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蛇口交換

自分の身体に蛇口があったら良いのにな、とよく思う。捻ればいつでも中身を流し出せるように専用の蛇口があれば良いのに。

人はそれぞれみんな、流し出し方を考える。スポーツをしてみたり、旅をしてみたり、美味しいものを食べたり、読書をしてみたり、方法を使い分けて、都度都度身体から流し出す。それぞれの見えない蛇口を使って。

蛇口を捻ってもうまく流れ出ない事も多い。それはきっとみんなが日々経験していることで、昨日はあんなにスムーズに捻れた蛇口も、今日は錆び付いて微動だにしない。中身が滞って、濁っていることをこんなにも感じているのに、蛇口は一向に開かない。今すぐにでも流し出したい中身を抱えたまま、もう明日が来てしまう。

そんな時は、誰かと蛇口を簡単に交換出来るような世界だったらいいなと思う。誰かとやり取りをすることがこんなにも便利でインスタントになったのに、どうもお互いの蛇口を交換出来るまでには至らない。自分のいつもの蛇口が、今日のあの人には有効で、あの人の普段の蛇口が、今の自分には必要で。そんなことはよくあるはずなのに。みんなで必要な蛇口を貸し借りし合う、そんな世界ってきっと、滞りも濁りもない、清らかな場所だ。

©︎Ryosuke Mori
©︎Ryosuke Mori

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