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「10月の珈琲 Tanzania:探し物をみつけた」

コーヒーのその奥に探し物をみつけた。

Tanzania:探し物をみつけた
なんともかんとももどかしい
喉元にさしかかったあの記憶
角をまがり、まっすぐとすすめば
奥に見えてくるショーケース
宝石のようにならぶ洋菓子の群れに
探し物をみつけた
あまくやさしいコクをすすんでいく

うーん、こんな味は求めていなかったんだけどなぁ。

焙煎したTanzaniaを飲みながら思ったことはそんなことだった。

うーん、もっと力強く、どんと構える苦味を求めていたんだけどな〜。

そして、一口二口と飲みすすめる。

でも、この感じ、何かを思い出すんだよな〜。

思っていた味ではなく、ちょっと、しょんぼりしているわたしと、懐かしさのなかに何かを追い求めているわたしが入り混じったあと、後者の方がグググっと存在感を増してきたことを感じた。

なんだっけな〜。
あまくやさしいこの感じは…。

喉元にまでさしかかっているあの記憶。
うーん、なんともかんとももどかしい…。

そしてまた、二口三口と飲みすすめる。

すると、足がつるつるとした床からふかふかの絨毯についたことを感じた。

あぁ、ここは百貨店の婦人服売り場だ。

エスカレーターを降りて、右に曲がった絨毯ゾーン。

そこに足を踏み入れたら、次は左に曲がり、奥へとすすむ。

すると、窓のある喫茶店が見える。

店の前には、宝石のような色とりどりの洋菓子が並ぶショーケースがあって、席に着くまでに、何を食べるかを選ぶのだ。

あぁ、そうか。

このショーケースにたどり着くまでのふかふかな絨毯の特別感。

そして、ショーケースのなかから選んだカスタード液たっぷりのバターケーキ。

10月の珈琲「Tanzania:探し物をみつけた」のあまくやさしいコクはこれなのか。

探し物をみつけて、もどかしさがすっきりと消え去ったわたしは、最後の一口を飲んだのだった。

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