喜ノ歌

カナダの端で、日本の半日あとを生きています。クリスチャン|言葉だからこそ表せるもの、言葉でなければ伝わらないものを、言葉にのせて

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カナダの端で、日本の半日あとを生きています。クリスチャン|言葉だからこそ表せるもの、言葉でなければ伝わらないものを、言葉にのせて

最近の記事

鴎が泳ぐ - かもめがおよぐ

霧の朝潮を溶かした白の底 汽笛に仰げば鴎が泳ぐ きりのあさ しおをとかしたしろのそこ きてきにあおげば かもめがおよぐ  霧の朝を深く、呼吸する。  ひんやりとした細かな粒が、胸の奥まで沁みていく。  ふと後味のように、潮の香りがした。 「海?あぁ、遠くはないけど、歩いては行けないな。明日、行こうか。ドライブがてら、この辺りをぐるっと見せるよ」  友人の言葉を思い出した。昨晩は学生時代ぶりに語り明かすつもりが、彼は奥さんに呆れられながら早々に酔いつぶれてしまった。下戸の

    • 贈り空 - 空写真捜索隊

      遠い空きみの見た空掌に受けてこころに灯るその一番星 七田苗子さんの集い「空写真捜索隊」に寄せて 安部さんへの、贈り空です。 星が撮れたら、また報告しますね! #空写真捜索隊

      • #onigiriaction ラストスパート (2024/11/16まで)

        手で包みかたちをむすぶ麦よりも私に馴染むいのちの粒で パンもパスタも好きですが、やっぱりお米。 potesakulaさんのno+eで教えてもらった、「おにぎりアクション」、ぜひご参加ください。募集期間、あと3日!です。 おにぎりの写真を投稿すると、協賛企業から写真1枚につき100円が寄付され、5食分の給食がアフリカ・アジアの子どもたちに届けられます。 私は、公式サイトから投稿しています。ひとり何度でもOK。 あと数日ですが、手元に「ごはん」があれば、ぜひ! 塩むすびで

        • 蜻蛉の翅 せいれいのはね

          紅葉から生まれし子らは蜻蛉の翅を授かり爽籟に発つ 紅葉から暖簾をくぐり颯爽と赤蜻蛉は仕立ての袴を穿いて 一首目、そのまま意味を取れるかたは相当の手練れとお見受けします。笑 この秋、ふと拾ったカエデの種の造りに目を奪われました。 種からひとつながりに伸び、先へゆくほど薄くひろがる部分は虫の翅にそっくりで、翅脈のような筋さえ浮いていました。 この翅で秋風にのって旅立つのだな、と秋風について調べてみると、「爽籟」という言葉に出合いました。爽やかな、笛(籟)の音に重ねて、秋の風が

          幕間のような

          秋と本 幕間のような短編を読むたび熟すあたらしい種 あきとほん まくあいのようなたんぺんを よむたび じゅくす あたらしいたね 小牧幸助さんの企画に参加しています。 「と」シリーズは、結びつきの強いものほど難しい気がするのはなぜなんだろう。 #シロクマ文芸部

          幕間のような

          紙包み - ある印刷所の夜 -

            きゅ、しゅる、とん   きゅ、しゅる、とん   がらんとした作業場に生まれては、壁に行きつく前に消えていく、微かな音の連なり。単調な繰り返しであるはずのそれはどこか楽し気で、明らかに喜びをのせた少年の鼻歌に寄り添い、インキと揮発油の匂いのこもる中に静かに響いていた。   ランプの灯りがちろちろと揺れ、慣れた手つきで活字を拭っては盆に置いていく少年を照らしている。その影は暗がりに浮かぶ印刷機に届き、突き出た木製の把手をゆらゆらと撫でていた。   私はたぶん、首の痛みで目を

          紙包み - ある印刷所の夜 -

          湧水こんこ

          爽やかな湧水こんこ八重の羊歯かき分け見れば中に我居り スニーカーの薄いソールを、尖った小石が押し返す。 踏み固められた土の山道は私の歩幅より広い段々に刻まれ、数多の靴底で磨かれた丸太が、一段一段を留めていた。 その丸太に足をかけるか、かけないかをちらりとでも考えていた頃は過ぎ、今は少し息も上がって、ただ楽な幅で、惰性のように歩を進めている。 こめかみにじわりと汗を感じた数歩あとには、雫がぽろ、と頬から落ちた。 裏山に登るのは実家を離れてから初めてのことだった。5年ぶりだろ

          湧水こんこ

          夕焼け敷いて(短歌3首)

          木の実と葉すべて落として清々と立つ木々のみち夕焼け敷いて 木の実と葉拾いて笑みしこの身とは吾が好みとはと問うこともなし 木の実と葉まるみ覆いし肌布団子に掛けし夜 芽生え祈りつ 2首目は「このみとは」でできる3つの言葉を組み合わせて遊んでみました。秋の森を歩くと、当然のように木の実や色づいた葉を拾って楽しむこの「私」という人と、もう数十年の付き合いで。いまさら、何が好みかなどと考えるまでもないよね、という意味のつもりです。 小牧幸助さんの企画に参加しています。 小牧さん

          夕焼け敷いて(短歌3首)

