見出し画像

これは恋のおはなし


人間 思い出は美化しがちなものですが、

わたしが今でも「あれは間違いなく恋だった」と信じたい相手が1人だけいます。


小3のクラス替えで、同じクラスになった男の子がいました。

席替えで隣になり、たくさん話すようになりました。すごく気が合いました。

縁とは不思議なもので、何度席替えをしてもなぜかその子と隣になりました。


わたしたちは誰が見ても本当に仲良くて

でも、

わたしたちはまだ未成熟でした。


その年ごろの男の子たちです。女の子と仲良くするなんて、と斜に構えている子ばかりです。

しだいに、わたしたちはからかわれるようになりました。

それを受け流せるほどわたしは大人じゃなくて、

その子がからかわれて困っているのが嫌で、そして自分も気恥ずかしくて

元来の気の強さから、わざとらしくその子と距離を取るようになりました。

わざと机を離して、わざと話さないようにして、

全く関わらないようになりました。


縁とは不思議なもので、何度席替えをしてもなぜかその子と隣にはなれなくなりました。


きっかけを失って、全く話す機会がなくなって、

わたしは寂しくてたまらなくなりました。


あぁ、好きだったんだ、とやっと気づきました。


その年ごろの男の子たちです。もう話さなくなったわたしたちを、ただおふざけのからかいの材料に使って楽しんでいました。

近くにいることさえできなくなりました。


次のクラス替えでは、やっぱりクラスが一緒になることはありませんでした。

でもわたしは忘れられなくて、廊下ですれ違うことだけが楽しみでした。


でもその子は元々体が弱くて、学校で見かけることも少なくなりました。


1度だけ、手紙を書きました。

『3年生の頃はごめん。学校に来てるときまた話そう。』



もちろん返事はありませんでした。



中学に入学し、クラス名簿を見た4月。名簿にその子の名前がありました。

一時期、教室の中で同じ班になって、席が近くなって、4年ぶりに話しかけました。

その子は少し驚いて、でも普通に話してくれました。

すごくうれしくて、そのとき話した内容は今でも覚えています。


結局それ以上はなにもなくて、なにかする勇気はなくて、2年になってクラスが離れて、その子は再び学校を休みがちになりました。

わたしは勉強や部活に精を出すようになり、色恋沙汰への関心が薄れてしまいました。


1度だけ、サッカー部のその子が練習で学校の外回りを走っていて、グラウンドにいたわたしとフェンス越しに偶然目が合ったことがありました。



そんな些細なことさえ覚えてる

純粋だったころの恋のおはなし。








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?