「実は私のおばあちゃん認知症なんだよね。」人生を変えた言葉の話
人生が大きく変わる言葉に出会ったことがあるか。そう聞かれたら、きっと私はこの言葉をあげるだろう。
「実は私のおばあちゃん認知症なんだよね。」
みんな、それぞれの、家族。
私は経営学部で、大学2年の春から商品企画のゼミに所属している。
ずっと憧れていたゼミだった。
そのゼミでは毎年3年生が、「Sカレ」という商品企画の大会に出場することが決まっていた。
同期の中で3人チームを作り、参加テーマを選ぶ。
私たちが選んだのは、大阪にある印刷会社 株式会社明成孝橋美術が出した「社会課題を解決する印刷製品」というテーマだった。
社会課題って?
印刷製品って?
アイデアを考えても考えても、3人が納得できるものは生まれなかった。
3ヶ月ほど月日が経ったある時、突然それぞれの家族の話になった。
私は過去のnoteにも書いている通り、実家暮らしで、両親と妹と犬が大好きで、おじいちゃんおばあちゃんが大好きだ。おじいちゃんおばあちゃんとは一緒に住んでいないけど、会えた時の喜びは大きいし、時々ラインで話したりもしていた。…そんな話をした。
3人チームの1人、Aは一人暮らし。実家は北海道で、なかなか家族と会うことは難しいと話した。父のことを誇らしく話す姿が、印象的だったのを覚えている。
そしてもう1人のMは二世帯で実家暮らし。おばあちゃんと一緒に住んでいる、と話した。そしてその話の最後に、「実は私のおばあちゃん認知症なんだよね。私のこと忘れちゃったらどうしよう悲しいな、って時々思うんだ。」そう付け加えた。
知らなかった。高校から6年目の付き合いだったのに。
知らなかった。私が向き合ってこなかった話だった。
自分がいかに認知症について他人事に思っていたか、その時初めて知った。
責任と運命
The only true wisdom is in knowing you know nothing.
唯一の真の英知とは、自分が無知であることを知ることにある。
ソクラテスの言葉である。
自分が知らないことに気付いた時に始まるんだ、その時不意にこの言葉を思い出した。
私もAも、Mの話を深く聞くことはなかった。
でも、その瞬間私の中で何か覚悟が決まった気がした。
この話を聞いた以上、
「認知症」について知ること
そして少し前の私のように「認知症」について他人事に思っている人に、知ろうと思うきっかけを与えること
これが私の責任であり課された運命だと思った。
大袈裟だと思うかもしれないが、その瞬間自分の人生が新しい方向へ動き出す気がした。
私がそんな覚悟を思っている中、Aも同じように何かを考えていた。
実際は何を考えていたかはわからない。
でも、その顔が、目付きが、同じ気持ちであることを物語っている気がした。
そこから3人の矢印が、同じ方向に向かい始めた。
「まずは、知ることから始めよう。」
私たちは、まず高齢者施設に訪問することにした。
都内の老人ホーム、グループホームを片っ端から調べ、電話をかけた。
多くの施設が快く訪問を承諾してくれた。
衝撃の嵐
訪問したのは、2019年の秋から冬にかけて。
1日3件の施設を訪問することもあった。
今まで入ったことのない、特別な空間だった。
ホテルみたいな有料老人ホーム
今日のメニューは何かしら、笑顔が集まる食堂
テレビを見て団欒するおばあちゃん達
90歳を過ぎても元気なおじいちゃんの昔話
同じ大学のずーっと先輩もいた。
大学生の姿は物珍しいらしく、話しかけてくれたり、笑顔で手を振ってくれたり、嬉しいこと・新しい発見がたくさんあった。
しかしその分、衝撃的なこともあった。
トイレの介助やお風呂の介助に苦労するスタッフさんの姿
徘徊するおばあちゃん
誤って転落しないように固定された窓
一点を見つめ、寂しそうな表情のおじいちゃん
そっちは行かないほうがいいよ、と言われたドアの向こう。
知ることが嬉しいこともあれば、辛いこともあると知った。
また自分が無知であると知った瞬間だった。
笑っている姿を見るのは嬉しい、そんな当たり前のこと。
施設への訪問や専門家の方に話を聞く中で、だんだん私たちのアイデアが形になっていった。
そして第一号試作品である「懐話(かいわ)ふだ」が完成した。
懐話ふだとは・・・
思い出話を楽しみながら、手軽に”回想法”(脳の活性化を促す手法)に取り組めるカードゲーム。
実際に遊んで欲しい!そう思い、再び施設に訪問した。
すると・・・
「私学生時代好きだった人と、こんな恋愛をしたわ…」
「小学校の先生やっていた時に、こんなことがあってね…」
「旧姓は〇〇だったんだけど、こう呼ばれてて…」
そうだったの!知らなかったわ!面白い!
