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恩師・王子の話

泣く子もチビる美大予備校、講師の毒舌王子。当時21歳のバイト。現役美大生、身長180cm、甘い笑顔、漏れる毒舌。講評中は長い棒を持て余すお茶目さん。

 他の講師が講評している最中の王子をスケッチしたもの。しゃがんだり棒をいじったりして自由すぎる。

王子はとにかく怖かった。絵を描いているとすぐ側で長時間観察する挙句に「ここ、どういう意味?」と一生答えられない質問をしてくる。意味なんかねーよ。ただただモチーフを必死に描いてるだけだよ。

人物デッサンを描いていたら、暗すぎる背景を「これ、あの世みたいだよ」との指摘。笑っていいのか悪いのか今でも分からない。

予備校のみんなでカラオケに行った時に1曲だけ歌ったのはTHE BOOMの「星のラブレター」。曲は前から知っていたけど、「愛してます 好きにしてよー」の歌詞を王子が歌っててなんか可愛かった。以来、私の大好きな曲になったよ。今でも口ずさむ。

1年間頑張ってきたけど、入試1週間前から布団から出られずに寝たきり状態になる。寝たきりといっても目は開いたまま体が動かない。生き地獄。入試前日になんとか這いつくばって予備校に行ってみんなの上達度、本気度を目の当たりにして更に死にたくなる。

学科試験のない所がいいからと調子こいてハイレベル過ぎる東京造形大学と東京藝術大学(一応正式名称で書いておく)を受けて見事敗退。予備校の卒業式を迎えても浪人するか興味のある専門学校に行くか悩んでいた。

面談では講師と王子には浪人してまた受験すると言ったけど結局ふんぎりが付かずあやふやな感じで予備校から姿を消す去る。

てなわけで、王子にも予備校仲間にも合わせる顔がなかったんだけどなんやかんやあって私が30歳くらいの時に王子とLINEで繋がれた。
当時の王子が怖すぎたと話したら、あの時はみんなが自分の受験している姿と重なってつい熱くなり過ぎてたよと反省していた。王子は天才肌だけど誰よりも熱心で自分に厳しくしていた。
愛情という厳しい毒を私たちの為に吐いてくれてたんだとやっと気づけて心から感謝した。ありがとうございました。

その数ヶ月後に王子のグループ展に行ったら身も心も丸くなった王子がいたよ。口調も言葉も優しくなってた。それからしばらくして中国で活躍しているとのこと。国際派王子。グローバルキング。何してもどこいってもすごい人だった。
今も色々活動しているらしくて、インスタで王子を発見!早速メッセージした。返事くるかな?

てなわけで熱い漢、王子の話でした。こういう人を恩師っていうんだろうな。また会える日を楽しみにしてます( .ˬ.)"

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