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息子と台所

バレンタインデー。

去年はジップロックにいれたクッキーを砕く手伝いを息子にしてもらった。

今年。立つことも話すことも少しずつできるようになって、まだまだ赤ちゃんだけど幼児に片足つっこんだ息子と一緒に台所に立ってみようと思った。

台所育児というやつだ。

ずっとずっと憧れだった。自分の子どもと一緒に台所に立つのが私の夢だった。

それはもちろん、私が料理をするのが好きだから、という理由が大きいけれど、子どもの頃の思い出も影響しているように思う。

母親が毎日あれこれ工夫を凝らした料理を作ってくれたり、その料理をどうやって考えたのか聞いたりするのが楽しかった。私が苦手な野菜をこっそり料理に紛れ込ませ、私がすっかり食べたあとに教えられるのも面白かった。

毎年バレンタインデーが近くなると、友チョコ作りを手伝ってもらった。隣に立って、作り方を教えてもらいながら、時々褒めてもらったりダメ出しされたり、うまくできない!やって!と私が駄々をこねて助けてもらったり。勉強とか遊びとかとはまた違う雰囲気。台所に漂う、なんだか特別で居心地のよい感じ。そういうものを自分の子どもにも味わってもらえたらいいな、とずっと思っていた。

1歳の息子にはまだ当然そんな感情なんてないだろうけど、楽しんでくれたらそれでいいや、と思ってバレンタインデーをその機会に使うことに決めた。

まず下準備。小麦粉、バター、卵、牛乳、砂糖(かなり控えめ)など一通り計量して混ぜ、ひとまとまりにする。ラップで包んで冷蔵庫で休ませる。ここまでを息子と夫が遊びに出かけているうちに終えた。

そして息子がお昼寝から起きたあと。休ませていた生地を麺棒で薄く伸ばす。それからオーブンを予熱し、天板にクッキングシートを敷き、型抜きを出す。

そう、息子と初めての料理は型抜きクッキーを選んだ。

クッキーといえばホワイトデーだし、来月作ったほうがいいかな…と思ったけど、チョコはまだまだあげられないし、ホワイトデーはホワイトデーでまた別のものを作ればいいや、と思って台所の奥深くに眠っていた型抜きを探し出してきたのだった。

寝起きでちょっと顔がむくんでいるけど、ご機嫌の息子。コンディションはばっちり。

踏み台を使って台所に立たせると、見たことのない風景に「おぉ~」と興奮している様子。最初から反応があって嬉しい。

ゆっくり、息子に伝わるように簡単な言葉で説明しながら型抜きをやってみせる。なんとなく息子も理解した様子で、自ら型抜きに手を伸ばした。選んだ型抜きはジンジャーブレッド用に購入していた人型のもの。

どうするのかな、と待っていたら、私がすでに型を抜いたところに型抜きをぽんと置いた。そうか、どこに置けばいいかよく分からないんだ。ここに置いてごらんと、指差して教えると型抜きを置きなおす。しかし「生地に押しつける」という動作はまだ難しかったようで、一緒に手を添えた。その後、息子は私がやって見せた通り、くりぬいたクッキーを上手につまんで天板の上に置いた。すごい!賢い!天才!!!!!褒めると息子も嬉しそうな表情を浮かべてくれた。

それからたくさんクッキーを作った。途中で息子はすっかり飽きて、型抜きを流しに放り投げたり、蛇口で水を出しまくったり、型抜きしたクッキーを指でつんつんしたりと遊びモードになっていたけど、1時間弱くらいは台所に立っていたと思う。私にとってはあっという間の素敵な時間だった。

それからオーブンで焼いて、できあがったクッキーをおやつに出した。息子はなんだか不思議そうな顔をしていた。自分がさっき作ったものだとはまだ分からないのかもしれない。そっとクッキーに手を伸ばして、口に運ぶ。おいしいと分かると次々食べて完食。最後に牛乳をごくごく飲んで、満足そうにしていた。

これからも台所でおいしくて楽しい時間をたくさん過ごしていきたい。


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