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FF14の大躍進に迫る小さな影 集客と集客層#03

#01で問題提起、#02で現状把握を示してきた。年齢が30代よりも高い古参プレイヤーは「FFのテーマパーク」を十分理解しながら堪能できる。だが大躍進が起きた2021年頃のプレイヤー人口増加は「FFのテーマパーク」を十分堪能できない若い年齢層のプレイヤーである可能性があることを述べた。

ではなぜゲームコンセプトである「FFのテーマパーク」を十分堪能できない可能性を持つ低年齢層のプレイヤーを惹きつける結果となったのか。


漆黒編から変化したシナリオ描写

新生、蒼天、紅蓮までのシナリオは、旧FF14から引き継いだシナリオ及びメインNPCのキャラ設定によって足枷を着けられているように感じるものだった。それぞれのパッケージでベストを尽くしていたが、旧時代の細かな伏線の後片付けと取捨選択の作業に追われている様子が感じ取れた。

旧時代含め新生時メインNPCは9名だったのが、
各シナリオ編で4名削って暁月のフィナーレ編主力メンバは5名に
シナリオ後片付けの一例:ホーリー・ボールダー モブNPCで4.xまでシナリオに参加

漆黒編からのシナリオもそれら伏線の後片付け作業が進められていたものの、その作業はほぼ終わり、シナリオ枝葉はかなり削ぎ落とされている状態に到達していた。その分”後ろ向きな作業”よりも旧FF14から続く主幹シナリオの終着点に向けて多くの時間を割くことが出来たのではないだろうか。

また漆黒編からのメインNPCたちは、今までよりも、より強烈な個性を出すようにシナリオが描かれている。今までは旧FF14の遺産であった細かな伏線の後片付けのための代弁者であったように感じる。しかし漆黒編からは血の通った台詞回しも増えてきて、まるで漫画の深いキャラ設定のように自らの性格や意思に基づいてシナリオが描かれている。

漆黒編から暁月編にかけてのシナリオテーマを「正義の定義」「青い鳥」としたのもプレイヤー人口増加に貢献したと推察される。

このテーマは非常に哲学的である。遡ると古代ギリシャ時代から人間に投げかけられているテーマである。

古代ギリシャの哲学者ソクラテスは著作を残していませんが、ソクラテスの考えは弟子のプラトンが記録しています。

ソクラテスは「正義」を「熟慮及び検討の結果として最善と思える考え」と定義しました。社会は多数の人間で構成されており、全員の意見が一意することはありません。熟慮及び検討には議論が必要で、議論の結果としての合意が「正義」であり、議論を超越した絶対的な「正義」は存在しないと考えました。

https://ohtsuka-kohei.jp/mail-magazine/vol387.html/page/2/

そんな定義を追い求めるメインNPCの漆黒編シナリオ設定から、さらに暁月編では「青い鳥」をプレイヤーが投影できる姿・形としてストーリーが展開される。

この哲学的テーマ「正義の定義」がメインNPCから発せられる血の通ったセリフにより自身の操作キャラに投げかけられる。その一連のやり取りがプレイヤー自身の価値観へ投影され「正義の定義」について再考させられる。

これらいくつもの積み重ねがメインシナリオの評判に影響を与えた。その結果この漆黒編シナリオへの没入感が「FFのテーマパーク」が堪能しきれない若い年齢層の集客に繋がったのではないだろうか。

コンテンツの安定供給

エオルゼアデータベースから閲覧できるバトル関連のコンテンツ数を表で示した。PvPコンテンツが新生枠に入っている分小計に差が現れている。しかしこれは毎パッチ修正が入り新しく刷新されている部分も強い。なのでそのPvPを差し引くと60個近いコンテンツ数が絶えず供給されているのがわかる。

様々なバトルコンテンツに「FFのテーマパーク」が散りばめられているが、これだけの数がパッチ毎に導入されているので例えテーマパークのエッセンスやオマージュが分からなくても、飽きさせないように配慮されているのが伺える。

ID(4PT)数が徐々に減っているが、意図的に減らしその分他コンテンツを充実させるためと弁明有

その他のコンテンツに関しても以下のサイトを利用させてもらいながら整理していくと漆黒編あたりから特別なアプローチがある事がわかってきた。

https://ff14wiki.info

フェイス/コンテンツサポーターと新生IDの改修

このコンテンツ修正が最も大きな変化と言える。

前述の通り絶えず60個近いバトルコンテンツがパッケージ毎に供給されるため、旧パッチコンテンツの陳腐化が激しい。そうするとコンテンツの人口比率は最新コンテツに偏るため旧コンテンツが過疎化しマッチング発生率が乏しくなる。

新規プレイヤーは旧コンテンツから順に進んでいくため、過疎化してマッチングしないコンテンツが新コンテンツまでの障壁となってしまう。これを解消して人口比率の多い新コンテンツ群に新規プレイヤーを導こうとしているわけだ。

その手段がフェイス/コンテンツサポーターである。通常ならオンライン上のだれかと4人PTを組んでダンジョン踏破をするが、それをオフライン同様1PC(自分)+3NPCという構成でも踏破できるようにしたシステムである。

コンテンツサポーター導入についてP兼Dの吉田氏は次のようにメディアを介して述べている。

最近よく,「MMORPGらしさがなくなるのではないか」という不安の声をお見掛けするのですが,「FFXIV」はメインストーリーだけのゲームではないですし,メインストーリーが終わったあとにさまざまなコンテンツを遊ぼうと考えると,やはりマッチングは必要になりますから。あくまで,「MMORPG」と聞いただけでプレイを敬遠する方,「シナリオがソロで遊べるなら,シナリオだけでもプレイしてみたい」という方にお応えするのが最大の目的です。

 しかし,そこで自身のキャラクターを気に入り,ストーリーに没入し,もっと世界を知りたい,楽しみたい,と感じた時にそれらのプレイハードルは格段に下がっているはずです。もちろん,ストーリーを追っていくうちに,ふとしたきっかけからマルチプレイを体験する方だっているだろうし,そうやってベースの人口を増やし,結果的にMMORPGやオンラインマルチプレイは面白くて怖くないとお伝えしていきたいというのが,僕の本当の目標なんです。

https://www.4gamer.net/games/199/G019924/20220309065/

この流れを受けて新生時代に作られたIDも修正された。袋小路もあったダンジョンから一本道へ変更されたり、雑魚敵との距離を微修正してダンジョン進行にストレスがかかりにくくしたりと、よりプレイに快適さが生まれている。

シナリオに興味があってプレイを始めただけでバトルコンテンツにあまり興味がない人たち向けにも、無人島開拓といった全く新しいコンテンツも入っていたり、小さな改修が繰り返されている(例:グループポーズの度重なるポジティブなUpdate、アドベンチャラープレート追加、ハウジング家具の継続的な供給)。

こういった小さな修正と、漆黒編シナリオが秀逸だという口コミを聴いて、シナリオを体験したくて参加した方への配慮も含めたコンテンツ投入が、「FFのテーマパーク」を十分に堪能できない年齢層の集客を下支えしているのだろう。


じゃあどこに「小さな影」があるのか。

つづく

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