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ディグ・モードvol.6「フェーベン(FEBEN)」

フェーベン(FEBEN)は、セントラル セント マーチンズを卒業したフェーベン・ベンメンビー(Feben Vemmenby)が立ち上げた、ロンドン拠点のウィメンズウェア ブランド。ちぐはぐなプリントや非対称のシルエット、メリノウールにメッシュを織り込んで服にボリュームを与えるなど、実験的なデザインが特徴。彼女はコミュニティを原動力に服づくりをおこなっている。


黒人のアイデンティティを祝福する

2023年春夏 パリ ファッションウィーク中に開設されたショールーム「Fashion [X] Showrooms」のフェーベン ブース(Photography by 𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨)

北朝鮮の平壌でエチオピア人の母のもとに生まれフェーベンは、スウェーデンの難民キャンプで育った。彼女の母は逞しい黒人女性で、ひとりでフェーベンを育て、いつでも彼女の背中を押してくれる存在だった。フェーベンはゼロから何でもできることを母から教わった。

18歳のとき、フェーベンはスウェーデンを離れ、シドニーで1年間暮らした。誕生日を迎えてスウェーデンに戻ったとき、「これから何をするつもりなの?」と母に尋ねられた。その数日後、インスタントラーメンとミシンを詰め込んだスーツケースと共に、フェーベンはロンドンに向けて出発した。そのとき、彼女の残金は70ポンド(約1万1,000円)だった。

セントラル セント マーチンズ修士課程の卒業コレクション(Courtesy of FEBEN)

フェーベンはロンドン カレッジ オブ ファッションで学んだ後、セントラル セント マーチンズの修士課程に進学。パンデミックの最中に、卒業コレクション『It's Not Right, But It's OK』を完成させた。卒業後は、ビヨンセが2020年にリリースしたビジュアル アルバム『Black Is King』のスタイリングとコスチューム デザインを担当し、注目を集めた。

フェーベンのスタイルは、彼女が囲まれていたロンドン、スウェーデン、エチオピアの文化によって形成されている。彼女の作品は黒人女性として世界を見てきた経験や、これまで触れてきた多様な文化、そして自身が「あるべき姿」への期待を反映したものだ。それは、黒人のアイデンティティを祝い、コミュニティを元気づけることである。

活動の中心にあるのは、他者への気遣い

2023年春夏コレクション(Photography by 𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨)

ロックダウン中、フェーベンは再び卒業コレクションを手に取った。そして、自身のプロジェクト「The Last Supper T」用に、卒業コレクションのスクラップを着せた黒人のミニ人形を10体ほど作成した。

そのプロジェクトは、フォトグラファーのデクスター・ランダー(Dexter Lander)とのコラボで、フェーベンが作成した10体の人形がテーブルに座っている写真をプリントしたTシャツ『The Last Supper T』を製作した。収益はすべて、困っている黒人にメンタル ヘルスのサポートを提供する英国拠点の慈善団体、Black Minds Matterに寄付された。

「前進するためには、これまで以上に持続可能でなければなりません。卒業コレクションのスクラップを使用して、人形を作成することにしました」と彼女は『THE FACE』で語っている。

LAST SUPPER T(Courtesy of FEBEN)

Black Lives Matter運動を受けて、フェーベンは小規模であっても彼女のビジネスが社会的利益のために利用できることを示した。医師ではなく、デザイナーでありアーティストであるため、ドレスを作ることで世界を救うつもりはないが、自分にできる積極的な変化があることを彼女は説明している。

「小さな行動だけで、パンデミックに役立つさまざまな方法を考えました。少なくとも、ひとりの1日を変えたり笑顔にしたりできれば、それは素晴らしいことです」とデザイナーは『i-D』で語っている。活動の中心にある他者への気遣いは彼女にとって決して譲れないものだ。

コミュニティが自身を前進させる原動力

2021年秋冬カプセルコレクション(Courtesy of FEBEN)

彼女は自身が望むことについて、「どんな環境であっても、自分が一番好きなことを続けられることを願っています。私は自分のコミュニティを盛り上げ、さらに遠く離れた場所でもコラボレーションしたいと考えています」と『SSENSE』のインタビューで語っている。コミュニティ ファーストの精神を持つフェーベンにとって、コミュニティこそが原動力となっているのだ。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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