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doramatic

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何気ない日常も、当たり前みたいな日常も、どんな瞬間だって、きっとドラマチックなんだろう。
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#創作小説

blue sky,fresh

blue sky,fresh

・・・

眩しい青い空の下、体中に日差しを浴びる。初夏のからりとした爽やかな風がTシャツの隙間を吹き抜けていく。

大袈裟かもしれないけれど、
ああ生きている、そんな心地がした。

うっすらと滲む汗でさえ、
なんだか今日だけは、綺麗に見えた。

太陽の眩しさに目を細め、新緑を視界の隅で捉える。梅雨明けはまだしていないはずだけれど、夏のシーズン到来、そんな言葉が似合う陽気だった。今すぐ駆け出して海に

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good bye,baby

good bye,baby

「引越しするんだよね、俺」

ふーん、とハゲたネイルを塗り直しながら、短く返事する。相手の顔は見ていない。真っ黒なネイルカラーが爪の上で鈍く光っているのを、ただ見つめていた。顔なんて、見れなかった。

「どこ引っ越すの?」

ようやく視線を向けた頃、その人はスマホをいじっていて、いつものことだというのに、酷く距離を感じてしまう。同じ沿線上にない駅名にある新居は、今の家よりさらに広いらしい。

それ

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sweet,and sweet

sweet,and sweet

「僕に手作りチョコレートとかやめてよね?」

マロンベージュの髪色に肌荒れ一つない端正な顔を持つ男が、至極当然のことのようにさらりと言い放つ。それに対して腹を立てる気も起こらないのは、この男が世界でも注目される若手ショコラティエだからだった。そう言われたってぐうの音も出ない。当たり前だ。

男の人特有の節くれだった指ではなく、細くて繊細な指先で作り出されるチョコレートは、単に美味しいと味わうためだ

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