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#1 北海道の人口減少と札幌一極集中

はじめに


『J NOTE』の初回は、「北海道の人口」と「札幌一極集中」について取り上げていきたいと思います。

なぜ初回で北海道を取り上げるかというと、北海道が今人口が最も減少している都道府県の一つだからです。

北海道では2020年から2021年の1年間で、およそ4.2万人人口が減少しています。この減少数は全国で最も大きく、北海道史上でも過去に類を見ない減少数となりました。北海道では今後も加速度的に人口が減り続けるものと思われます。

また、日本全国で深刻となっている「農村部の過疎化」や「地方都市の空洞化」といった問題について、北海道では他の都府県に比べて約10年さきどっていると私は考えています。

この「10年」というのはあくまで私の感覚に過ぎませんが、それほど北海道は他の都府県に比べて特に人口減少が進み、人口減少による社会問題が深刻化している都道府県であるといえます。

そして、近い将来全国で現在の北海道と同じようなスピードで過疎化が進むことになると予想されます。つまり、北海道や札幌市のイマを知ることで、日本の過疎化がこれからどれほど深刻な状態になるかを知ることができるのではないかと思います。

今回は私の専門分野である観光については特に扱わず、主に北海道の人口の動きについて見ていきたいと思います。

札幌一極集中

「札幌一極集中」とはその名の通り、人口や雇用、あらゆるサービスが札幌都市圏に集中することです。札幌市は今でこそ人口約196万人の大都市ですが、終戦直後の1950年時点においてはわずか31.3万人(道内人口の7.3%)ほどの都市でした。

しかし、鉱業の衰退や進学・就職などによって、道内の他地域から札幌都市圏への人口流入が激しくなります。

その結果、2022年1月時点で道民のおよそ37.8%が札幌市内に居住し、近隣の北広島市や江別市、千歳市などを含めた約250万人規模の札幌都市圏が形成されました。

下部の図1は、1970年から現在までの札幌市の人口推移を示したものです。(タッチすると画像を拡大できます)

青色の折れ線グラフをみると、2020年まで一貫して札幌市の人口が増加していることがわかります。また、橙色の棒グラフをみると、北海道の人口に占める札幌市の割合が年々大きくなっており、札幌市が道内の人口を集め続けていることがわかります。

(図1)札幌市の人口推移と北海道の人口に占める割合(1970年~)
記事末の「参考データ 図1」で示している参考データをもとに、筆者が作成したもの。
※1975年~2020年は国勢調査人口、2022年1月は住民基本台帳人口。


しかし2021年、札幌市の人口は史上初めて減少に転じます。人口が減少に転じた理由として、市内で亡くなった人数が生まれた子供の人数を大きく上回ったこと(自然減)が主な要因として考えられています。

また、道内から札幌市へ流入する人数(社会増)は9384人と10年ぶりに1万人を下回っており、札幌市の人口流入がやや鈍化したことによって、札幌市の人口減少に繋がったのではないかと考えられます。

今後札幌市へ流入していた人口が減り続けると、札幌市から首都圏へ転出する人口がそれらを上回る状態(社会減)になる可能性も否定できません。そのため、札幌市の人口減少問題は将来的により深刻なものになると考えられます。

道内主要都市の衰退

次に札幌市以外の道内の主要都市について見ていきます。札幌市以外の主要都市では、2022年現在ほぼ全ての市で人口が減少傾向となっています。

下部の図2は、1975年時点において道内で人口上位だった都市(札幌市を除く)のその後の人口推移を示したものです。図を見ると、函館市、釧路市、小樽市、室蘭市などでは、1990年以前からすでに人口が減少し始めていることが分かります。


(図2)道内主要都市の人口推移(1975年~)

記事末の「参考データ 図2」で示している参考データをもとに、筆者が作成したもの。
※1975年~2020年は国勢調査人口、2022年3月は住民基本台帳人口。

特に函館市ではピークだった1980年の国勢調査時から現在に至るまで、10万人弱も人口が減少しています。函館市は観光業が盛んな地域ではあるものの、他都市のように基幹産業がないことが影響していると思われます。

函館市のように人口30万人前後の都市において、40年で人口が約3割も減少している市は全国的にもまだ珍しく、それだけ函館市の過疎が他都市に比べて早期進行しているといえます。(函館市以外では広島県呉市や山口県下関市が該当します)

対して、帯広市と苫小牧市は他都市と対称的に基幹産業が好調であったため、2010年代まで緩やかに人口増加を続けてました。しかし、経済的にも豊かだったこれらの都市においても、札幌や東京への人口流出に歯止めがかからないようになり、2022年現在は減少傾向に転じています。

このように、道内の主要都市では人口減少が札幌市よりも深刻化しているといえます。しかしながら、主要都市以外の農村地域では都市部とは比較にならないスピードで過疎化が進んでいるものといえます。

おわりに

このように北海道では人口減少が全国的に見ても深刻なものとなっており、今後も年間5万人超のペースで人が居なくなっていくと考えられます。

そして、他都府県においても今後北海道と同じようなスピードで過疎化が進むと思われます。今後も日本国内を持続可能な状態にするためには、一刻も早く東京に集まった都市機能を地方に分散させなければいけませんが、首都機能移転には莫大な費用がかかるため、有効な解決方法はないと言わざるを得ません。

そのため、帯広市や苫小牧市のように地場産業を強化することによって、なんとか人口減少のスピードを抑えるのが現実的な地方創生政策なのではないかと私は考えます。

次回の「J NOTE」では、小樽市について観光や産業、人口減少の面から詳しく見ていこうと思います。

参考データ

(図1)札幌市の人口推移と北海道の人口に占める割合


北海道総合政策部計画局統計課「過去の国勢調査結果」 CC-BY4.0 Hokkaido
北海道総合政策部計画局統計課「住民基本台帳人口|令和4年

(図2)道内主要都市の人口推移

北海道総合政策部計画局統計課「過去の国勢調査結果」 CC-BY4.0 Hokkaido
旭川市「旭川市の世帯・人口」
函館市「函館市の人口・世帯数の推移」
釧路市「住民基本台帳 世帯数・人口の推移
帯広市「帯広市の人口・世帯数
小樽市「小樽市の人口(令和4年)
室蘭市「毎月の人口の動き|令和3年度住民基本台帳登録状況
苫小牧市「住民基本台帳人口世帯数及び人口動態
北見市「北見市最新人口統計|人口ピラミッド(令和3年1月31日~)
江別市「令和4年毎月の人口|R4.3.1現在 地区別年齢別男女別人口

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