見出し画像

哲学なんて歴史小説みたいなもの|伏線いっぱい、考察しがいのある物語

今回はあえて大雑把に、やや乱暴なことを書きますが、タイトルの通り、「哲学なんて、歴史小説みたいなもの」ではないかと私は思います。

龍馬伝、とか三国志、とか杉原千畝、みたいな物語とそんなに大して変わらないのでは?ということ。(さっそく大雑把で乱暴ですね。)

進撃の巨人やら鬼滅の刃やら、背景や舞台設定解説動画はかなり見られているのにこの哲学という歴史の物語はどうにもあまり人気がない様子。

人類の積み上げてきた知恵の塊ともいえるような、本来とっても役にたつ興味深いもののはずなのですが。

それを少しでも楽しく読むにはどうしたらよいのか、段取り的なことを私なりに考えてみようと思います。

結論:『とある歴史の物語』、くらいのつもりで読んでみる

先に結論から書いておくと、世界史、日本史などの歴史物語、くらいに思って読めば楽しめるのでは?と個人的には思っています。

中学高校の歴史の授業で配られたであろう、「世界史便覧」「世界史資料集」なんかを手元に置いて、登場人物が過ごした時代の王様はだれか?どんな国同士が戦争してたのか?どんな建物に住んでたのか?なんて伏線を回収しながら謎解き感覚で読むのはとってもおすすめ。

何から読むのがいいか?おすすめ①

歴史モノとして読めばいいというのは分かったけれど、それじゃあ何から読めばいいの?という話になるかと思いますが、個人的なおすすめとしては、哲学の知識ゼロの状態からであれば、飲茶さんのとっても売れている哲学入門の本なんてかなり読みやすいと思います。

この本、作者の飲茶さんという方が、バキという人類最強を目指す男たちの戦いを描いた漫画風に、例えば「真理を目指した男たちの挑戦 ~デカルト、ヒューム、カント、ヘーゲル~」とか、「哲学界の最強エリート プラトン  ~得意技:イデア論~」とか、そんな調子で史上最強の哲学議論大会が進んで行きます。

よくある入門の本なんかだと、第一章:ソクラテスについて、第二章:プラトンについて…なんていう調子で書かれていて、つながりがいまいち分からない、ということがよくある気がしますが、この本では、真理について、国家について、神様について、存在について、それぞれについて意見を述べた哲学者たちが前の人の意見に賛成、反対などを述べる形で展開されていて、初めて哲学に触れる人にはとても分かりやすいと思います。


おすすめ②

『史上最強の哲学入門』は、いわゆる哲学者が書いた本ではないし、もうちょっとかっちりした本がいいなぁ・・・という方にはこちらがおすすめです。

大学生ならお世話になった方も多いであろう有斐閣から出ている『はじめての哲学史』です。

こちらは竹田青嗣さんと西研さんが中心となって書かれた本で、お二人とも大学で哲学を教えている、いわゆる哲学者が書いています。

この本の何がよいかといえば、一言で言えば「丁寧なところ」でしょうか。”丁寧”、とはどういうことか、それこそもう少し丁寧に説明すると、ただ哲学者の思想や言葉の羅列ではなく、歴史の流れの中でどんな役割を結果的にになったのか、といったことを大切にしていて、かつ初学者でも分かりやすい言葉で書いている、というようなところです。

『はじめての哲学史』からちょっとだけ紹介

この本との出会いを少しだけお話しすると、私自身が哲学をはじめからできるだけ体系的に理解していきたい、と思って色々と入門書をあさっていた時、多くの本は哲学者の思想や言葉を簡潔に紹介していくようなもので、説明が簡略化されすぎていて、逆に何を言っているのかよく分からない、という感想を抱いていました。

その哲学者がそれを言った時代の歴史的背景や、その切実さが分からないと、ただAさんはこう言いました、それに対してBさんは…というのの羅列に過ぎないと。

そうした中で『はじめての哲学史』からは、歴史の流れや背景を説明して、その歴史の中に哲学者たちが登場した必然性を説明しよう、というような心意気を感じたのです。

それぞれの哲学者は、どういう生の状況のなかで・どういう問いをもち・どういう考え方でもって答えようとしたのか

これは最後まで読んでから気が付いたのですが、あとがきにはこんなことが書かれていました。

この本をつくるとき、執筆者たちで話し合ったことが1つある。
「それぞれの哲学者は、どういう生の状況のなかで・どういう問いをもち・どういう考え方でもって答えようとしたのか、書き方は自由であっていいけれど、このことは意識しながらやっていこうよ」と。(p.300)

そしてこうも書いています。

大切なことは、生の状況があり、そこから問いが生まれ、それに対して哲学者たちは答えを出そうとしている、ということだ。私たちは、哲学書を読む際に、「この人はなぜこんなことを問題にしているのか」ということに鋭敏である必要がある。そして、彼らの生の状況から孕まれる問いに、自分の生が抱えている問いと通じるものが見いだせるとき、彼らの考えを私たちは自らたどりなおすことが出来る。そしてそこに強固な原理が見いだせるとき、私たちはそれを”リサイクル”して、現代の私たちの生に役立てることが出来るだろう。(p.300)

