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森見登美彦テーマ考 #偽電気ブラン
#また乾杯しよう の投稿がかなり好きで、今日までなのが寂しい今日この頃です。
企画趣旨とは少し違いますが、人気作『夜は短し歩けよ乙女』から、森見登美彦とお酒の話にお付き合いください。
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今年の1月、1杯200円であらゆるカクテルが楽しめる200yen bar moon walkにふらっと立ち寄ると、可愛らしいコースターが飾られていることに気づきました。
『夜は短し歩けよ乙女』のアニメ映画公開当時、未成年だった私はまだバーに行くことができず、コラボイベントで配布されていたこのコースターを持っていなかったんです。
その日の帰り際、せめてもの記念が欲しくて「写真撮っていいですか?」と店員さんに聞いたら「実は余ってるので、お好きなのあればお持ちしますよ」って。
錦鯉!ステキだ!池袋東口店のお兄さんありがとう…。
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「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。けれど先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する"偶然の出逢い"にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。そんな2人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。(文庫版裏表紙より)
2017年に湯浅政明監督によってアニメ映画化され、小説を読まない人にも広く知られるようになった本作。脚本はもちろん、以前の記事でもご紹介した上田誠です。小説では季節が違う4つの夜を舞台に描かれています。
私は太平洋の海水がラムであればよいのにと思うぐらいラムを愛しております。(p.13)
お酒を愛する乙女のモノローグは詩的で、するすると引き込まれる感覚があります。単に女子大生とはくくれない、ふわりとした唯一無二のキャラクターが魅力です。
物語は乙女と先輩、ふたつの視点で展開していきますが、乙女は筆者の可愛らしい部分、先輩は筆者の泥臭い部分を切り取ったのだと言います。森見登美彦という作家の豊かな内面を垣間見ることができる作品とも言えるかもしれません。
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5月の終わり頃、彼女は結婚式の2次会を抜け出してやってきた先斗町で「偽電気ブラン」という不思議なお酒と出逢います。
電気ブランは浅草ゆかりの実在するお酒ですが、"偽"とは一体…。
明治を思わせる煉瓦造りの小さな工場を思い浮かべました。中には電線が張り巡らされて黄金色の花火が飛び交っています。醸造所というよりは、科学実験室と変電所をまぜこぜにしたようなところなのです。難しい顔をした職人の方々が、門外不出のレシピに従って慎重に電圧を調節します。わずかな電圧の違いが偽電気ブランの味を変えてしまいますから、彼らの顔が難しくなるのも当然です。やがて神秘的な香りを漂わせる液体が、透明なフラスコへ次々と注がれてゆくのです。電気でお酒を作るなんて、いったい誰がそんなオモチロイことを思いついたのでしょう。(pp.19-20)
あくまで乙女の妄想なので本当に電気で作られているかは分かりませんが、分からないからこそ夢のあるお酒ですよね。そんな未知のお酒は、『有頂天家族』シリーズにも登場しています。
作中で乙女が最初に入るバー「月面歩行」は、木屋町にある200yen bar moon walkがモデルとなっていて、映画に合わせたイベントが終わった今でもコラボカクテルを提供してくれています。その中にはもちろん偽電気ブランも。
偽電気ブラン(ムーンウォークver.)
200yen bar moon walkはデジタルメニューで全てのカクテルに使われているお酒を公開しているんですが、偽電気ブランだけは「気になったらバーテンに聞いてね」という粋な演出。どうやら電気は使っていないようです(それはそう)。
小説で乙女が詩的に表現した味とは違いますが、秘密のお酒を飲んでいる気分になれます。本当の味が知りたい方は、小説を読んで堪能してみてください。
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カクテルといえば甘いイメージがありますが、日本酒やビールをベースにしたカクテルも美味しいですよね。
家飲みにおすすめなのは、レッドブルを使ったシュワッと元気の出るカクテル。お手軽にビールと割れば飲みやすく、バーボンと割るジャック・ブルは水割りよりも爽やかに楽しめます。
森見作品によく登場する赤玉ポートワイン(現在はサントリーさんの赤玉スイートワイン…キリンさんの企画なのに…)は居酒屋でも飲める赤玉パンチだけでなく、梅酒など果実酒と割っても美味しいです。柑橘系のノンアルコールジュースを少し混ぜるとより飲みやすくなります。
最近は彼女のようにふらりと彷徨いながら飲み歩くことは叶いませんが、大切な家族と家でゆったり映画を見ながらの晩酌もいいかもしれません。
ちなみにアニメ映画『夜は短し歩けよ乙女』はアマプラでも視聴できます。
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普段は芸術についての記事を書いています。こちらもぜひ。
おしまい。
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