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分かってもらえた。



 術後8日目。入院中最も気持ちがしんどかったのはこの日でした。次の記事くらいまで、明るくない話が続きますがご容赦ください。

気持ちが沈んだまま

 朝起きてすぐにバイタルサインを測ってくれたのは、お兄さんナースでした。まだ太陽が顔を出し切っていない時間帯。「昨日しんどかったって聞いたけど、どう?」と尋ねてくれました。一晩眠ったら少し気持ちが楽になった気がして、「昨日よりは少し元気。」と答えました。少し話した後、「心までしんどくなったら大変だから、僕は休んだらいいと思うよ。」と伝えてくれました。忙しい時間帯なのに、彼の言葉で彼の考えを伝えてくれたのが嬉しかったです。
 よく眠れなかったからか、いつの間にかウトウトしていたようです。朝ごはんが届いた音で目が覚めました。何とか朝ご飯を食べて、顔を洗って、歯磨きをして。元気になったと思っていたけれど、退院のことを考えると気持ちが落ち込みました。記録を兼ねて毎食写真を撮っていたのですが、見返してみるとこの日の朝ごはんの写真はありませんでした。写真を撮る気になれないくらい気持ちが沈んでいたみたいです。

話すために来てくれた受け持ちさん

 朝ごはんを食べ終えたらベッドからソファーに移動させていたぬいぐるみ。この日は心細くて、ベッドの上に置いたままでした。ぼーっとしているのもつらいので本を読んでいるうちに、日勤さんが来る時間になっていました。この日の担当は、入院期間を通して私を受け持ってくれる看護師さん。部屋に入ってきましたが、ノートパソコンが載ったワゴンを持っていないことに気づきました。検温に来たのかと思ったけれど違うみたいです。彼女は、ベッドサイドにある椅子を私の顔を見ながら話せる位置まで移動させて座りました。ここでようやく分かりました。看護師さんは私と話すために来たのです。
 受け持ちさんが担当になるのは4日ぶり。少し会っていない間に、私に何が起きていたのかカルテを見て知ったのでしょう。カルテだけではなく、他の看護師さんからの申し送りもあったのかもしれません。経過は順調なのに退院を前にして不安定になっている。一見何の問題もなさそうだった受け持ち患者の様子が変わった。きっと彼女は、私の気持ちが揺れていることを知って病室に来てくれたのでした。彼女が椅子に座ったことが、「私と話しに来た」という証拠でした。
 この日までに担当してもらった回数は2回。でも、受け持ち看護師さんのことを私はとても信頼していました。手術室に向かうとき、その日は担当ではなかったのにお見送りに来てくれた。穏やかで話しやすい。説明が丁寧。そしてこれは私が個人的に感じたことですが、彼女はおそらく、受け持っている患者さんのことをとても大切にできる看護師さん。漠然とした表現ですが、これ以外の言葉が今の私には思い浮かびません。本当に小さなことの積み重ねが大きな信頼へとつながっていました。

私だけのつらさ

 話し始めてすぐに、また涙が出てきました。今、不安に感じていること。困っていること。「何で私が。」、「どうして今。」とつい考えてしまってつらいこと。受け持ちさんは、ゆっくり話を聴いてくれました。
 涙も言いたいことも出し切ると、少し落ち着きました。受け持ちさんは、私自身もうまく言葉にできなかったことを言語化してくれました。見た目がすごく変わったわけじゃないし一見元気そうだけど、体力も精神力も擦り減っていること。そして、私のつらさは私にしか分からないこと。この言葉をかけてもらったとき「分かってもらえた。きちんと伝えてよかった。」と感じました。分かってもらえたのが嬉しくて、ほっとして。また涙が出ました。
 受け持ちさんが「一度、精神腫瘍科の先生に来てもらう?」と提案してくれたので、お言葉に甘えることにしました。退院が決まってから泣いてばかり。普段からよく泣くとはいえ、さすがに泣きすぎだと感じていました。自分の気持ちがコントロールできないことに疲れていました。


▽ 続き

▽ まとめ


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