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【マンガ】遅刻癖がある人の話『拡張機脳』を読んで。

マンガ読むなんてなかなかに珍しいのですが、Xで見かけて、読みだしたら止まらなかったので紹介させていただこうかと。

それがこちら。
もしカバスタジオさんの『拡張機脳』です。


誰しもこういう能力がほしい!と思うことはあるでしょう。

コミュニケーション能力、時間管理能力、語彙力、空間認知力、絶対音感、愛嬌、積極性。それだけでなくて、ポジティブ思考であったり、特定の言語を話せる力であったり……。
それが200万円で確実に手に入りますよ、と言われたら、あなたは買いますか?

主人公の持田には遅刻癖があって、バイトに遅刻しては怒られる日々。
そんな時、「拡張機脳」というサイトを見つけます。
「あなたの脳に好きな機能を追加できます」と書かれたそのサイトには、誰もがほしいと思うような「能力」が掲載されています。ただし、1ファイル200万円。はじめは冗談の類だと思っていた持田でしたが、繰り返し遅刻をしてしまう自分に嫌気が差し、「時間感覚」という能力に興味を持ちます。
口座を確認すると、貯金の200万円が。
持田は研究所へ行き、能力をインストールすることにしました。

能力をインストールする方法は簡単です。
データベースに依頼者の脳を繋ぎ、脳内をデータベース化して研究所が保有する拡張ファイルをドロップアンドドロップするだけ。ものの10分で能力を手に入れることができます。
「時間感覚」をインストールした持田は、はじめこそ実感が湧かなかったものの、すぐに周りからの評価が変わったことに気が付きます。
インストールからたった2週間後、バイト先の店長に呼び出された持田は、正社員にならないかと誘われます。
それまで全く評価されずに怒られ続けてきた持田は、人生ではじめて、いい子だとか思いやりがあるとか、まじめだとか、そういった抽象的なものではない評価のされ方があることを知りました。

「拡張機能をインストールしてから、毎日胸を張って生きられるようになりました」

テレビの取材でそう答える持田。しかし、持田の言葉を遮るように大きな笑い声がスタジオに響きます。
「経験の伴わない“自信”なんてものはだ」と言い切ったのは、その番組の有名司会者で……。


まずね、私も手に入れたい能力たくさんあります。
主人公と同じ時間感覚はもちろん欲しい。タスク管理、スケジュール管理、それだけでなく会話の間合いをはかることまでできるんですよ!
いいな〜!この能力が手に入ったら卒論も計画的に進めることができるし、仕事の要領も良くなるし、コミュニケーションも円滑に取ることができる。そりゃあ、他人からの評価も上がって生きやすくなるよ。

他には何がいいかな?ポジティブ思考!良いよね。何でも前向きに考えることができたら、人生きっと上手くいくもの。
あとは文章力とかも欲しいな。それからセルフプロデュース力とか欲しい。マーケティング力とか手に入れれば、今の世の中で生き抜けたりするかな?

って、ないものねだりだったらいくらでもできますよね。理想を語っている間だけは本当に楽しい。
サイトを眺めて目をキラキラさせている主人公の気持ちが手に取るようにわかります。その時間だけ、わくわくできるのです。

でも現実世界の自分は本当にダメダメで、要領は悪いわ、評価なんてされないわ。
こんなんでこれから生きていけるの?って、できない自分に向き合っては失望して、絶望して、生きる気力がなくなってくる。

それがお金で解決できる。

どうだろう?でも容姿だっておんなじですよね。
お金かけて整形して自信を手に入れることができるなら、私は整形してもいいと思うんです。
でも整形って、痛いわ、失敗のリスクもあるわ、目に見える変化だから陰でなんか言われることもあるだろうし……辛い経験することもあるよね、きっと。

でも、この「拡張機脳」は、辛いことなんて一切なくて、ほんの10分ヘルメット被っておくだけ。中身の変化だから一見したら、他人だったら、初対面の人だったらわからないでしょうね。

「経験の伴わない“自信”なんてものは屑だ」ってセリフ、作中でたぶん1回しか出てきていないと思うのですが、これってすっごく意味のある言葉だなって思ったんです。

時間感覚もポジティブ思考も持って生まれたもの?その人自身の性格や性質であって、持ち合わせていない自分が不幸なだけ?

きっとそうじゃない。

日常生活の中、SNSやテレビの中でも、キラキラしていて羨ましい、理想のこの人、嫉妬してしまうこの人、尊敬するこの人。

みんなきっとなにか辛い経験をして乗り越えて、その姿になったのだと思う。
表面的なことだけ見て、今の姿だけを見て、その人の過去とか裏での努力とかに目を向けないのは違うよね。

もちろん、生まれ持った才能、環境、容姿。変えられない過去だってたくさんある。はじめから同じ土俵に立てない人だっていくらでもいる。

でもその時に、上だけを見て、自分は惨めだ。こうなれない自分は不幸だ。だから頑張ったって無駄なんだって考えるのは勿体ない。

私がやってきたひとつひとつのことが私を作り出して、やってきた経験もやってこなかった経験も武器になる瞬間がきっとある。
考え方とか習慣とか、自分で変えられるものはいくらでもあるし、自分の手持ちの札が人より劣っていると感じたとしても、それで戦ってやるんだ!って丸ごと愛してあげたほうが生きやすい。ただし、手持ちの札は増やすことができるのです。

「拡張機脳」をインストールして、本当のあなたはどこに行ったの?
アンインストールしたら、あなたの価値は無くなるの?

この作品のテーマの一つかもしれない。

今ね、私が追っておる夢の世界は、私よりも若い人だってたくさん努力して活躍しているの。
早くからその環境に身を置けている人が羨ましくも妬ましくも思うことがあった。
経験値の高い人たちには決して勝てないと思うこともあって、今もそう。持って生まれた価値も、人より劣っている才も、自分はこの世界で生きていけるのか?って不安になって眠れない日も多い。

けど、きっと、そんな自分を丸ごと愛してあげたほうが生きやすい。理想に近づくために自分でできることはたくさんある。変えられないことももちろん多いけれど、その分手札を増やせば良い。

そんなふうに思ったのが、この作品の感想です。


こちらの作品は、Kindleで絶賛配信中です(全4巻)。

なお、Kindle Unlimited対象作品です。会員の方は無料で読むことができますのでぜひ。

もし読んだら、あなたの感想も聞かせてね。

じゃあ、今日はここまで。また明日!

ゆきのたき

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