見出し画像

ぐるぐる回る

 ぐるぐると何回転しているか覚えていないくらい回っていた。回りながら今日の晩ご飯の事を考えていた。今日は部活がオフだった。なんせテスト週間だったから。高校生の部活のオフは最高だと思った。
「今日は餃子が食べたい気分だから〜餃子が食べたいな〜、」
回っているとなせだか頭が冴えて沢山考えられるんだよね〜と小学生の時に友達が言っていたのを思い出した。なぜ今それを思い出したのかは分からない。そして、僕は「そんな訳ねーだろ〜?!」と茶化してしまい、その友達を怒らせてしまった事があったらしい。彼は至って真面目だったそう。茶化した事をすぐに謝らなかったから友達は不貞腐ってどっか行ってしまった。あの時なんですぐに謝らなかったのだろうと僕は人として駄目だと自分を蔑んだ。

 お母さんが晩ご飯を作っている音が二階から聞こえてくる。晩ご飯ができるまで暫く回っていようと思った。大抵の場合は十回転か、もう数回転回るが今日は餃子というのを期待していたせいか、二十回転も無意識に回っていた。なぜ僕がそこまで餃子に拘っているのかは、高校生の頃テレビを見ていたら僕の好きなアナウンサーが町中華の料理店で餃子に台湾ラーメン、シュウマイを美味しそうに食べていたのがきっかけだ。だから一時期中華料理にハマっていたのだ。中華を食べていたのが美人アナウンサーだったから良かったが、あれが男だったら食べる気がなかっただろう。今日こそは餃子だろうと予想したけれど結局違った。お母さん曰く、餃子は具を皮に包む工程が面倒くさいそうだ。それは僕も近くで見ていたから少しは分かる。それでも反抗期真っ只中の可愛い息子の為に餃子を包んで欲しかった。

 「早く一階にいらっしゃい〜!ご飯冷めちゃうわよ〜」少し甲高い声がした。二十回転もしたせいか、お腹が空いたより気持ち悪いが勝って階段を降りてすぐトイレに駆け込んだ。トイレに駆け込んだのはいいが、便器がうねっているように見えてどこが便座か一瞬分からなくなった。また吐きはしない程度の気持ち悪さだったのと、頭がぐわんぐわんとなっていたのが最悪だった。もう二度と回ることはしないと誓った。けれど僕は新しい世界を知れたいい機会だと感じた。回るなんて思わなければ回っている世界を知る事は一生なかったからだ。吐くことはなく、普通に尿を出しただけだった。食卓に向かうと水餃子がメインとしてあった。


#創作大賞2024
#オールカテゴリ部門

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

サポート是非よろしくお願いします。 クリエイターとして僕もnoteに貢献していきたいです。