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柒・伍番街

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自創作柒・伍番街の設定やら小説やらです。パロディ、セルフ二次創作を含みます。
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#小説

八咫烏は首輪をはめた

八咫烏は首輪をはめた

柒・伍番街現代パロディ 社会人軸
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 短針は頂点よりも少し前、ウノウチはのんびりとした足取りで食堂へ向かっていた。営業事務として本社に移動してきて一週間になるが、気負う様子は少しもない。周囲に誰もいないのをいいことに人好きする笑顔はしまわれている。昨日の夜にシステムの一部が故障したと連絡が来たが、まさか自分の部署が関係しているとは思わなかった。おかげで何もできることがなく、他

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危難の留守番、微睡の誘惑

危難の留守番、微睡の誘惑

柒・伍番街本編軸
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「なぁコレなんてエロゲ?」
 カエデは革張りのソファの上で心臓をばっくばっくと鳴らしながら天を見上げていた。そう、ばっくばっくと。心臓が口からまろび出そうなくらい自分の心臓の音がうるさかった。
 昨夜、遅く帰ってきたカエデは部屋に向かうことすら億劫で、シャワーで汚れを落としてすぐにソファに倒れ込んだはずだった。常設されているふあふあなクッションを腹に乗せて

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私の恋はオランジェット

私の恋はオランジェット

柒・伍番街???時空
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 好きだと言うには、相応しい可愛らしさや美しさが必要だ。言って良い人間と悪い人間は必ず別れていて、頂点に立っているのが渋谷皇だった。
 学校という狭いコミュニティのヒエラルキーは渋谷を中心に成り立っている。身姿は常に人垣に埋もれ、最底辺は全像を見ることすらできない。立場の差がありすぎる。許されるのは僅かに漏れ出す笑顔の端くれ。笑い声を聞くたびに、惨めに

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さよなら天国、二度とこないで

さよなら天国、二度とこないで

柒・伍番街現代パロディ恋人軸
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 今日も、夕食に愛を注ぐ。
 具材を切って炒めて、ルゥや水を入れて、隠し味にほんのちょっぴりのスパイス。
「うん、今日も美味い!」
「いつも美味しそうに食べてくれて、うれしい」
 テーブルに向かい合って座ると、最愛の彼氏の顔がよく見える。健康そうな肌ツヤ、瞳孔の異常も不可思議な発汗もない。今日も異常に気づいていないようだ。隠れて一人、安堵した。

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午前六時、隣人のレールを歩く

午前六時、隣人のレールを歩く

柒・伍番街本編時空
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 薄靄のフィルターがかかる午前六時。半自宅と化した千代田邸で皇は目を覚ました。傍から微かな呼吸が聞こえる。この家で早い時間に起きることはないため、現実感は薄かった。白い息が漏れる。
 喧騒もなく、規則正しい物音だけが律動していた。自宅とよく似ているが何かが決定的に違う静けさ。理由はわからない。だけれど嫌ではない。布団を剥いだ。
 本来、千代田邸で眠った翌

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新聞サークルお断り

新聞サークルお断り

柒・伍番街大学生パロディ
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 証言1。
 渋谷皇と千代田墨は大学内でも異端の組み合わせである。異端、とはいうものの厨二病のような服装をしているとか授業中に大声で喚き出すなんてことではない。単体であるならどこにでもいる女性に他ならないのだが、全くの正反対なのである。かたや陽の者、集団の前に出て人を率いるカリスマを魅せつけるカースト上位。かたや人前に出ず、教室の端で本を読んでいる

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