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1月2日のシンデレラへ

「結婚することになったよ〜〜〜!!!」

もう1年半くらい前のこと。朝の通勤電車の中で、高校時代の友人から幸せ溢れるメッセージをもらった。
いつもはただただ不快な満員電車も、隣に居る初めましてのサラリーマンとハイタッチでもしたくなるほど喜びで溢れていたのを覚えている。

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前に会ったのは、やっぱり1月2日だったっけ。
正月休みはいつも地元に帰っていたから、元日を家族とゆっくり過ごして、翌日の1月2日に会うのはもう暗黙の了解みたい。

今年はふたりの新居に招いてもらって、たこ焼きをまんまるく育てつつ実家にあった何十年もののボードゲームをしていたら、いつの間にか日が暮れてしまった。

「これからも妻のこと、宜しくお願いしますね」。

三が日でも営業してるお店を探しに探して入ったラーメンチェーンの駐車場で、柔らかな微笑みを浮かべた旦那さんに言われたの。
体はラーメン、心は温かい気持ちで満たされていたはずなのに、身体の真ん中で薄氷がペキって小さく音を立てたような気がした。

ささやかだからこそ素敵な1日だったな。
いや、むしろちょっと素敵すぎたのかもしれなかった。
家に帰ってドアを閉めた途端、なぜだか涙が溢れて止まらなくなった。

コンクールで金賞を取れたときの晴れやかな顔も、いつかの恋人と別れて教室で萎びれてた顔も見てきたから、「とられた」喪失感は失恋したときのそれに似ていたと思う。

幸せをたくさん吸い込んだはずなのに悲しくて、ふたりを応援していきたいのに嫉妬が入り混じって、よく分からない気持ち。
要らない感情が混じった心が洗われていくみたいに、自然とはらはら落ちる涙をただ見ていた。
なんだか透き通って綺麗だった。

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コロナのせいで、楽しみにしていたふたりの結婚式は親族のみで行われることになった。

参加できなくて本音はやっぱりちょっと寂しい気持ちもあったけど、ものすごく尊い決断だったなってわたしは感じている。
どうやって式を挙げるのか、もしくは延期にするのか…きっとたくさんたくさん考えて、初めてふたりでした大きな決断だったと思うから。それだけでもう充分尊い。

いつかふとACE COLLECTIONさんの「シンデレラ」を口ずさんだとき、ふたり揃ってこの曲が大好きなんだ!って教えてくれたね。

そんな今日は君が
幸せになる日
そんな今日は僕が
君の結婚式でピアノを弾く日

今日別の人と結婚してしまう「君」を想っている「僕」。
もちろん、言い表せないほど切なくて複雑な気持ちなんだろうと思う。
でも、結婚式でピアノを弾ける分にはまだ救いがあるのかもしれないなぁと今は思ってしまう。
(わたしに出来るのはピアノじゃなく写真を撮ることだけど)今年はそれも叶わなかったのだから…。

もしまた1月2日に会えるなら、自然体のふたりを撮らせてもらえたら嬉しいな。
写真のスキルは無いかもしれないけど、私だからこそ、きっと誰よりもふたりの素敵な笑顔を残せるんじゃないかなって。

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「手紙という形式で想いを綴った文章を書きませんか?」と、ゆるふわ帝国@手紙部さんにお声がけ頂き、冬の写真にのせて書いてみました。素敵なお誘いありがとうございました!

今はまだ彼女には渡さないつもりの「手紙」。
だけど、いつかの1月2日にはあの時こんな気持ちもあったと伝えられたらいいな。
それだけ大切な友だちだと思ってるんだよって。

読んでくれてありがとうございました。
それでは、またきっと。

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