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新聞サークルお断り

柒・伍番街大学生パロディ
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 証言1。
 渋谷皇と千代田墨は大学内でも異端の組み合わせである。異端、とはいうものの厨二病のような服装をしているとか授業中に大声で喚き出すなんてことではない。単体であるならどこにでもいる女性に他ならないのだが、全くの正反対なのである。かたや陽の者、集団の前に出て人を率いるカリスマを魅せつけるカースト上位。かたや人前に出ず、教室の端で本を読んでいるような人間である。

 証言2。
 彼女らの姿を学内で探すのは本当に大変だ。昨日髪が長いと思えば、今日はショートカット、翌日はド派手な髪色。ある日はノーメイクで来校し、別の日には目の周りは真っ黒、真っ赤な口紅を携えている。素顔が苦手なわけでもなし、メイクに命をかけているわけでもない。遅刻しかけたから化粧をしないわけではないようだ。いやしかし、とにかくあの二人を探したければ、特に仲のいい二人組を探せばいい。くれぐれも女性の二人組を探してはならない。彼女らは性別こそ女性であるが性別などとうに超越している。

 証言3。
 私が受けている授業は簡単に単位が取れると有名だ。席は自由だからいつも一番後ろの恥に座るのだけど、一つ前に座る二人は、というか渋谷皇は授業中ほとんど眠っている。千代田墨はよくお菓子を食べている。だけどこれだけの人数がいるとほとんどが気づかないし、彼女らはゆうゆうと遊んでいるのだ。だけれども成績は一番いいらしい。らしい、というのは又聞きだからなのだけど、どうやら彼女らはなにかしらの分野で賞を得るような天才なんだとか……。

これらが今回得られた証言である。我が大学有名な二人組、渋谷皇と千代田墨。残念ながら我々が接触することはできなかったが、また次回彼らの記事を書く時には今度こそ云々カンヌン……」

 墨の肩に寄りかかりながら、学内新聞を読み上げていた。伏せられた睫毛がぱちぱちりと律動する。木漏れ日が瞼で散光していた。
「重いんだけど」
「ね、みんなあたしらのこと大して知らないのにこんだけ知ってるのヤバいよね。ちょー好きやん」
 だらりと寄りかかったまま拳一つ高い顔へ、喉を見せるように口を開ける雛鳥。極細ポッキーを一本差し入れる。ぽりぽりと幸せそうな顔をしてウサギのように口にしまう。満足したのかぺろりと唇を舐める。
「あ」
 小枝を再び口内へと差し入れる。延々と続いている光景だ。
 構内でも人の立ち入りが殆どない旧校舎の内庭。周りを築70年のコンクリートが囲む10畳の空間は、新緑により遅々とした破壊活動の最中である。
 新聞サークルから逃げているのだ。出された記事は一種の指名手配書である。全くもって覚えのない、いや、覚えはあるものの罪とは言えない有名税のせいだ。新聞サークルの記事が出されてから1週間後、捕まれば追加の記事が出る。今日は七日目である。
 まぁ、翌日には違う人間が尻に火をつけられて痛くもない腹を探られるのであろう。

 空になったポッキーの外装を横に置いて、ぽちりぽちりとスマホを弄る。
「3限休講だって」
「んえ? じゃあ今日来た意味なくない?」
「この1限のためにきたのにな。カレーライス食べて帰ろっか」
「シチューがいい……良さげな裏路地カフェ見つけた」

 店を探すことに関しては皇に分がある。インスタで見つけた喫茶店をダブルタップして、振りかぶった足の反動で立ち上がる。
「早く行こ?」
「はいはい」
 翌日はとある講師のカツラ疑惑で大騒ぎとなるだろう。


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大学に通っていたらこんな感じかなって。妄想。

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