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保育園PTA会長になってみた。無反応・他力本願8割をどうする?社内広報との共通点

これは私(=広報の端くれ)がいわゆるPTA的な組織の会長になって頑張っている物語、ではなくて。PTA組織改革の過程を通じて、社内広報との共通点を発見した話です。(ついでに社内広報の仕事もちょっと振り返る)

最初に、私は普段はスタートアップで広報をやっています。プライベートでは息子が春から小学校に進学しながらも、次男の「僕のこと忘れないで」という心の声が届いたか、保育園父母会会長をやる流れになり、この4月から常に頭が忙しい感じで過ごしています。結果として一番忘れられているのは娘。(ごめん)


会長になることの兆し

アクティブブックダイアローグの課題図書

現在はPeople Experience部(人事総務部)に属してますが、異動前のマーケティング部でアクティブブックダイアローグ(ABD)という取り組みをしていました。で、とある会の課題図書がこちら。

PTAの本じゃん、関係ないわ!ってことはなく、レビュー見てもらうとわかると思うんですが、組織・リーダー論の話として学びのある内容です。もちろん、PTAの世界を知るという意味でもこの春からの未来を予兆していたかのようにピッタリハマった参考書。
(本の推薦者Sさん、ABDの起案者Nさん、ありがとうございます!)

PTAの絡みで言うと、
・父母の価値観の多様性
・前年・前例踏襲の無駄だらけの誰得?組織運営
これらの実態を少し垣間見ることができました。

著者(革命的なPTA会長)の意見はごもっともだし、かといって父母の意見も理解できないわけではない。どっちの立場でいたいかと言えば、なんの役割ももたないまま、できるだけ関わりたくない(笑)と思いつつ、このままいけば環境的にも性格的にも役員側で関わることになる可能性はちょっとだけ想像しました。
(が、未来のことなので一旦忘れておくことにした)

今年のおみくじの言葉

「人のために・周りのために尽くすことが吉。そう導かれる一年です・・・」みたいなことが書いてあった。引いたのは栃木の二荒山神社。おみくじとかあまり信じないタチで、毎年引くわけでもないんですが、今年の内容はなんとなく考えさせられた内容だったのでしっかり覚えていました。

今は子どものことで物理的には手一杯、仕事においてはどっちかというと世話したり指揮したりする立ち位置よりも、専門性磨きたい。そう思っていたので、何言っちゃってんのおみくじさんって感じでした。

それなのに、不思議なものです。異動の際に(実はあんまり乗り気ではなかった)社内コミュニケーション注力ミッションが追加された時も、人事部門の業務をやることになったのも、本記事のテーマのように子どもの保育園で会長担うことになったのも、お布施のようにおみくじの言葉が頭をよぎるわけです。なんか初めてこういったものを信じました(笑)。これが自分の2023年の運命なんだ。導かれているんだ、逃げてはならない・・・ということなのかな、と。
今年の前半に自社イベントで軽食手配した時も、1/100の確率でピザの注文金額全て無料になったんですよ。自分の運までも会社に使うの?ってもうマジで笑うしかなかった。(ピザは売れましたよ、お陰様で)

保護者組織の実態と理想

保育園なのか、幼稚園なのか、小中学校なのか、高校なのか…段階的に親の関与も減っていくゆえに活動に多少の違いはあるのでしょうけど、目的としては
①子どものサポート(そのために学校・先生を支援)
②保護者のコミュニティ

にまとめられると思います。

で、実態はどうなっているか。

  • 本質が忘れられ、イベントや委員活動が目的化されている

  • 当事者なのにお客様になっている父母・保護者

  • 例年踏襲を最善とする(時代に合わない)運営

こうやってギリギリのところで繋がってるPTA

毎年やってくる役員決め。一人一役、立候補が出るまで終わらないか、くじ引きか。
職員の人材不足・採用難、そして少子化。せっかくエネルギーを使うなら、優先されるべきはもっと他にあるでしょうけど、50年も前にある規約を変えて正すことの労力を誰かが無償で費やさすことをするか、しないか。

昭和の名残で時代に合わないという意見は100%共感するし、もやもや抱えながら頑張ってる役員には無条件で「いいね」です。
今後は無くすなら無くすし、続けるなら簡素化・効率化は必至だと思います。現に、私の周辺地域や子どもの小学校でもPTA組織が解散されており、本質を問ういい流れだと思っています。

価値観も変わり、働く父母が増え、生活の中でIT技術が浸透した現代に選択できる方法はきっとありますよね。

保育園の場合

もはや稀有な存在だからか、意外と知られていない「保育園」のPTA組織。たった100世帯前後ではあるけど、大前提として働く父母に代わって子どもを預かる施設。平日日中に動くことはできず、まだ自分の世話ができない子どもとの時間から工面して捻出した時間でなんとか活動をやるしかないという。
仕事が終わって、子ども・家族との時間に使いたいですよね、本来は。

そもそも教育の場である前に児童福祉施設。子どもの安全確保が第一に目指されるべき場所。安全確保のために、保護者(組織)ができることは何かを考えて運営されるべきとは思いませんか。

