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デポの壁、レモンのモクテル

OMAとMVRDVが手がけるオランダの近代建築を巡る。

アムステルダムのValley、ロッテルダムのMarket Hallや、Depot Boijmans Van Beuningen(デポ・ボイマンス・ファン・ベーニンゲン)皆デポと呼ぶ、クイントハル美術館やドゥ・ロッテルダムはレム・コールハースが手がけた。

デポはもともと多くのスケーターが集うパークを無くして建てられ、ミュージアムが並ぶパークエリアとロッテルダムの中心都市の中間地点あたりに位置している。
もともといたスケーター達は、すでに外の別の場所へ所属し始めているのだという。
スカートを愛する人たちは、自分達の心地よい場所を求めて移動していく。

巨大な壁はガラス張りで、ミラーのようになっていて、周囲の景色を映し出していた。
そこに映る工事中のパークと、その奥の高層ビルの景色は、リアルなようで偽物のようにも見えて、晴れた空も相まってどこか遠くの違う世界を見ているようだった。
壁の外側にもう一つの世界を映し出し、壁の内側で巨大なアート貯蔵庫としての機能を果たし、オランダのアートの最先端の役割を担っている。

建物の表側と裏側、外側と内側、全く印象の異なる建築がとても魅力的だった。

物事は全て表裏一体。
建築も、音楽も、アートも、思考も言葉も感情もすべてがだ。
裏側を知ることで表側、見えるものに意味が生まれる。

デポの壁がもう一つの世界を映すように、自分の考え方次第ではどんな世界にもアクセス出来ることに気づく。ラジオのヘルツを合わせるみたいに、テレビのチャンネルを合わせるみたいに、ギターのチューニングを合わせるみたいに。

きっとそれが出来たら、人に優しくなれるし、人の優しさを受け入れることが出来るはずだ。きっともっと生きやすくなるだろう。
ここずっと考えつづけていることに、やっとつながりが見えてきた。

同時になんとなくだが、自分という存在は、物語のなかで主人公ではなく、悪い魔女とか性悪な継母とかいじめっこの女子とか、そういう類のものなのではないかと気づいた。自分は"そちら側"なんだと思った。主人公にはずっと憧れていた。
それが嫌で、少し泣いた。

それでも救いはあるもので、私の憧れの女性はheelであり主人公だった。自分の中の悪い魔女を上手くコントロールして(受容して)クリエイティブに昇華させている。彼女の言葉は真実だし、リアルで、生き様があった。
とても烏滸がましいけれど共感の気持ちが大きくて、私は自分の魔女の蓋をどうしても開けられずにいたから、羨ましいと思った。
そんな彼女は鬱病になった過去があったらしい。

やっぱり自分で蓋を開けることはとても怖い。どうしようもない感情や、自分の中の見たくない自分を認めてあげたくなったけれど、すぐには出来そうになかった。いつかそれが出来たらな。

ロッテルダムでもそんなことを考えながら、陽が沈む時間は、川を眺めながら少しの時間を過ごした。
川の向こうには大きな橋とドゥ・ロッテルダムが見えていた。
アムステルダムやユトレヒトとは違い、とても開けた景色だった。
私は身体を包み込んでくれるタイプのチェアに腰掛け、ベリー味のモクテルを飲んでいた。モクテルはノンアルのカクテルのことで、私はオランダではほとんどお酒を飲んでおらず、もっぱらモクテルを楽しんでいた。最終日だけワインを2杯飲んだ。

モクテルといえば、友人の計らいで連れていってもらったレストランで、とても素敵なユンユンという女の子が美味しいモクテルをご馳走してくれた。
レモンとストロベリー、どちらがいい?
とにこやかに聞いてくれて、私はレモンのモクテルを選んだ。飲んでみるとそれはジンジャーのベースにレモンの果肉がアクセントになったモクテルで、季節にも、料理にもぴったりな爽やかな味だった。

私はこの時のために、スーツケースの半分を駄菓子やスナックで埋め尽くして日本から持参していた。まいばすけっとでスナックをカゴに入れ続け、気づけば5000円を余裕で超過していた。

私はその大量のスナックをアルバートハイン(オランダの代表的なスーパー)の袋にパンパンに詰め替えてユンユンに渡した。とても驚きながらも受け取ってくれ、うちのキッズ達が喜ぶわ!と想像以上に喜んでくれた。
まいばすけっとからアルバートハインへ。そしてオランダのキッズ達へ。沢山のスナック達も、長い旅を終えたみたいだった。

友人が教えてくれたのだが、ユンユンは同じレストランで働く、チミンという男の子と恋人同士だだった。彼はとても良いヤツだった。チミンはイケメンすぎて、挨拶でグータッチする時に指パッチンで音を鳴らしてくれる。
私はそれを周りの人に広めたくなっている。

ユンユンは来月日本にやってくる。
どうかユンユンが綺麗な花火が見られますように。
どうかユンユンが無事USJのチケットが取れますように。



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