話してもいいんだ。
私の不安
術後7日目、抜糸の日です。前日の夜に「不安を感じている。」と看護師さんへ伝えられたものの、落ち着かない気持ちで過ごしていました。
朝ご飯を食べ終えてしばらく経ったころ、日勤の看護師さんが来ました。体温や血圧を測った後に、「『仕事できるか不安。』って昨日の夜勤担当が聞いたみたいだけど、具体的にどんなことが不安なの?」と聞いてくれました。ここで初めて、今抱えている不安について看護師さんに詳しく話しました。仕事を始めるだけでも不安なのに、万全の状態で働けないのがもっと不安。退院したときの体調について分からなくて不安。そして、気持ちが追いついていないことを家族には言えない、現状が家族に伝わらない気がして不安。溜め込んでいた気持ちを吐き出しているうちに、涙まで出てきました。このとき初めて、看護師さんの前で泣きました。
家族だから
仕事のことに関しては口出ししないで、と家族には言っていました。心配なのは分かるけれど、私自身のことであって両親のことではありません。私なりに考えていることがあるし、病気になったのは私。私のことは私にしか分かりません。「もう子どもじゃないんだから。」と思ってつい強い口調になってしまうので、仕事の話は避けるようになっていました。でも、休職する場合は家族に面倒を見てもらうことになる。入院している時点で私はまだ学生、休職中にお給料がもらえるのかもこのときは分かっていませんでした。経済的に自立していない私が生活の心配をせず暮らすためには、家族のサポートが必要です。できれば自分で全部決めたいけれどそういうわけにもいかない。理想と現実に挟まれて苦しんでいました。もしかしたら、AYA世代特有の悩みなのかもしれません。
それに、これまで家族に「しんどい」と言ったことがあまりありませんでした。伝えるときは、事後報告。「そういえば前こんなことがあって、しんどかったんだよね。」といった感じです。家族だから何となく言いたくない。家族だから心配をかけたくない。だから病気が分かってからも、家族の前ではほとんど弱音を吐きませんでした。気持ちが追いついていないことが家族に伝わらないのは、私が原因の部分もあると分かっています。それでも、言えませんでした。
伝えたことで起こった変化
かすれた小さな声しか出ないうえに泣いているので、聞き取りづらかったと思います。そんな私の話を、看護師さんはゆっくり聴いてくれました。ベッドに座っている私に合わせてしゃがみ、目線を合わせ、「うん、うん。」と頷きながら。私も医療従事者の卵として、看護師さんがどれだけ忙しいのかは知っています。これまで不安について話さなかったのは、「忙しいのに時間を取らせるのは申し訳ない。」と考えていたからでした。ですが時間がないなかでもじっくり話を聴いてもらえたという事実が、私の心を癒してくれました。話してもいいんだ、と思えるようになりました。
話し終えると、私の不安に看護師さんが答えてくれました。今の経過から考えると、体力は4月までに戻ると思う。手術は無事に終わったし先生も「経過は順調。」と言っているから、身体は大丈夫。身体のことより気持ちが心配なんだね。気持ちについて聴く専門の看護師さんがいるから、その人に話を聴いてもらうことができるけれど、どうする?
まずは私の話を聴いたうえで、私の経過をふまえた看護師さんの考えや今病院でできることを教えてくれました。「まずは患者さんの話を聴きましょう。」と習いましたが本当にその通りで、最後まできちんと話を聴いてもらえたことが私にとって大きな意味を持ちました。ここで色々な不安について看護師さんに伝えられて、本当に良かったと思っています。
言葉にできたことで少し気持ちが楽になったものの、すっきりした、不安がなくなったと感じることはできませんでした。1番の心配である就職のことや、家族への伝え方については解決していないからです。退院予定日は月曜日で、この日は木曜日。病院が通常通り動いている平日は退院まで今日を含めて2日なので、急ぐ必要がありました。看護師さんが提案してくれたように、気持ちについて聴いてくれる専門の看護師さんに来てもらうことにしました。
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▽ まとめ
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