          うそつきんいろ

          金色にならない「きんいろ」色えんぴつ 絵を返してよ、うそつきんいろ。 「あれ?」 まことくんの、あれ?は、なんでも気がつく。 「ふみちゃんの、この王子さまのかんむり、茶色いね?」 なんでも気がつくから、わたしがしょんぼりしているのにも気がついた。 いつも、ぴしっ、としているまゆ毛が「八」の形になる。 「ごめん......いやだった?」 わたしはすぐに返事ができなくて、首をふった。ほっぺにかみの毛がぱしぱし当たった。いやだ、というより、かなしいんだ。くやしいんだ。うらんでるん

          うそつきんいろ

          夕焼けの焼け残り(短歌)

          夕焼けはまだ半刻は先なれば傾ける陽も熱を帯びたり 夕焼けは陽のまばゆさに白く飛び 飛び交う羽虫はひかりとなりぬ 夕焼けは枝葉の間に染みわたる葉擦れさろさろ降らす絵硝子 夕焼けは焼け残りたり青あおと 焼かるることに焦がれながらも 日が傾き始めたころから日暮れまで、公園で過ごしながら歌を詠んでみました。外で写生なんて、高校以来でしょうか。絵ではないけれど。 白飛び、は写真用語なのかな?白く飛び、として良かったのかどうか。 絵硝子は、ステンドグラスの昔の言い方だそうです。

          夕焼けの焼け残り(短歌)

          磨硝子を透かして(短歌)

          風の色が ふ、と たましいにいろを差す 気づかれぬまま それがはじまり 風の色で つ、と 私のなみだがおちる こころふるわす 天への歌声 風の色に は、と 見上げた街路樹の 葉のうつくしさ 姿も造りも 風の色を じ、と 見つめて自問する 「創った方」が居るのでなければ 風の色の く、と 焦点むすぶ先 神のことばが書かれた聖書 風の色よ う、と 心が抗います 知るべきならば教えてください 風の色か さ、と ひと筆描くように 摩硝子 濡らし透かしたように 風の色も 

          磨硝子を透かして(短歌)

          黄からひかりへ(短歌4首)

          月の色は黄からひかりへ移りけり たかくちいさくとおくなるころ 月の色ぽたりと落つる 葉の上の菱に蹲う蛙の背中 月の色ぽろぽろ落ちて囚われり 蜘蛛の網目にならぶ露珠 月の色  守宮の影が窓渡る ぎんいろの宙をひたひたとゆく 月の「色」から「ひかり」に変わるころ、それは ともに地を歩んでいた人を、天に送ったときに似ていました。 青蛙がぴたりと体を固めているのって、菱形ですよね。 #シロクマ文芸部 小牧幸助さんの企画に参加しています。 生活が慌ただしくなった中、お題をみ

          黄からひかりへ(短歌4首)

          懐かし、

          「懐かしい」口にせしとき寄せ来ては胸突くそれはかなしみに似て 「懐かし、」 「い」はふるえ形なさぬまま熱き流れに溶けて光れり 「懐かしい」懐深くそれはある 私とともに明日をも生きる 「懐かしい」と きょうを天で思う日は喜びのみがみちてあふれて 小牧幸助さんの企画に参加しています。 懐かしいあの、今の私はそぐわないけれど、今の私を造ってくれたあの景色、あの場面を、ぽろ、ぽろと思い巡らしました。感謝。 #シロクマ文芸部

          懐かし、

          はんぶんの種

          檸檬からしらじら明ける露の朝 ぼうと滲む陽あつめたひかり 檸檬から跳ねた光かその香か眩し記憶を胸に喚ぶのは 檸檬から零れないようそっと切る 甘み連れ来る酸苦もつ水 檸檬から零る水より粒よりも涙に近いはんぶんの種 檸檬からほろり外れて種は言う あなたは実る、捨てず育てよ 檸檬からもこころ様々ふるわせて私をひかれる貴方の右手                           小牧幸助さんの企画に参加しています。 レモンというくだものに、これほど目を向けたのは初めて

          はんぶんの種

          星に焼かれて

          流れ星ストロボのごと目を焼きて心に焼きしそこにいた我 鼻、耳、爪、唇の先 寒が取り 星は取りたり内のすべてを 薄雲のうらで爆ぜたるひかりあり風なき花火のかすむさやけさ 受験を控えた冬の夜、目の当たりにした流星群は 写真館にひらくストロボの白い光が爆ぜるようで 藍鉄の空に薄雲が散り流れていくその向こうから 切れ間に爆ぜる星は目を射てその残像が残るほど 雲ごしの光もなお眩しく灰白の輪郭を浮き立たせ 風なく煙まみれの花火を思い起こさせた、けれど 次々と爆ぜては散る光は、はるか

          星に焼かれて

          満ちた顔して

          今朝の月靄のしとねに身を預く務め終えたる満ちた顔して けさのつきもやのしとねにみをあずく つとめおえたるみちたかおして --- 「ねぇ、そろそろ行くね」 「んぁ、悪い。もう寝るわ」 「うん、お疲れ。おやすみなさい」 「おやすみー」 スマホの枠にはまった、彼の寝落ちした顔をもうしばらく見ていたかったのだけれど、出勤時間10分前を告げるアラームに急かされて、私はしぶしぶ声をかけた。 夜勤明けの彼は、いつも仕事前に電話をくれる。 高台から駅へと向かう道はゆるやかな下り坂で、

          満ちた顔して