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ブランディングの進め方、4つのステップ

「選ばれ続ける企業」になるためには、自社のあるべき姿を明確にし、あらゆる接触ポイントで一貫したコミュニケーション活動を行っていくことが必要になります。企業として、何を伝えるべきかをしっかり考え、あるべき姿をカタチにし、そして伝えていく「ブランディング」の方法について、具体的に解説していきたいと思います。

企業ブランディングを推進していく際に、私が最も大切にしていることは、「答えは会社の中にある」ということです。外部のコンサルタントやクリエイターに依頼すれば上手くいくというものではありません。自分たちのあるべき姿をカタチにしていくには、自ら考えることが必要です。したがって、ブランディングを進めるときは、とにかく社員を巻き込んでいくべきだと考えます。

そのうえで実際に企業ブランディングをはじめるにあたっては、次の4つのステップで進めていきます。

 Step1:あるべき姿を見つける
 Step2:あるべき姿を言語化する
 Step3:あるべき姿を見える化する
 Step4:あるべき姿を伝え、浸透させる

順を追って見ていきましょう。

Step1:あるべき姿を見つける

まずは「過去から想いを集める」ことからはじめます。具体的には、

 ①社是や理念をひも解く
 ②創業時のエピソードを調べてみる
 ③社史・年史を読み解く
 ④広告や会社案内など過去のメッセージを集める

という作業によってキーワードを抽出し、過去の変遷から会社としての意志や大切にしていた想い、また自社をどのように他社へ紹介してきたかなどの変化を洗い出します。

同時に未来についても調べます。将来どんな会社にしたいかという「理想の企業像」を、

 ①経営者へのインタビュー
 ②キーマン(新規事業担当者など)へのインタビュー
 ③経営方針や中長期経営計画等の確認

などによって明らかにします。

さらに現場の「社員の想いを集める」ことを行います。

 ①社員代表者へのインタビュー
 ②社員アンケート調査

などを行い、さまざまな観点(例:強みや特徴、理想の企業像、社風や社員のタイプ、誇りや帰属意識、満足度、好意度、不満な点や改善すべき課題など)から社員の意見を聞いていきます。

また、外部の意見として「顧客や関係者の声を聴く」ことも行います。長期にわたってお付き合いのあるお客様や取引先が自社を選んでいる理由こそ、最大の自社の価値だからです。

 ①生活者アンケート調査
 ②お得意様へのインタビュー
 ③取引先、株主、学生(新入社員)へのインタビュー

などから聞いてデータを集めます。

こうして収集した大量のキーワードを大きく3つに整理・分類します。ひとつは「維持・継承」、これからもずっと持ち続け伝えていくべきもの。ふたつ目が「強化・付加」で現在は弱いけれど、今後強化あるいは付加していくべき項目。最後が「捨てる・なくす」で、従来の欠点や不備な点です。

これらの作業は、社内のさまざまな部門のメンバーを集めたプロジェクトチームにより、何度もディスカッションをしながら検討していきます。

Step2:あるべき姿を言語化する

分類されたキーワードをもとに、あるべき姿を次の3つのカテゴリーで定義します。

①どんな人たちに愛されたいか(理想的な顧客像)
②どんな価値を提供できるか(提供価値)
③どんな「らしさ/イメージ」を感じさせたいか(ブランドパーソナリティ)

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こうして、ブランドコンセプトの基本構造を決めていきます。自動車メーカーを例にブランドコンセプトを見てみましょう。自動車メーカーA社では、都会的でドライブに喜びを感じる顧客に、抜群のハンドリングやセンスの良さという価値を与えながらドライブの高揚感や気持ちよさを提供しています。一方、B社では、実用性と高い品質を求める顧客に、燃費の良さや安全性によって安心感や信頼感を提供するイメージを打ち出しています。あるべき姿を整理体系化することで、違いがはっきりしてくるのです。

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実際は社員の代表者を集めてワークショップなどを行いながら、キーワードをもとに一つひとつの要素を定義し、整理・体系化することで、自分たちのあるべき姿を明確化していきます。そして、一般的には、ブランドステイトメントやブランドスローガンという形でわかりやすく文章化することによって、よりコンセプトを鮮明化させることができます。

Step3:あるべき姿を見える化する

あるべき姿を言葉にしたら、次はそれを見える化する作業です。
まず、行うことは、自社のコミュニケーションツールを集めて視覚監査をすることです。会社案内やカタログ、商品パッケージ、広告や販促物などを一斉に集めて並べます。そして統一感が不足していれば原因を探っていきます。単純にロゴがバラバラなのか、色や書体に一貫性がないのかなど、どこを整備し変更すべきかを検討します。

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中でも企業の「顔」となるのが、ロゴやシンボルマークです。ロゴは、顧客を導いてくるための視覚的道具であり、企業の本質的な強みや特徴と社名を結びつける重要な役割を持ちます。だからこそ、あるべき姿をきちんと規定し、それを反映させたロゴの開発が重要になります。

新たなロゴを制定する際、トップの独断で決めたり、著名なクリエイターを起用して作ったりする場合があります。しかし、できれば従業員を巻き込んで組織の中の意志を大切にしながら検討していくことを推奨しています。その方が、社内の多くの人が共感し、納得できるロゴになるからです。

例えばある企業では、新しいロゴを決めるために、各部署の代表者を集めて議論しブランドコンセプトを固め、それをもとに1,500案ほどのロゴデザイン案から絞り込みを行いました。そして、1案決定後は、デザインの微調整、精緻化作業などを幾度も行いながら、ロゴの意味づけやデザインシステム開発(ルール化)などを経て、最終的なロゴを完成させています。

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Step4:あるべき姿を伝え、浸透させる

あるべき姿を規定し、カタチにした後には、日々の活動に具現化させていきます。そのためには社員に自分たちのあるべき姿をしっかり伝え、理解・共有してもらうことが大切です。社員がどうあるべきか自覚するからこそ、一人ひとりの行動にあるべき姿が反映され、さらに企業活動の具現化に結びつきます。

一方で社外に向けて、自分たちはこうありたいと表明・発信することでお客さまの期待感を醸成し、自社を選んでもらわなければなりません。その期待が実際の企業活動と一致すれば、信頼や好意が生まれ、ファンを作ることにつながります。もしも社外に向けて発信していることと、実際の企業活動が矛盾していたら、お客様は大きな不信感を抱き、離れてしまうでしょう。

だからこそ、まずは社員にしっかりとあるべき姿を共有させて意識を変えていくインターナル・コミュニケーションが重要になるのです。

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インターナルコミュニケーションについては、次回あらためて紹介したいと思います。


※よろしければ、拙著『選ばれ続ける必然 誰でもできる「ブランディング」のはじめ方』 (講談社+α新書)を、ぜひ、ご覧ください!!


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