるんだって?OK、逆噴射高梨蒼の出番だ。
(逆噴射文体については こちら をご参照ください)

よく来たな、おれは逆噴射高梨蒼だ。おれは高校時代演劇部に所属していたが、それほど真面目な部員というわけでもなく、輝かしい成績を収めたわけでもなく、また当時のことを語る気もない。

だがおれは高校演劇が好きだし、「もしも時間を戻せるなら?」という、いかにも悪い魔法使いがいいそうな問いかけには一も二もなく「高校生に戻る」と答え――そして叶ったならば、また演劇部に入るだろう。

おれと昔話と現実逃避は、いつかおまえがおれとメキシコの酒場で遭ったときに取っておくとして、いまはこの漫画の紹介をする。ジャンプ+という真の男たちがしのぎを削り、日々アップリ・ユーザーからの評価を奪い合うメキシコに燦然と登場した「開演のベルでおやすみ」だ。おれはこれほど真摯に高校演劇に向き合う作品を寡聞にして見たことがなく、この第一話をみて心が揺さぶられ、必ずnote記事を書き、おまえにこの漫画を教えてやらねばと決意した。 #推薦図書 という企画はおれとこの作品のためにあるのかとおもった。

能書きはこの辺にしよう。お前はすぐにこの第一話を読め。

パソコンからでもアップリからでも無料で読める。アプリをスマッホにDLしないと評価(いいジャン!)はできない、不可解極まりない傲慢な仕様だが…スマッホ・アプリも無料だ。宗教やメモリの不都合がない限りはアプリをつかうといい。GUNは身を助け、いいジャンは作家を助ける

このあと作品や高校演劇の解説を行うが、第一話を読んでお前が満足し、解説が無駄だと思ったらおまえの判断で切り捨て、今度はおまえがこの作品を推薦しろ。おまえがコナンになれ。

お前たちは思うだろう。「演劇ならレビュー・スタァライトがある」「ジャンプの芝居漫画ならアクタージュ -act-age-がある」と。「『頂点を目指す煌めき』『呪いめいた芝居の因果』と違う形での『コンプレックスの克服』を描くのか?」と思った秀才もいるかもしれない。

おれの答えはNOだ。前述二作品と「開演のベル」は本質的に違う。「一般的な高校生が一般的な部活演劇をやる」ことは、プロのアマチュア・簡易ヴァージョンでは断じてないのだ。

高校演劇とは何か?それは語るに難しいが、あえて表現するならこうだ。

一般的なスポーツや楽器演奏と違い、演劇に正解はない。そんなものを経験のない高校生がやろうというのだから、不安定、無法、未熟で、どろどろして、みっともない、しかし眩しい世界だ。

高校の部活がプロと同じわけがないのはあらゆる種目や分野で語られてきたことで今更トレホの首を獲ったように喧伝するべきモノでもない。しかし高校演劇に限っては他の部活競技と一線を画すレベルで魂を晒す舞台-Mexico-だ。それは魂を無防備に曝け出すことであり、魂を披歴し輝かせることでもある。ある意味では「プロ演劇よりも高校演劇の方が過酷」という捉え方もできるかもしれない。

本作主人公「吉井すばる」が体現しているように、高校生はコンプレックスの塊で、苦しみ悩む、真の男と程遠い人間だ。そんな彼らが別人になる――あるいは別世界を創ることは、狂気めいている。それを一般的な高校生活と並行して、だ。役作りにすべてをかけられるわけでもないし、悩みに足を取られることもある。

「演劇」の華々しさや覚悟の決まり具合からはかけ離れた”一般生徒”がそれでも舞台を目指す理由、熱を描いてくれると信じている。

そもそも「劇ってキャラ」のトレホは最初から劇団員とかプロだったりするので、高校演劇をしているトレホは「劇ってキャラじゃない」ことの方が多い。今は、まだ。

己のコンプレックスと向き合う、他人のコンプレックスに付き合うことが高校演劇の一端であり、醍醐味なのかもしれん。だが、おれはMexicoから離れて長いからかなり美化をしている。すくなくとも現役のおれはこんな考証なことを考えていなかった。
おまえはおれを信じず、近所の高校の文化祭とか夏冬の市民ホールでやってる地区大会で演劇部の公演を見て自分で判断しろ。

――

更に高校演劇で特筆すべきポイントは「ポジションが多彩で流動的」ということである。というか多彩じゃないとやってられない。人数が少ないからだ。6人は流石に珍しいが、高校3学年で10人ちょっとというのもざらだ。

ならばどうするか?これが答えだ。

人数が少ないならば少ないなりの戦い方が出来るのが真の男だ。役割に対して部員が足りないならば、一人でいくつもの役割を担えばいい。調査も運転も突撃も制圧もベイブの扱いも一人でやるのがバンデラスであり、照明と音響と役者を一度の舞台でやったのが高校時代のおれだ。

おれはこの漫画を真の男の漫画だと信じているので、きっと主人公が照明や音響、大道具、果ては”エゴの塊”演出に挑戦するときがくると信じているそれを通して、おまえは舞台づくりのいろはを知り、ABCを覚え、アン・ドゥ・トロワを身につけるだろう。全方位、あらゆる舞台効果<ステージ・エフェクト>を知ったおまえは、観客としても勿論、表現者としても一段成長し、「開演のベル」でつよくなる

”開演のベル”は、我々の世界では”2ベル”と呼ばれる。”1ベル”で着席を促し、”2ベル”で照明が消える。幕が上がり、おまえは闇の中で光を見る。光を見せる。そういう世界だ。その中でも、特に未熟で青臭く、ボロボロでキラキラの世界だ。おまえは「開演のベル」を読み、若人の夢を見ろ。

今日のひとこと:「王子」と呼ばれる高校演劇部員は概ね3~5校に実在し、その大半が女子なのだ。



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