スタッフさんさえ知らなかった思い出話が出てくる出てくる。
それもすごく楽しそうに、嬉しそうに話してくれるからつられてこちらまで笑顔になる。その輪がどんどん広がってゆくのを感じて胸が熱くなった。
自分の作ったもので人が笑顔になることが、明るい空気が広がることが、こんなにも嬉しいんだと知った。
「実は私のおばあちゃん認知症なんだよね。」
この言葉がなければ、この喜びにさえ気付けてなかったかもしれない。
ありがとねM。
この経験がきっかけに、もっともっと沢山の人に広めたい。
そう本気で思うようになった。
迎えた大会(Sカレ)当日。
私たちの目標は、1位を取ること。
なぜなら1位にならないと、商品化できないから。
1位がかっこいいからとか負けたら悔しいから、そんな次元は私の中でとっくに超えていて、ただこれを商品化させて沢山の人に届けないと。そんな使命感だった。
当日の朝まで何度も読み合わせをして、寝ずに本番を迎えた。
正直プレゼンしている時の記憶はほとんどないけど、想いを伝えられた自信はあった。
結果発表、テーマ1位で私たちの名前が呼ばれた時。あの瞬間も忘れられない。
その瞬間に私とMが泣き崩れたっけな…。とにかく嬉しくて、ホッとして、涙が溢れた。
届け、届け!
商品化の権利を得た私たちのアイデアは株式会社明成孝橋美術さまの元へ渡り、実現に向けて動き始めた。カードやパッケージの箱が完成し、いよいよ届けられる状態になった。
沢山の人に知ってもらうために、まずはクラウドファンディングサービス「Makuake」で販売することに。
ページ、画像、動画など、1つ1つ愛を込めて作った。届け、届け!と願いながら。
▼ぜひ一度、見るだけでも。▼
クラウドファンディングの宣伝をTwitterでしていた時、こんな言葉をくれた人がいた。
ひとの話を聞いたり話すのが大好きなのに、家族の前だと上手いこと質問とかやりとりできないから 是非買いたいな…めっちゃ素敵… 家族との関係すこし前進できるかも
目頭が熱くなるのを感じた。
それぞれの家族。全部違うからこそ、いろんな難しさがある。いろんな恥ずかしさがある。
伝えてくれたことがとっても嬉しいし、私も勇気をもらった。
家族との関係が少しでも前進するお手伝いができたら、私も幸せです。
施設にいるおばあちゃん個人に僕みたいな孫が「施設の人と楽しんでね」みたいにメッセージ書いて贈れたら、施設とその施設にいるお年寄りの孫がなんだかお互い身近に感じられると思いました!
これは同じゼミの後輩がくれた言葉だが、これも嬉しかった。
施設に送ってあげるサプライズ。
きっとおばあちゃんは「懐話ふだ」を見て、何度も孫のことを思い出すんだろうな…そんな想像をしてほわっと心があたたかくなった。
認知症のおじいちゃん、過去のことはまだはっきり憶えている。憶えているから、嬉しそうに話してくれる。カードなんて持って行ったら喜んでくれるだろうなあ…!動画も良かった。たのしみ
過去のことははっきり憶えている。憶えているから、嬉しそうに話してくれる。・・・きっと憶えているから、だけじゃなくて一緒に話せることがおじいちゃんは嬉しいんだと思います。
これを伝えてくれた方とおじいちゃんの笑顔が見れたら、すごく幸せだなと思います。
コロナがおさまったら早く私もおじいちゃんとおばあちゃんに会いに行こう。私がまだ知らないおじいちゃん、おばあちゃんを見つけに行こう。
あなたも、あなたの大切な人と一緒に。そう思った方は是非、クラウドファンディングページに飛んでみてください。
私の人生を遥かに豊かにしてくれた言葉と、
その言葉が繋いでくれた沢山の出会いの話。
【追記】
現在は、Amazon・BASEで販売しております。
興味を持ってくださった方は是非、あなたの大切な人と遊んでみてください。
▶︎Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/B08L93YT8W?ref=myi_il_dp
▶︎BASE
https://ideapot.thebase.in/
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