【逆噴射高梨蒼】逆噴射小説大賞を振り返り、そしてGUNを手入れする

よく来たな。俺は逆噴射高梨蒼だ。

おれはここまで『逆噴射小説大賞』で7本投稿した。この辺りで一度投稿咲くのおさらいをしてみようと思う。

7本は非常にキリの悪い数字だが、ラッキーセブンという考え方もあるので、7本投稿した今が最高にキリがいい。いわば銃弾六つにナイフを一振りだ。MEXICOでは懐にナイフを偲ばせねばしぬ。

1本目:FMラジオを聞く死神

男は若き依頼人に問いかける。「この曲、最近流行りなんだって?」
少年は戸惑う。世間話と同時進行で、男の手元では銃が分解され、そして手入れされていく。殺し屋なのか、近所の兄さんなのかわからない。
「さて、訊こう。誰をどう殺す?」平然と、気楽に、男は死を提示する。

一本目だ。最初は「老若男女問わず依頼人とコミュニケーションを取るため、ラジオであらゆる年代の曲を聴く殺し屋」というネタがあった。それがいつの間にか地元愛、地元民のために勢力につかない浮遊殺人鬼になった。フロートマーダー、つまりFMだ。

真面目な話をすると、逆噴射小説大賞、ひいてはパルプに大切な初速のカマしが不足していたように思う。”西”や”東”、”海”の悪人に固有名詞をつけてやっても良かった。

とはいえ燻ってた構想を一つの形に出来たのはとても充足感があった。読んでほしい。そしておまえも書け。

2本目:愛を取るか。未来を取るか。タイムパラドックス・ラブコメディ

「パパ、好きな人いないの?」
恵里が無邪気に問いかける。帰り道、買い物をしながら、従姉にパパと呼ばれながら。考えれば歪だが、そんなディティールは些末事だ。
「い……ない」
「嘘」
「いない」
「パパ、ママと出会ったのは高校の時だって言ってたよ」
「そうけ」
応酬の中で平静を保つのも楽じゃない。ここで何を言ったらどう時空が歪むかわからないというのも勿論だけど。
「パパ、ウソつくときの癖って昔から変わらないんだね」
得意げな横顔が、どうしようもなく愛おしい。

鳥宮恵里は好みだけで書いた。ファザコンとか娘をどうのこうのという意味ではない。疑似家族的な関係性――おれはそういうのが好きだ――を、逆に実の家族から描いた形だ。つまりおれは本当に好みのモノを書いていないのかもしれない。混乱してきた。詰まるところめちゃくちゃ距離が近くて恋愛感情のない血縁のない異性愛が好きなのかもしれない。恵弥と恵里は親子だ。おれは何を言っているんだ。鳥宮恵里がおれを狂わせる。

タイムトラベル、タイムパラドックスもおれの一つのテーマだ。おまえもPSYЯENとかを読み、時の流れに想いを馳せろ。身を任せるな。

技法的な話をすると、フロートマーダーの半生をいかし「固有名詞を出す」「謎を出す」「開幕数行で混沌とする」を実践した。達成できているかはおまえがその目で確かめろ。

ちなみにスキ数が閲覧数に対して妙に多い。おまえも恵里が好きなのか。おれも好きだ。

3本目:異世界来訪エルフ!雷鳴の街の唯一神秘

雷鳴の街。電気の都。空も見えないビルの天幕。昔、あの森にいたときガシュアが語った夢物語に似ている気がする。その地で俺は生きている。アイツが知ったらどんな顔をするかな。耳を隠すニット帽の位置を直して、少しだけ寂しく思う。

ジニィは「テクノロジーパンクを書きたい!!」→「でも電脳パンクや蒸気パンクは皆書いてる!!」→「じゃあ電気駆動だ!!!」という勢いと、「異世界転生を書きたい!!!」という勢いが合流し、洪水めいて溢れた作品だ。逆噴射小説大賞は1日1本のシャトルRUNめいた戦いであり、こういう勢いが大事だ。

あと「異邦人が人名をカタカナ認識する」というのもすごく好きなので、やった。タツキとミハナは漢字名があるイメージだが、ここでは書かない。おまえもこういうこだわりを持っていけ。細かくて伝わらないとしても、それを貫く価値はある。

技法的には乱暴な言葉遣いにも挑戦した。とはいえまだ遠慮が見られる。あと文字装飾も色々った。

世界観とジニィのパーソナリティのミスマッチ具合が気に入っているので読んでほしい。

4本目:ファンタジーアクションB級インパクト映画、衝撃のノベライズ

「見ろよあのテーブル」「うん?ダークエルフと……エルフ?」「雪女だよ。”幸運の白銀”」「……待て、あのダークエルフ」「そう、”ブラックボックス”だ」「……どんな偶然だよ」「見物、するか?」「死なない程度に」

「面白黒人」に対して「面白黒エルフ」をやりたかっただけだ。あほだ。

あほな勢いのまま突ッパ知って書くのは思いのほか気持ちよく、SS&BBのタイトリングもそれなりに手ごたえがあるが、如何せん面白黒人のテンプレートが自分の中にないのが問題だった。インプットは大切だ。

ここまで映画をテーマにするなら「邦題」でもつけてやればよかったと思うが、先人が偉大過ぎるのと、思いついたのが遅かったのでまぁいいかとなってしまった。日和った。おれはこしぬけだ。作品はこしぬけじゃないのでよんでほしい。

先人は偉大だ。

5本目:念動!格闘!!鋼鉄激突!!