ここでいう「生の状況」とはつまりは「その哲学者が生きていたその頃の様子」であって、一言で言うなら「歴史」といってもよいでしょう。

歴史物語の中で、その登場人物が何に疑問を感じ、どんな答えを出し、どんな行動を起こしたのか、そしてそれが周りに、後世にどんな影響を与えたのか。

まさにそこを念頭に置いて書かれた本なのであって、私が求めていた哲学史の物語そのものであったと言っても過言でないかもしれません。

哲学者だって、人間だもの

なんだか本のレビューのようになってきてしまいましたが、そろそろまとめに入ろうかと思います。

「哲学なんて、歴史小説みたいなもの」。

結局、どんなに難しいことを解き明かしたエライ哲学者であっても、私たちと同じように(かは分かりませんが)考え、悩み、生きた一人の人間です。

周りより少し深く考えて、書いたものがのちの人に読まれて、受け継がれて。そうしたものの積み重ねが現在であって、それは振り返れば正に歴史そのものではないでしょうか。

三国志、とか戦国時代の話とか、みんな結構好きだと思います。劉備が諸葛亮に三顧の礼で仲間になってくれるようお願いして、とか、織田信長が明智光秀に裏切られて、とか。

もちろんそうした戦のダイナミックなドラマは少ないかもしれないけれど、とある哲学者が、こんな時代にこんなことを考えたんだなぁ、というようなエピソードは、内容がぺらぺらな自己啓発書やビジネス書なんかよりもよっぽどしっかりしていて、かつ、考えて仮説検証した結果が「歴史」の中に示されているんですから、素晴らしいではありませんか。

なぜ難しく感じるのか?

哲学は結局歴史なのであるとか素晴らしいとか言ってきましたが、さすがに否定的な見方を全く述べずに終わってしまうのはフェアではないというか、思考停止というか、それこそ哲学的じゃないのでは?なんていわれてしまいそうなので、分かりやすい、楽しい、だけでは済ませられないね、という話も大雑把にですがしておきたいと思います。

さて、歴史小説みたいに読めば楽しいよ、面白いよ、なんて言ってみたところで結局のところ難しいものは難しいではないか、難しい内容や本がほとんどではないか、という声が聞こえてきます。

世の多くの人が「哲学」というものに抱いているイメージは「難しそう」とか「役に立たなそう」とかそういったものではないかと思うのですが、これはある種当たり前であるように思います。

なぜなら哲学は多くの場合「そもそもそれって本当にそうなんだっけ?」と前提を問うことであるからです。

その時代に上手くいっている、上手くいく可能性が高い一般論的なことに対して、そもそも、と議論を挑むわけですから、それはどうしたって確率的には”役に立た”ないでしょうし、言葉の定義をしっかりして理論武装して、既得権益的なところに議論を吹っかけるのですから小難しく理屈っぽくもなります。

そしてさらに厄介なのは、こうした小難しい内容に関心を持つ人は、えてして”フツウ”ではない、一癖二癖ある人なのではないでしょうか。

周りの人と同じように、”フツウ”に楽しく生きていれば、別にそもそも、とか考える必要もないと言えばないわけで。

こうしたクセの強めな人が、過去のクセの強めな人達が繰り広げた小難しい、確率的に役に立たないようなことを議論し始めたなら、それはもう常人には理解できないこと請け合いです。

ちょっと茶化して書きすぎでしょうか…?

(けれど、なぜ難しく感じるのか、という問いを立てて、その理由を追って考え、推理してみるのもちょっと面白くはありませんか?)

さいごに

というわけで、哲学を楽しく読むには、というようなテーマでしたが、私の解としては、哲学の堅苦しいイメージは忘れて、「歴史小説のつもりで、世界史資料集なんかを片手に背景にひそむ伏線を回収しながら読んでいく歴史謎解き推理小説」くらいなつもりで(?)、自分の悩みに重なるところや、ライフハック的に生き方の参考になりそうな考え方を探しながら読んでみてはいかがでしょうか?ということでした。

人類の知恵の塊ともいえる哲学が、もっと今生きている私たちに、広く、もっと手触り感のあるものとして役立てられるようになったら、「本質」的なことが蔑ろにされることも少なくなるのでしょうか、などと考えたり。

私自身も学んだことをできるだけ分かりやすく、動画なりPodcastなりで発信することを大切にしていきたいという所存です。

※ちなみに『はじめての哲学史』をベースにした読書会?勉強会?をやっているので、一緒に苦しみ…じゃなくて楽しみながらテツガクの袋小路に迷い込んでくれる方を募集中なので、興味があれば、参加してください。😂


この記事が参加している募集

おうち時間を工夫で楽しく

最近の学び

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?