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春の朝

カーテンの隙間から漏れる陽の光が、思いの外強いことに寝ぼけ眼でも気づいた。7時半を回ったところだった。転がるように布団から抜け出して、重い体を支えて洗面所へ向かう。暖かい日が続いていたが、フローリングは素足から容赦無く熱を奪っていく。

顔を洗う水の冷たさが心地よい季節がやってきて、手早く洗顔を済ませた私は、そのまま化粧も始めた。目元は桜色のようなシャドウ、締めには深い空の色を。バーガンディを目の際に垂らす。

顔の準備だけ済ませて、パジャマを着ている時のちぐはぐ具合は、鏡を覗くたびに間抜けな自分を認識する。

温めたフライパンに少しのオリーブオイル。
卵はターンオーバーにしよう。
フライパンの隅にウィンナーを置いて、トースターに食パンを放り込む。
大きな平皿に、洗ったベビーリーフと小さなトマトを添える。
換気扇をつけて、こもった空気をかき混ぜてもらおう。

ケトルが音を立てて呼ぶ。
コップにお湯を注いで、紅茶のティーパックを落とす。
ゆっくりと鼈甲色が溶け出して、ゆったりと混ざり合う。

湯気が立ち昇る静かな朝。

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