けものみち
森をゆく 茂る葉落ちて雪も消え 現れ出でる獣らの道
もりをゆく しげるはおちてゆきもきえ
あらわれいでる けものらのみち
トレイルと呼ばれる散歩道が、街の至る所に整備されています。
砂利やウッドチップが敷かれた道は、木々の重なりによって街並みから切り離され、街中に居ながらにして、自然の中を歩く解放感を味わえます。生活道としても使える(時にはかなりの近道になる)メインのトレイルがあり、そこから横道にそれて、大小の森に枝のように伸びていきます。
中には、湖をぐるりと囲むもの、海沿いに歩くもの、海の上を、向こう岸まで通したものまで。
近所の森を巡るトレイルは入り組んでいて、気分で分かれ道を選ぶのですが、春先に歩いたある日、だしぬけに、見慣れない脇道が現われました。とても細く、それでも確かに道になっていて、先のほうはモミの木に隠れています。ルートを外れて冒険するのは何となく気恥ずかしい気もして、後ろを振り返るも人影はなく、
——えい、行ってしまえ。
一歩踏み出すと、あとはわくわくする気持ちだけが私の手を引きました。時折ぴょんと差し込む小枝をよけながら進むと、常緑樹の束を回り込んだところに、小さな池がありました。
それは、水場に至る獣道。夏には緑の葉に隠されて、秋には落ち葉に埋められて、冬にはその上に雪が積もり、雪解けの今だけ露わになった、四つ足の隣人たちの道。
私は、ふつふつと湧く満足感を胸に、元の道に戻りました。
昼と夜に住み分けるようにされた、人と獣たちの道。
彼らの世界を垣間見た、喜び。
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