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ご近所だったカレー屋の、便りがあるのもいい便り

「自宅から1番近いカレー屋」が昨年の春先に更新された。 

距離にして自宅から徒歩200歩。  それ以前は、徒歩300歩で行けるCoCo壱番屋がその名をほしいままにしていたが、この街に住んで3年、ついに更新された。

 毎日の通勤経路にある、 看板がなければドアが近距離に乱立するメゾネット住宅と勘違いしそうな外装をした小さなカレー屋だった。そこは、ついに行くことが叶わず閉店をしてしまった「いなり寿司スタンド」というニッチなお店があった跡地で、「魔女の一撃カレー」という。
これまた変わった店名だった。

「限定15食」という看板が立ってから1週間ほどしたとあるテレワークの日に少し早めの昼食で伺った。最寄り駅の中野坂上駅からは徒歩3分。番台がまだ居るタイプの銭湯の隣の隣にある。

メニューは「スパイスチキンカレー」1種、650円(2020年3月時点)。お代は前払い。魔女の宅急便に出てくる「お園さん」みたいな奥様と、「お園さん」みたいな旦那様がお出迎えしてくれた。お代は先なんだ!と財布を手繰っていると「先に貰わないと忘れちゃいそうで」と笑って返してくれる。こじんまりとしたカウンター4席のアットホームな雰囲気とBGMに流れているのはFMラジオ。

ガラスが薄くてかなり大振りの寸胴コップで出てきたお冷の中にはスプーンが浸かっているという古風な演出。2,3分ほどFMラジオのリスナーのお悩みメールを聴いていると、これまた古風なアルミ皿に信号機のようなパッキリ綺麗な3色のカレーが。ターメリックライスのイエロー、ルーのオレンジ、水菜のグリーン!

辛味は店名のイメージ以上に辛くない!口の中にはたっぷりほぐれたチキンが。どこを食べてもずっと肉が居るカレーって天才ですね。充実度が天才。水菜と針生姜で味に遊びをつけながらも、贅沢にもホールでごろっと入っている黒胡椒がパリッと弾けるとスゥっと走る辛さに「こっちが一撃だったか!」とアトラクションのような楽しさを感じた。
それからは月に2回はこのカレーを食べにお邪魔した。いなり寿司スタンドの無念を晴らすように。

今年になって私は中野の街を離れた。
 あの店は、今も元気なのだろうか。
 
夏も終わる頃、「グルメOLインスタ」を嗜む美女と食事をした。Instagramに映る宝石のような食事の数々、華やかな立地のそれらに圧倒された。
最近行った、いいところある?と聞かれた私がなけなしの飲食店手札の中からレジェンドカードばりの勢いでおすすめをしたのはこのカレー屋さんだった。

その次の日には、魔女の一撃カレーは彼女のInstagramのコレクションに仲間入りしていた。彼女は痛く気に入ってくれたらしく、周りにも絶賛したところ、昼間には行列が出来たという話を聞いた。いいことをした気分だった。

10月に入り肌寒くなってきたこの頃、カレー好きの同僚からこの店の話題が上がった。
「美味しいよね、このお店」
有名バンドのインディー時代からライブに出入りしていた古参のファンのような優越感を滲ませつつ笑顔で返事した。

「魔女の一撃」 
東京都中野区本町2-47-3
https://goo.gl/maps/VQbyd3DFzt4q3GQY6
営業時間:11:30~15:00/17:30~21:00(売り切れ終了)
定休日:日曜日、祝日


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