念動力を人類が手にして百年余り。もはや誰もがサイキッカーの時代で、最も流行っている格闘技。生身ではない。念動力だけではない。念動空手も人気だが、今一つ弱い。世界一の地位を盤石にしたそのレギュレーションの名は念動鎧装。心<テレキネシス>、技<外装技術>、体<基礎体力>全てを要する戦い。それが念動鎧装――!

念動戦記はかなり手ごたえがあった。

元より「念動力に特化した話を書きたい!!」という気持ちがあり、同時に「ロボットも書きたい!!」となった。だから「念力で動くロボットアーム」を主題にした。コンテンツは足し算掛け算で出すのが一番早く、確実で、楽しい。カツカレーは好きか?おれは好きだ。つまりそういうことだ。

これのせいでロボットを書きたくなったんだ。

念動鎧装は思い付きのわりに設定も詰めやすく、文字通り結構楽しいおもちゃを手に入れた感がある。今後書くかはわからないが。

技法的に特殊な目標は立てていなかったようだが、「セイントボックス」「流鏡(るきょう)」「 #麺屋伊勢庵 」といった固有名詞や、バイト少女のテレキネシスなど、細かい部分でディティール補正できたのはよくやったと思う。

6本目:謎を解くか?土が付くか?猶予は一瞬、待ったなし!

撒いた塩が煌めく。満員御礼の熱気が肌に伝わる。

幾度となく仕切っても、万を超える取り組みをしても、いまだに互角に戦えた感触はない。横綱。大きすぎる男。その視線を受けて、俺は燃え上がる。

またタイムリープの謎を忘れていた、と気づいたのは、櫓投げで派手に客席まで飛ばされたときだった。

#相撲 だ。逆噴射小説大賞では相撲が一大勢力になりつつあるらしいが、実際の本数的には50/1200とからしい。多くても100/1200だろう。細かい計算はともかく、一大勢力っぽい気勢なのはじじつだ。そして「無限土俵」はその幕内の席を戴いている。

相撲だけでマガジンがつくれるのはやはりおかしい。

技法的には「リフレイン」に挑戦した。これはまじで挑戦だ。ひとつの決まったフレーズを使うことで、ある場面や感情を強く呼び起こす手法だ。
今回はさらに「タイムリープ」を混ぜ込んだ。恐らく、誇大広告でなく世界一短いタイムリープだと思うが、そのループ具合を示すためにもリフレインは覿面だった。

世界一短いタイムリープ」と題して、いわばオチ、キモの部分をタイトルで直接言い切るのは、正直悩みもしたが「初速を稼ぐためにはあり!!」ということになった。なりふりを構うな。

あとヘッダー画像をフリー素材などを駆使して作ったのは楽しかった。

7本目:歌るかやられるか。アイドル無法の戦国時代!

「あなたたちのステージ、見せてもらったわ。袖からだけど。『フォーリン♡オータムラブ』、いい曲ね。貴方たちらしくて、可愛くて」
「光栄です。私らも見せてもらいましたよ、『詞炎万城』。強くてアダルティで、とても真似できませんよ」
「ありがとう。……セカンドステージ、楽しみにしててね」
「えぇ、そちらも……。じゃ、また後で」

セカンドステージ開幕まで、あと55分。アイドル魔道にブレーキはない。

7本目、デッド・オア・ライブは「アイドルは綺麗なモノ」という幻想を破壊し、かつて読んだトラウマの小説のある技法を真似て破戒した一作だ。

技法というのは、つまりポジション変化・破壊である。被害者が加害者に……惚れられてる側が惚れる側に…ヒーローとサイドキックの逆転……こういうのは古今東西ドラマTicだ。トラウマとなった小説も、つまるところこういう変化をやりやがったのだが、それは置いておく。とにかく、「最初に読んだとき」と「最後まで読んだとき」で主人公の印象を変えられたら最高だなと思った。

いい感想をいただいたので、文句なしに大成功だ。

未来へ……

おれはここまで7本を投稿し、ここで紹介したが、参加作品は全部で1200とかそれ以上とかある。終了までにあと1回終末を挟むので、概ね3000エントリーがあり得る。

ここでもしおまえが参加すれば3000エントリー+おまえの1本×書いた満足感で、実質5000エントリーパーワということだ。おまえは自分を信じ、パルプを信じて戦え。

おれもたたかう。それがnoteというMEXICOで血を燃やし活きるための唯一のR・O・A・Dだ。

おまけ

逆噴射系のまとめMAGA=GINだ。多くが上述の作品だが、若干違うものが混じっている。目を通すのもいいだろう。

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