ここ数年の保育現場で目を疑うような事故・事件は、同時に「預ける=安心」という神話が存在しないことを証明しています。こういった保護者の組織が果たすべきは大きく、保護者組織をもし残存させるならば、そういった安心・安全の保育を協働する機能だと思うわけです。

保護者視点の「働けないから預かってほしい」だとダメで、「安心・安全な場所あってこそ働くことができる」という子ども視点。安全が脅かされる経験をすれば自然と後者の考えに共感してくれるかもですが。起こってからでは遅いので。

私は少なくとも保育園という場所に精神的に支えてもらっていて、私だけでなく夫もそれぞれ保育園・職員との信頼関係を築けているから、我が子も安心感を覚え、親も安心してガシガシ仕事に集中できています。信頼関係こそがインフラなんです。感謝しています。

保育園のPTA組織において不運なことは、最大で6回(6年間)もなんらか役員・委員になる機会がある。恐怖。私、何を隠そう3児同じところに預けてきており、最大9年間そのくじを引く可能性がある。震えて待つのか、改革するのか、後者に気持ちが向かいました。

▲新聞記事のリンクが切れているので上記を参照

262の法則で組織を考える

会長の立場から見える景色と、人事部門・社内広報を通じて見える景色、似ているところがあります。
組織を構造分解する時に「262の法則」が使われますが、保護者組織も同様に分類することができると思います。

“どのような組織・集団も、人材の構成比率は、優秀な働きを見せる人が2割、普通の働きをする人が6割、貢献度の低い人が2割となる”

262の法則 / 伊 経済学者 ヴィルフレド・パレート

以下のような感じ。

2割:無反応(静観)派

  • 改革だろうがこのままだろうが、自分が役割被りたくない

  • 意見は言わない。リアクションも無。

6割:他力本願派

  • 意見はあるが、公の場では言わない。

  • 役割に対して自ら絶対に手を上げない。

  • 基本は指示待ち・受け身

    • 「私はこうしたい」ではなく、「で、私はどうすれば良いの?」「私がやるべきことさえわかればいい」

2割:積極(改革賛成・反対)派

  • 賛成でも反対でも積極的に議論に参加

  • 役割を担ったら期待通りかそれ以上にやる

反対派も改革協力・上位の2割に含めたのは、好き・嫌い=関与=ポジティブという、SNSマーケティングの考え方。アンチより無関心層9割を開拓する方が難易度が高いと言いますよね。アンチは何がアンチかがわかるため。そのポイントを押さえれば、逆に強力な協力者=ファンになってくれる可能性さえある。
特に保護者組織の場合、みんな「子どものため」と言う本来の達成したい目的は同じはずなので。「アンチ」な反応の先に達成したいゴールが同じと言うことはすごく大きなポイントです。

なんなら無反応系も、我が子を預けている以上は決して無関心ではない。ベースが無反応でも、問いかけの方向性によってはアンケート回答くらいは期待できるかもしれない。

方向性としては、上位2割の積極派(必ずしもハズレくじを引いて役員になった人とは限らない)を議論・運営の中心に巻き込み、6割の他力本願派の当事者意識を醸成するような参加型の運営を目指し、2割の無反応派には役割・タスクと指示回数を最小限に減らす。その一方で大事な1-2回に反応もらえるように促し、運営側の省エネにも繋げる。

そもそも2-6-2の組織構成も、個々の価値観によってそうなっているところもあると思っています。役割や周囲の人間関係、所属する組織が変われば違う働きをする可能性は大いにある。職場がまさにそう。

社内広報のスキル・マインドの応用

私自身の広報スキルとしては、まだまだ発展途上ですが、PTA組織を会長として改革しようとする時に、それらスキルやマインドを活かすシーンは非常に多いです。(もはや毎日)

  • 関係者間の共通のWinを見つける

例えば社外広報においてメディア(のユーザー)ニーズと自社ニュースの訴求ポイントが交差するポイントを探すように、社内広報だと経営と社員、部署間の共通のwinを見つけるステップを絶対に挟みます。
保育園PTAにおいては、保育園・職員・地域・保護者、そして子どもの共通のwinがどこにあるのかを見つけるところから。現状の課題とニーズの把握からスタートし、課題と現状を照らし合わせ、そのギャップを埋めるために活動の方向を整理し直すということです。

  • 誰のことも否定しないコミュニケーション・運営

価値観なのかルールなのか。職場においてはルールとのバランス感は難しいですが、保護者組織は完全にボランティアなので、ルールというよりは常識的な話が多い。例えば、嫌いなものを嫌いなままでいいのか、絶対に残さず全部食べさせるのか、そんな具合で「どっちがいいです」を選択するのは保護者ごとに違うわけです。委員活動に参加するのも、土日は家族との時間を重視したいかも、個々の価値観だし、強制されるものではないはず。

ベテランの方の影響力はすごいし、活動への参加頻度や役割があるかないかでも見られ方が変わる。悪いことに、保育園って毎日送迎で親も顔を合わせます。

自分と他人の常識が同じとは限らない中で、会の目的=子どもの安全・成長が果たせること、になるべく意識をもっていく。そんなファシリテーションを心がけています。
そもそも「みんな違ってみんないい」金子みすゞさんの詩は小学生で習っているでしょう?

