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そもそも心とは

この記事は平野啓一郎の『本心』の読書メモ&感想文です。
#読書の秋2022 の企画に乗っからせていただきましたm(_ _)m

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1、本書が扱うTopics

●近未来:VR、AI
●社会問題A:差別(障害、外国人)、貧困
●社会問題B:安楽死、家族のあり方

2、読後に考えたこと

本のタイトルの『本心』は、直接的には、死んでしまった主人公の母の『本心』を指すと思う。生前、安楽死を望んだ母の心の内が主人公は気になってたまらない。

ところで、「心」とは何だろう。

我々は自分自身の気持ちすら、正確に把握はしていない。自分自身の行動原理も謎が多い。自分が考えて行動したと思っても、それは他人に促されているものだったということもある。マーケティングやセールスライティングが成り立つのは、それゆえだ。では、「自分の心」って何なんだろう。そもそも、心は自分のものなのだろうか。見えざるものに導かれているのではないか…とすら、思ってしまう。もはや、デカルトの「我思う故に我あり」の世界だ。

作中で主人公はリアルアバターという職業に就いている。

リアルアバターとは、顧客が行きたい場所にリアルアバターが赴き、顧客の代わりに景色を見たり体験をしたりする仕事である。ゴーグルを装着することで、顧客はリアルタイムでその体験を共有することができる。
業務の中で、ふと主人公は思うのである。今の自分は自分なのだろうかと。確かに肉体は自分のものだが、客の指図どおりに動いている自分は、自分だろうか?

非常に興味深い問題提起だと思う。今の私は本当に私か。そもそも私を私たらしめているものは何か。何があれば私は私と言えるか。リアルアバターという特殊な職業だからこそ、顕著に現れるが、実は我々の現実世界でも同じシーンがあると思う。親の言いなりになっている子供。会社の歯車のように働く自分。広告に踊らされるがままに商品を買う消費者。

うーん、答えは出て来ない。

3、分からなかった部分

現在を生きながら、同時に未来を生きることもまた、甘美であってくれるのならば

平野啓一郎『本心』

この文章で私が引っかかったのは、2つだ。

まず、生きることを「甘美」と形容する点が驚きだった。甘美なメロディー、甘美な夢とは良くいうものの、甘美という形容詞を「生」という大きな名詞にかけることが初体験の感覚だった。

次に「現在を生きながら、同時に未来を生きる」の意味が掴みかねた。他の方の考察が気になるところである。

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ここまでお読みいただき、ありがとうございました(´꒳`)
気になった方は、是非、本をお手にとってお読みください。

ちなみに他の『本心』の読書感想文によると、同じ著者のこちらの本を読むと、一段深く、物語を味わえるようです。私もこれから読みます。

では、読書の秋を楽しみましょう!さよなら!


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