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「4月の珈琲 Brazil:サクラヒラヒラリ」

昨日の夜はひどい雨だった。
それにくわえ、風はごうごうと言いながら、木枠の頼りない窓をガタガタと揺らしていた。
とにかく、嵐のような夜だった。

Brazil:サクラヒラヒラリ
下を向いて歩いていたら
柔らかな気配を感じた
そのあまりにも軽い気配に
肩が浮いたから上を見た
ヒラヒラリ
サクラが空を舞っていた
暖かい陽気に舞う甘み

待ち合わせの時間には間に合うように。
嵐のような夜のなか、スマホで電車の時間を検索して、起きる時間に目覚ましを合わせた。

それなのに、起きた時間は、思っていたより30分も遅かった。

用意もそこそこに、駅へと向かう。

雨に濡れたアスファルトの道路は、いつにも増して、灰色だ。

みぎひだりみぎひだり。
リズミカルに前に出てくるつま先が降り立つ道路を見ながら、やっぱり、灰色だと思った。

ふわっ。

そのとき、とても柔らかな気配を感じた。

ふわっ。

軽い。
軽すぎる。

あまりにも軽すぎて、肩が浮いた。

肩が浮いたら、自然と、目線が上を向いた。

あっ、サクラ。

ヒラヒラ
ヒラリ

昨日の嵐の夜なんてなかったように、桜があたたかくおだやかな風に乗って、舞っていた。

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