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「キャリア自律を支援する」あれ?日本語がおかしい?それでも必要な理由

こんにちは、iCARE 金原(きんぱら)です。
以前に「自律」について記事を書いたのですが、今回は「キャリア自律」ともう少し範囲を限定して考えてみました。
ちなみに見出しの画像はAIに生成してもらった「キャリア 自律 振り返り」からイメージされるものだそうです。キーワードが少なかったのか、よくわからない抽象的な画像になってしまいました。

今回の執筆に当たり、あらためて調べてみたところ、「自律/自立」について介護の観点から論じていた厚生労働省の部会資料があり、それによると以下のような整理がされていました。

  • 自立支援:身体、移動、コミュニケーション、家事などを支援する事

  • 自律支援:行政手続き、金銭管理、就労などを長期的に支援する事

「支援を受けた自律」という課題

岡部耕典「当事者支援・権利擁護の点からみる地域生活支援」:季刊介護労働 127 号(2010.6)より抜粋

これによると、「自立支援=一次的な状況のための支援」と「自律支援=長期的な視点を持って行う支援」というふうに理解できると思います(前回の記事の解釈とも合致していそう)。つまり、まず必要な支援が自立のための支援、その先に進もうとするための支援が自律支援、ということです。
この理解から「キャリア支援」は直接目の前の事に対する支援ではなく、先を見越した支援であるといえます。

さて、本題です。今回は「企業が従業員に対して行うキャリア自律の支援」にフォーカスをしたいと思います。

なぜ企業が従業員のキャリア支援を行う必要があるのか?

2つ理由がありますので順番に説明をしていきます。

1.法律によりやらなければならないとされているから

はい、法律に規定されているから、です。今まで知らなかった方は初めて知ったと思います(進次郎構文)。
平成 28 年 4 月 1 日施行 改正職業能力開発促進法に、以下の通り規定されています。

労働者は、職業生活設計を行い、その職業生活設計に即して自発的な職業能力の開発及び向上に努めるものとする。

昭和四十四年法律第六十四号 職業能力開発促進法 第三条の三

事業主は、その雇用する労働者に対し、必要な職業訓練を行うとともに、その労働者が自ら職業に関する教育訓練又は職業能力検定を受ける機会を確保するために必要な援助その他その労働者が職業生活設計に即して自発的な職業能力の開発及び向上を図ることを容易にするために必要な援助を行うこと等によりその労働者に係る職業能力の開発及び向上の促進に努めなければならない。

昭和四十四年法律第六十四号 職業能力開発促進法 第四条

そう、実は法律によって職業能力の開発及び向上はしなければないものだったのです(努めなければならない、すなわち努力義務ではありますが)。

2.せっかくやるならば社外より社内がよい

ただし、この職業能力開発推進法の文面を読むと、「機会の確保」や「必要な援助」とされており、必ずしも直接企業が何かをする必要はなさそうです。でも企業がやるべき理由があります。

職業訓練及びキャリアコンサルティングの 統計的手法による効果検証

これは、キャリアに関する専門家に相談経験がある方を、企業内(左)と企業外(右)で比較をしたものになります。企業内(左)を見ると、「0回」が49.2%と約半数になっていることがわかります。これは「企業内キャリアコンサルティングの機能の1つとして転職を引き止め、人材を企業内でうま
く調整し、活用することを側面的に支援する効果」
(上記効果検証から文章ママ引用)であるといえます。
これはよく考えてみるとそのとおりだと思えます。

例えば、
漠然と将来のキャリアに不安を抱えている人が居て、企業外で相談をしようとします。インターネット検索で相談先を探したとしましょう、その際の検索ワードは「仕事 相談」だったりすると思います。そうすると検索結果には公的、民間のキャリア相談窓口にまざって、同じぐらいの数の人材紹介系サービスサイトが出てきます。人材紹介系サービスに相談すれば、当たり前に転職を前提とした相談になりますし、公的な窓口であっても一般論として職業理解をしていくなかで企業外で働く選択肢を検討する方に進む確率が高まる
というのは納得度があるように思えます。

つまり、「自社の従業員が企業外でキャリアの相談をすることは、近い将来その従業員が離職するリスク要因になる」だといえます。
企業内で相談をした場合、企業としてはその従業員が自社のためにどう活躍できるかを考え、機会を提供することになるでしょう。なぜなら、離職はその従業員1名分の労働力を損失するだけでなく、補填するための採用コストと教育コストを支払うことになるためです。ただでさえ労働生産人口は減り、新卒・キャリア採用ともに圧倒的な売り手市場であるため尚更です。

これは従業側の自律という観点からも「漠然とした不安から自分のキャリアを考えていたら(本当に活躍できる場所が実は自社の隣の部署にあるかもしれないのに)いつのまにか転職していた」ではこれまでの大切な経験や環境を棒に振ってしまうかもしれません。そうではなく「自己理解を深め、それに適した働き方を考え決定し行動する」を実現するのに最も適した環境は今所属している企業なのではないでしょうか、少なくともこれまでの経験を一番理解してくれるのはこれまで働いた経験がある自社であるはずです。

ではどうやればいいのか?

キャリア自律の支援を企業が行うべきである、という仮説は確からしさを持って理解できました。では何をすればいいのか?
「セルフ・キャリアドック」という仕組みがあります。

セルフ・キャリアドックの定義 
セルフ・キャリアドックとは、企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティン グ面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主 体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組み、また、そのための企業内の「仕組み」のことです。


「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開

セルフ・キャリアドックはすでに厚生労働省により体系化されたプロセスがある仕組みです(下図)。経営者のコミットメント、継続的改善を求める点は健康経営と同じで、「漠然としたキャリア不安があるが何をしたらいいかわからない」という業務起因性のないプレゼンティーイズムの要因となる従業員の課題(=キャリア不安)を継続的に解決するための仕組みだと金原は理解しています。

「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開
労働政策研究報告書No.171  労働政策研究・研修機構(JILPT)

従業員は、組織の論理(利益優先、計画性、合理性など)を自分の価値観として取り込むことによって組織に適応した考え方や行動をとることが可能となります。
しかし、そのことは組織に従属することでもあり、自分らしさを抑圧してしまうことにもなるため、より本質的な自分らしい価値観(個人の論理)を呼び覚まし、組織の論理に反しない範囲で個人の論理に沿った仕事の仕方を検討する必要が出てきます。本質的な自分らしい価値観は、抽象的であるからこそ企業の論理との折り合いをつけることができるようになります。

つまり、自己理解を支援すること(キャリア自律支援)が個人と組織(仕事)との融合を図る機能的役割を持つといえます。

このセルフ・キャリアドックは、キャリアの専門家がやることでより効果を発揮するといわれています。企業内にキャリアコンサルタントを配置するか、実施自体を外部委託するか(金原も実施支援いたします)、どちらの方法でも構わないと思っていますが、より多くの企業でキャリア自律支援が行われ、働くひとの健康が創られる世界を実現したいと考えています。

そんな金原はiCAREで働いておりますが、CS、セールス、エンジニア、色々募集中ですので定期チェックをお願いします。

そろそろラーメンが美味しい季節になりますね、いいラーメンに出会ったら、それも記事にしたいと思います。

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