このタイトルがすごい
タイトルのインパクトに負けて読んでしまった。
Gとはそう、スリッパを握る手のカバーイラストから想像できる通り、あのGである。
私は虫の類全般が苦手で、特にGには滅法弱い。Gという文字を目にするだけで身構えてしまう。
しかしどういうわけか、Gに対する嫌悪感よりも、このタイトルへの興味のほうが勝ってしまった。
軽くあらすじをご紹介。
ざっくり説明するとこんなお話である。
本書の登場人物、とにかくみんなクセが強すぎる。
その筆頭が、「ミッドサマードリームナイト」に出演する大物歌舞伎役者の市川硼酸次。
この硼酸次、舞台成功のジンクスとして、公演前に特大サイズのGを使ったある儀式を行うことを恒例としている。
説明しておきながら、すでにこの時点でツッコミどころ満載である。
まず「特大サイズのG」とは?想像するのも恐ろしい。
それより市川硼酸次って……絶妙に実在しそうな名前ではなかろうか?(実在するわけない)
そして、さらっとあらすじでご紹介した、副支配人の穀句ローチもなかなかのネーミングだな…。(ヒント:Gは英語で…?)
ほかにも…
蜚蠊郁人、霧吹太治、艶漆彰、クリスタル・ブラウン…
登場人物の名前はGを彷彿とさせるものばかり。
なのでコメディ要素強めの小説なのかと思いきや、どうやらそういうわけでもないらしい。
人々とGとの闘いが、改まった文体で大真面目に描写されているのがより面白さを引き出している。
そしてこのツッコミどころのありすぎる登場人物たち、一人ひとりにスポットが当てられている。
ホテルを取り巻く人々とGとの群像劇、ここに開幕である。
「人々の命運はGが握っているってこと?そんな馬鹿な」と思いながら読んでいたが、とにかくみんなGに振り回される。
Gを追う者、逃がす者…。大の大人たちが血眼になってGに群がる姿は痛快でもある。
そして最後のページでは、締めの一文にドキッとさせられることとなる。
作者の成田さんの、このユーモアセンス。私は好きである。
文中にはたびたびGの描写が出てくるので、苦手な方にはおすすめできないけれど、タイトルにビビッときた方、たまには一風変わった小説に挑戦してみたい方、ぜひ読んでみてはいかがだろう。
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