  • 目的を絞り、納得感を醸成

何事も目的・狙いが多すぎると、議論の過程で決定することが難しくなりますし、施策を実行しても振り返るポイントが多くなります。参加する側が受け取るメッセージも混乱する。何を達成したい会か、そして参加者がその目的を共有できたと感じることができれば、次回の参加率もそれ以上を期待できる。少なくとも、参加することにネガティブな感情は減ります。

会議も含めた定例のイベントにおいても同じです。その会議で達成したいゴールを絞り、共有する。会議の時間は大体は平日夜や土日の家事・家族時間を使うわけで、ダラダラとやるのは物理的にも精神的にも負荷です。1会議1時間厳守。そのため、進捗共有は違う方法で。共有と相談は分ける。議論・相談は1トピック。こんな具合です。
当たり前に思うけど、仕事じゃないしモチベーションがみんな高くない。加えて井戸端会議好きの方も一定割合参加しているので、これが案外難しい。会が閉まらないし決まらない、時間も間延びする。そんなことがあるんです、現に。

  • 参加型の企画運営で当事者意識の醸成

例えば、PTA組織の解体または運営改革の議論を行おうとしても、役員を経験した人くらいしか課題のリアリティがない。と言うより、改革に熱を注ぐ動機となる機会(課題を知り、自分ごと化する)がないです。まして、コロナ禍で縮小・休止していた活動もあり、3年間さらにその機会が薄まってしまいました。

じゃあ少数の多数決で決められるか、というと、会員は全保護者。悲しいことに、規約上は議決を取らなくてはなりません。

コロナ禍が引き起こした課題は他にも、横のつながりの希薄化です。転入家庭は馴染むのも大変だったと思います。

我が子の保育園は転入家庭も少なくはないので、父母会があるから保護者同士が(仮に嫌でも)連絡のために繋がる必要があることが、転入家庭の不安を和らげる機会になったり、もしもの場合の連絡網として活きる可能性がある。
「つながり」方は再考ポイントかもしれないが、「つながり」自体は大切だとも感じた数年間です。

少数の執行部や、委員活動内での意思決定ももちろんありますが、行事やイベントなどを交流がさらに希薄な縦の学年(年次)で企画・運営するのではなく、縦の懇親を深める行事なら年中保護者に、乳児の巻き込みが必要な行事は、年の近い年少の保護者間で話し合ってもらうような運営に変更しました。ただし、参加は任意。やらない選択もOK。理由は説明してね、という流れです。
実行するにしても、「To do」を増やすのは不幸で次年度以降を考えてサステナブルではないため、準備期間の短縮化は運営の方針として決定し共有しました。

少しでも自分ごととして考える機会をもって、いよいよ秋から「父母会どうする」議論を再び展開できると思っています。

学びになったこと

導きたい結果があったとして、合意形成のためにはその土壌づくりをしなくてはならない。父母会会長としても全く同じで、改革を進めたいならばこその段階的改革をしなくてはなりません。
なくしてしまえば、また復活させることは難しい。かといって誰も手をあげて運営したがらない父母組織を残していくことの是非を再度問う必要がある。地域の保護者たちの運営で始まった保育園という歴史があるので、余計に一部の保護者たちで決断を下せないという、改革は簡単ではないですね。

あと、IT企業かつ割と若い組織で働いていることも影響してか、ITツール活用への抵抗感やオンラインコミュニケーションのスピード感にはだいぶギャップがありました。働く父母が大前提の保育園組織ですが、年代の開きはあるし、職業もバラバラ。ITリテラシーも仕事の進め方も同じじゃないのは当然ですよね。

協力者として期待を寄せる「積極派」の保護者が活躍できないやり方で進めてしまいそうになったり、自分がタスクを被りすぎてパンクしかけもしました。コミュニティの平均年齢とITリテラシーにあったツールや進行方向を選択することの重要性を痛感しました。

オンライン会議ツール自体はコロナ禍で浸透したものの、対面も適宜加え、一方でチャット方法は大苦戦しながら情報収集を並行。結果として、日常的に使う、操作に慣れた「LINE」のオープンチャット機能を工夫して今は運営しています。運営の目的に合えば良い。それ以上欲張りすぎない、ということですね。
(これ、友人同士でなくても参加でき、個人情報への配慮もできて今のところ良いです。)

何よりもせっかくの労力が引き継がれずに来期は過去のアナログなやり方に戻る未来が濃厚だとしたら、そんな労力かけたくないです。属人化を解消することが属人化という矛盾。(泣) そんな状況を招く前に気付けてよかったです。

どうでしょう。組織の考え方や社内広報におけるマインド・スキルをPTA組織の運営ログをまとめる中で振り返りました。結構応用できているのではないかと。

まだ続く会長としての父母会改革。そして社内広報。どちらのチャレンジも引き続きお布施を信じて頑張りたいと思います。

つづく・・・


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