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ディグ・モードvol.77「ジョアン マラスキン(JOAO MARASCHIN)」

ジョアン マラスキン(JOAO MARASCHIN)は、ブラジル人デザイナーのジョアン・マラスキン(Joao Maraschin)が設立したロンドン拠点のファッション ブランド。彼は職人をブランドの共同デザイナーだと捉え、その場所の文化に根ざした倫理的な方法で服を作り、持続可能性に焦点を当てながら、ブラジルの企業から回収した廃棄物に新たな命を吹き込んでいる。


職人は共同デザイナー

(Courtesy of JOAO MARASCHIN)

人間が何世紀にもわたって開発してきた工芸品は、ジョアン マラスキンの世界において最も貴重であり、保存すべき存在だ。それは職人とその技術が品質を保証する以上のものであることを意味し、職人をブランドの共同デザイナーだと考えているジョアンは、職人コミュニティの構築を目指している。

彼はブラジルで学士号を取得後、2011年にブラジルで最初のファッション レーベルを立ち上げ、地元マーケット向けに活動をおこなった。当時のアイテムは現在の彼のデザインのように手作りではなく、主にジャカードやコットンなどの単一素材を使用していた。その頃に、デザイナーはほとんどが年配の女性である職人グループと初めて仕事をした。

(Courtesy of JOAO MARASCHIN)

その後、ジョアンは2016年にロンドン芸術大学でファッション デザイン テクノロジー(ウィメンズウェア)の修士号を取得。それは彼にとって、ブラジルでの活動との橋渡しになったと同時に、ファッションに新しいアイデアを導入する機会となった。

2020年初め、ジョアンは自身の名前を冠したウィメンズウェア ブランドを設立。2020年2月のロンドン ファッション ウィーク期間中、英国ファッション評議会の招待を受けて作品を発表した。

透明性とトレーサビリティの実践

(Courtesy of JOAO MARASCHIN)

ジョアンがブランドをローンチした背景には、ブラジルの遺産を振り返り、その工芸品や技術が現代のファッションにどのように伝わったかを辿るだけでなく、大きなショーウィンドウで展示する機会を与えることでそれを祝う意図がある。

彼はブラジルのミナスジェライス州の田舎にあるイタビラの刺繍コミュニティと長年の関係を築いており、3年以上にわたって一緒に作業している。デザイナーは彼らとの仕事を通じて、伝統的な知識を現代的なファッションに変える方法を発見したと説明する。それは倫理的で、その場所の文化に根ざした方法で服を作る方法でもある。

「刺繍は装飾的なディテール以上のものです。表面を作成し、職人が完全にコントロールできるようにするため、テキスタイルにペルソナの痕跡を残しているように感じます」と彼は『1GRANARY』で語っている。

(Courtesy of JOAO MARASCHIN)

デザイナーは定期的にカシアス ド スル、ベロオリゾンテ、イタビラにあるアトリエを訪れ、そこで働く人たちと個人的に連絡を取り合っている。協働している職人たちとは月払いの固定契約を結んでおり、たとえばパンデミックの影響でワークフローが遅くなっても、彼らの収入や作業スペースを確保している。

ジョアンは一緒に仕事をしているすべての職人に直接会いに行くことを望んでおり、彼が直接の連絡窓口で、そこに仲介者はいない。それが彼にとってできる限りの透明性とトレーサビリティであると説明している。

地球市民として何ができるか

(Courtesy of JOAO MARASCHIN)

ブランド設立を決意した背景には、デザイナーとしてだけでなく、地球市民として何ができるかという動機もある。従来の作業方法は、他社がすでに開発または設計した完成品を購入し、その材料から作業するというものだが、彼はその前の段階を見たいと感じた。問題を掘り下げて、それに取り組む別の方法を見つけられるかどうかを自身で確認したかったのだ。

だからこそ、彼にとって社会的、文化的、環境的なアジェンダが重要になった。廃棄物の対処に困っている会社や、退職年齢に近づいているが実際には退職する余裕がない人の存在を知っていたことから、彼はこれらの問題に取り組み、解決策を見つけるために共同作業をおこなう方法を検討した。

ジョアン・マラスキン(Courtesy of JOAO MARASCHIN)

ジョアンはすでにビジネスパートナーであったブラジルのいくつかの企業から廃棄物を収集し始め、別のものに生まれ変わるチャンスを与えている。素材は漁網、シャツの素材、セルヴィッチと呼ばれる生地の端までさまざまだ。刺繍に使用するすべての糸はデッドストックから来ている。

「私たちはまだ100%持続可能な状態には達していません。完全にそれを維持することは非常に難しいと思います。しかし、改善するためにできることはあります」とデザイナーは『Sounds and Colours』で語っている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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