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ジョサイア・コンドル著 山口静一訳『河鍋暁斎』岩波文庫

 最近、料理番組を見て思っていた。「”手間”なんだなぁ」文字に起こすとなんのことか我ながらわかり辛く何か不平を言っているように見えるが、そうではなくて、美味しい料理には普段ではちょっとくらい、いいか。と思ってしまうような筋を取り除いたり、ちょっとくらい、いいか。と思ってしまうような湯どうしなどの小さなひと手間ひと手間が重要なんだなぁと感心した感想だった。そんなことを、今回、画法を読みながら思っていた。全体的な文章が多いわけではない。スケッチや下絵などの資料も多く収録されているためページ数の割に文字は少ないはずである。それでもページが進まないのは本当にたくさんの手間が積み重ねられているその工程を、図と本文を何度も往復しながら読んだためであった。昨年年末から改めて日本画に興味を持つようになった。いわゆる油絵に代表されるような西洋画でない日本画は、油絵に比べた絵の具の厚みが少ない印象から筆数少なく仕上げられているんだろうな、と勝手に思い込んでいた。実際に暁斎に師事し、その製作の現場に立ち会ったコンドルによって細かく記録されたその画法は濃淡を出すために何度も筆が重ねられたり、絵柄を描くために別紙に書いたものを転写したり、画材の特徴を活かして裏側から着色されたり、とその方法は実に多彩でありとあらゆる手間が尽くされていた。これでまた私の美術館での滞在時間は増えるだろう。

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