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ディグ・モードvol.20「スカイ ハイ ファームワークウェア(SKY HIGH FARM WORKWEAR)」

スカイ ハイ ファームワークウェア(SKY HIGH FARM WORKWEAR)は、2022年にアーティストのダン・コーレン(Dan Colen)が立ち上げたアパレル ブランド。彼が始めた非営利の農場に収益を還元することを目的として、リサイクル素材やデッドストック生地を使用したワークウェアを展開している。ブランドはバレンシアガとのコラボでも注目を集めた。


NYの食料不安に立ち向かうスカイ ハイ ファーム

(Photography by RAMIE AHMED)

1979年生まれのダン・コーレンは、ロード アイランド スクール オブ アート アンド デザイン(Rhode Island School of Art and Design)で美術の学士号を取得し、ホイットニー美術館やロンドンのロイヤル アカデミーで作品が展示されている国際的なアーティストだ。

彼がスカイ ハイ ファーム(SKY HIGH FARM)を立ち上げたストーリーは、2010年ごろまで遡る。ダウンタウンでの生活から逃げ出したいと考えていた当時、彼はニューヨーク州北部の田舎に40エーカーほどの土地を購入した。

スカイ ハイ ファームにあるダンのアトリエ(Photography by Ryan Lowry)

彼は友人から、ニューヨーク州だけでも約10.5%(10世帯に1世帯強)が、食料不安に直面していることを聞いた。それは、栄養価の高い食品を購入するのに十分なお金がなく、何も食べずに空腹で寝る人がいるという状況であり、経済の低迷やインフレ、家賃の上昇などによってさらに悪化する可能性がある問題だ。

食料不安の問題に対し、何か貢献したいと思っていたダンは、スカイ ハイ ファームを設立した。「スカイ ハイの設立は、ある日突然決めたことではありません」と彼は『HYPEBEAST』に語っている。

持続可能な再生型農業を実践

(Courtesy of SKY HIGH FARM)

ニューヨーク市から車で約2時間の場所に位置するスカイ ハイ ファームは、「再生農業と食料アクセスの取り組みにおける架け橋」として、食料不安と闘っている。そのアプローチは、主に3つのタイプに分けられる。

1つ目は、食料の生産と寄付。持続可能な農法で農産物や家畜を栽培し、その100%をフード バンクやフード パントリーに寄付している。2つ目は、再生型農業。地域の生態や土壌の健康、牧草地の管理、水の保全を中心としたさまざまな方法を通じて、気候変動に立ち向かっている。

バレンシアガとのコラボ(Courtesy of SKY HIGH FARM)

3つ目は、フェローシップやコラボレーションを通じたコミュニティへの参加。農作業と教育を組み合わせた、集中的なオンライン有料プログラムを通じて、農業に関する経験的な知識をコミュニティに提供している。また、「Sky High Grants」プログラムを通じて、農場や農家に向けた助成金の提供もおこなっている。

農場を形成する鍵となったのは、ダンの親しい友人のひとりで共同設立者のジョッシュ・バードフィールド(Josh Bardfield)だ。 ニュージャージー州北部でダンと共に育った彼は、コロンビア大学・メールマン公衆衛生大学院で公衆衛生の修士号を取得。ジョッシュは、Sky High Grantsを担当している。

Tシャツを売って、農場の維持費を稼ごう

(Courtesy of SKY HIGH FARM)

最初は寄付によって支えられていたスカイ ハイ ファームは、新しい資金調達モデルとして、営利目的の衣料品ラインについて話し合い始めた。そして2019年、ドーバー ストリート マーケット(Dover Street Market以下、DSM)と提携。シュプリーム(Supreme)やアイラック(Irak)などとコラボしたコレクションがDSMで販売された。

その後、2022年2月、農場に資金を還元する営利団体として、スカイ ハイ ファームワークウェアは立ち上げられた。「営利団体は非営利団体とは異なるペースで動き、異なることを達成できます」とダンは『THE WALL STREET JOURNAL』で語っている。

(Courtesy of SKY HIGH FARM)

スカイ ハイ ファームワークウェアでは、リサイクル カシミアで編まれたカーディガンやデッドストック デニムで作られたジャケットなど、アイテムのほとんどをリサイクル素材やヴィンテージの生地から作っている。Tシャツやパーカー、アンダーウェアなどの機能的な服に、遊び心を加えたデザインが特徴だ。

イラストレーターのジョアナ・アヴィレズ(Joana Avillez)が描いた、食べ物や自然にインスパイアされたフレンドリーなキャラクターのアイテムもあれば、ロンドンを拠点とするスタジオ、マックス ルイ クリエイティブ(Max Louis Creative)によるグラフィックが印象的なアイテムもある。

新しい形の慈善活動

ダン・コーレン(Photography by Ryan Lowry)

スカイ ハイ ファームは、ファッション ブランドやアーティスト、デザイナーなどの多様なネットワークを動員して、収益を生み出し、活動を維持している。さらに、DSMとのパートナーシップは、地元の食料経済をサポートし、「新鮮で栄養価の高い食品へのアクセスは、基本的な人権である」というメッセージの普及に役立っている。

スカイ ハイ ファームワークウェアが目指すのは、食料に関する差し迫った問題をサポートするために衣料品を活用することだ。資金調達をワークウェア ラインのビジネス モデルに直接組み込むことで、いかにファッションと農業が食料不安に闘う力となれるかを示している。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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