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#逆噴射小説大賞2019
いつか僕たちが、この革命劇に名前を付けよう。
「ね、貴方は大きくなったら何になりたい?」
「いきなり何です」
赤と黒が入り混じる空を見つつ、女性は言った。感慨深げに目を細める女性と対称的に、少年は目を見開いている。時折ゴーグルを調整している姿には緊張感があるが、会話をする程度には余裕もあるらしい。
十人程度による簡素な山中のキャンプは暗い。いくつかの控えめな灯りも、すぐに消灯できるように全員が備えている。
彼の視界には、依然変わらない山の
Bet everything But no-life
誰もが怯え、しかし騒然とすることさえできないホールで笑っていたのは、銃口を二つ突き付けられていた男本人だけだった。
不自然なほどのチップの塔の前に座る彼は、ラフに着崩したスーツスタイルだ。白いジャケットから覗く黒いシャツには皴がない。ホールドアップした手首に光るアクセサリーも厭らしくない。整った身形の中で、今は卓に置かれている黒いパナマハットだけがくたびれていたのが印象的だった。
「ベック、少し
ニューマンライツ、カメラ、アクション!
そして、雄大な地球を背負ったスタッフロールが終わった。「国際連環」「国際人類和平機構」の堂々たるロゴがスクリーン中央で止まる。
――止まって一分、何も起きなかった。
君の周囲が、演出でなく事故か、とざわついて数秒。背景の地球が高速逆回転を始めた。同じく昇りの数倍速で、スタッフロールも下へ流れていく。
「『和平伝』をご覧頂き、有難うございます」
逆流する名前たちを隠さぬよう、向かって右隅。三
俺と元俺の国喰いのススメ
★
「ひったくりだね」
「……捕まえろって?」
「勿論」
俺の隣の小さな影は長い髪を波立たせ、軽く頷いた。
俺は、背を押す風めいた銀色を視界の端に見て、両手の暗器グローブをぎちりと嵌め直す。黒い革が指を締め付け、瞬間、血が巡る感触が強くなる。
「焼き肉屋の路地。突き当りの右、質屋の裏口への階段前」
つま先で地面を叩く。重く硬く、仕込んだ金属はいつも通り頼もしい。
「一発殴ったら、懐から銃