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私の映画備忘録 #1「A Rainy Day in New York」

こんにちは、RISAです。
昨年末にNYの大学を卒業し、現在は東京の制作会社で働き始めました。

これからは不定期で映画の感想や分析を投稿していくので、気軽な気持ちで読んでいただけると嬉しいです。

記念すべき初回は、ウディ・アレン監督の「レイニーデイ・イン・ニューヨーク(A Rainy Day in New York)」(2019年)。

NYを舞台にした本作、実はアメリカ国内での上映はありません。
2018年に公開予定でしたが、ウディ・アレンの性的虐待疑惑と2017年に起こった#MeToo運動の影響で上映中止に。他方でヨーロッパでは2019年から上映され始め、日本では2020年7月3日に全国公開されました。

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私がこの作品を選んだのは、もちろんNYに留学していて思い入れがあるから。やっぱりあの街にいると感じる強力なエネルギーは忘れられなくて、日本で感じられるNYを日々チェックしちゃいますね。

二つ目の理由は、留学中に受けた授業のおじいちゃん先生が、長年ウディ・アレン監督と一緒に映画製作をしていたのです。授業でウディ・アレンの話を頻繁にするので、私の中で彼に対してちょっとした親近感を抱いています。

そして、ウディ・アレンの最新作がNYを舞台にしていることを思い出し、Netflixで観ることにしました。

あらすじ

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巨匠ウッディ・アレン監督が、ティモシー・シャラメ、エル・ファニング、セレーナ・ゴメスら人気若手俳優たちをキャストに迎えメガホンをとったロマンティックコメディ。
大学生のカップル、ギャツビー(ティモシー・シャラメ)とアシュレー(エル・ファニング)は、ニューヨークでロマンチックな週末を過ごそうとしていた。きっかけは、アシュレーが学校の課題で有名な映画監督ポラード(リーヴ・シュレイバー)にマンハッタンでインタビューをすることになったこと。
生粋のニューヨーカーのギャツビーは、アリゾナ生まれのアシュレーに街を案内したくてたまらない。ギャツビーは自分好みのデートプランを詰め込むが、2人の計画は晴れた日の夕立のように瞬く間に狂い始め、思いもしなかった出来事が次々と起こるのだった……。

ストーリーは、いたってシンプルな「NYのある雨の1日の物語」。
ギャツビー(ティモシー・シャラメ)とアシュレー(エル・ファニング)が、雨のニューヨークでお互いにすれ違う、ビターなラブコメディです。

そして、現実と異なるもう一つのNYのような、幻想的な雰囲気が漂うところもポイントです。それぞれ裕福な家庭で育った二人が出会う人々は、セレブな世界の住人たちで上品かつスマート。彼らがいる場所は常にジャズが流れ、次々とオシャレスポットが登場し......映画を見ている間、ファンタジーの世界にいるようなフワフワとした感覚がありました。

今回はそこからポイントを3つに絞ってお届けします。

①「映画」が物語の軸に

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これまでのウディ・アレン作品でも、「映画」が重要なモチーフでした。
スクリーンから現実世界に飛び出した主人公とウェイトレスのファンタジックなラブロマンス「カイロの紫のバラ」、売れっ子コメディ映画監督の苦悩を描く「スターダスト・メモリー」、失明した落ち目の映画監督が再起に挑む「さよなら、さよならハリウッド」など、映画業界を舞台にしたドタバタ劇が多くあります。

本作も「映画」が物語の原動力になります。
ストーリーは、ジャーナリスト志望の大学生・アシュレーが憧れの映画監督にインタビューするため、ギャツビーと一緒にマンハッタンを訪れることからスタート。彼女は次々と現れる映画人たちの誘いを受けて、ギャツビーとの予定をドタキャンします。

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世間知らずのお嬢様アシュレーが華やかなニューヨークの夜に巻き込まれていく一方で、ギャツビーも映画をきっかけに二人の女性と出会います。ギャツビーとチャン(セレーナ・ゴメス、元カノの妹)は学生映画の撮影で、ドタキャンされて一人で飲んでいたバーでエスコートガールに出会います。これらの出会いによって、ギャツビーはある人の秘密を知ることになります。

ちなみに、アシュレーが出会う映画人の一人にジュード・ロウがいたのですが、私は最後のエンドロールを見るまで全くわかりませんでした。妻を親友に奪われる情けない男の脚本家・ダヴィドフ役での出演で、二枚目のオーラを完全に消したその見た目からは気が付きにくいと思います。その他にも実力のある俳優が脇を固めているので、そちらにも注目して観てください。

②NYを観光している気分

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本作は、生粋のニューヨーカーが恋人にNYを案内しようとする話なので、NYの観光スポットがガイドブックのように次々と登場します。旅行気分で見るのもおすすめです。

メトロポリタン美術館やセントラルパークといった定番の観光スポットから、最高級ホテル、長年愛されている老舗レストランなど。それから、セリフだけですがMOMA(NY近代美術館)やエンパイア・ステート・ビルも出てきます。
マンハッタン以外では、クイーンズ地区の撮影スタジオが重要な場面で使われていたりもします。そのすぐそばには、Museum of the Moving Imageという映像に関するコレクションを展示した博物館があるので、そちらもおすすめです。

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ギャツビーがピアノを演奏するバーは、5つ星のカーライル・ホテルの中にあります。過去作でもロケ地として使用し、さらにはホテルのドキュメンタリーを作るほどウディ・アレンはカーライルが大好きで、2年間も滞在した時期があるとか。彼がホテル内のカフェで週に1度、クラリネットを演奏していたこともあったそうです。

③雨と光が織りなす映像の美しさ

撮影監督は「地獄の黙示録」などで3度オスカーを受賞し、”光の魔術師”と呼ばれるビットリオ・ストラーロ。彼の編み出す印象的な雨と光の演出は、各々のキャラクターを意識した対比を表現しています。

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一つ目の対比は、ギャツビーとアシュレー。
ギャツビーのシーンでは主に固定カメラを使用し、曇り空や雨のNYをとらえています。一方、アシュレーのシーンは、ステディカムで動きのあるカメラワークと、晴天の太陽光が特徴です。

将来の夢が見つからず、ギャンブルに明け暮れるギャツビーと、ジャーナリストになる目標を持つアシュレーには、雨と太陽という対照的なモチーフがぴったりだと思います。ギャツビーを悩ませる「恋」とアシュレーを惑わす「夢」という、人生の重要な要素たちは、この2人の間になんとなく存在していたズレを明らかにします。

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二つ目の対比はアシュレーとチャン。
アシュレーを「光」、チャンを「雨」で示すような演出が施され、ギャツビーの心の変化を天候が表しています。

例えば、友人の映画に出演したギャツビーが、チャンとのキスシーンを演じた途端に雨が降り始めました。それまでは顔に太陽光が当たる構図でしたが、これをきっかけにギャツビーのシーンで雨の要素が強まっていきます。しかし、雨の中にも光が差し込み、彼の心が二人の間でまだ揺れている様子が、視覚的に演出されているのです。

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ここまで、「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」を観て私が感じたことやポイントとなりそうな点を書いてみました。
幻想的なNYの風景を楽しみながら、二人の恋の行方がどうなるのかを、ぜひ皆さんの目でも確かめてみてください。

*写真は映画.com、あらすじは公式サイトから引用。




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